JR北海道から発売されているフリーきっぷの一つに「一日散歩きっぷ」があります。札幌圏の路線を走っている普通列車および快速列車が、一日乗り放題になります。
このきっぷで訪れることができる札幌近郊の観光スポットには、小樽や余市、白老、登別温泉などがあります。少し遠いところでは、美瑛もきっぷのフリー乗車区間に含まれています。乗り鉄にも好適で、車窓からの風光明媚な眺めを満喫できます。
そんなきっぷですが、実は購入方法にクセがあり、容易に買えるわけではありません。また、このきっぷでは特急列車に乗車できません。いわば、青春18きっぷの札幌圏版といったところでしょうか。
このきっぷは価格設定がやや高めで、元を取るのが微妙に難しいです。どちらかといえば、札幌を訪問する人よりも札幌に住んでいる人にとって使いやすいです。
この記事では、JR北海道のフリーきっぷ「一日散歩きっぷ」とはどのようなきっぷで、いつどこで購入できるのかを解説します。そして、このきっぷを使用する上での注意点についてお話ししたいと思います。
- 新千歳空港駅・南千歳駅ではきっぷを買えないこと
- 指定席券を買えば快速エアポート号のUシートを利用できること
- きっぷの効力は青春18きっぷに類似し、特急列車には乗車できないこと
一日散歩きっぷとは~きっぷの概要を説明~
JR北海道管内の駅では、普通列車および快速列車に乗車可能なフリーきっぷがいくつか発売されています。代表的なものに、札幌圏がフリー乗車区間の「一日散歩きっぷ(道央圏用)」、旭川圏がフリー乗車区間の「道北一日散歩きっぷ」の2種類があります。
そのうち、ユーザーが多いのが、札幌圏で利用できる「一日散歩きっぷ(道央圏用)」です。この記事では、当該きっぷを扱います。
きっぷの値段~いくらで買えるか~
2024年度における一日散歩きっぷの発売金額は、次の通りです。
大人2,540円/子ども1,270円
きっぷの使い方にもよりますが、価格設定は決して安くありません。どのように使うかをあらかじめよく考えてから購入しないと、その都度乗車券を買うよりも金額的に損をする可能性があります。このきっぷのコスパについて、当記事の後半で考えていきたいと思います。
フリー乗車区間~どこで使えるか~
きっぷの正式な名称は「一日散歩きっぷ(道央圏用)」ですが、ここでいう「道央圏」とは、札幌を中心としたエリアです。「道央圏」と「札幌圏」はほぼ同義です。
きっぷのフリー乗車区間は、下図の通りです。
北海道内の主要駅である札幌駅(札幌市北区)、函館本線小樽駅(北海道小樽市)、室蘭本線苫小牧駅(北海道苫小牧市)、室蘭本線室蘭駅(北海道室蘭市)が含まれています。遠いところでは、函館本線長万部駅(北海道長万部町)、石勝線新得駅(北海道新得町)、根室本線富良野駅(北海道富良野市)および富良野線美瑛駅(北海道美瑛駅)が含まれます。
札幌駅から函館本線山線で長万部駅に向かい、室蘭本線で札幌駅に日帰りする周回経路を組むことができます。
特急列車には乗車できない
このきっぷでは、特急列車には乗車できません。特急券を別に購入すればよいわけではなく、乗車券も必要になります。この点から、一日散歩きっぷは、いわば青春18きっぷの札幌圏版と申し上げました。
それでは、ひとクセあるきっぷの発売条件についてお話ししていきます。
きっぷの利用期間・発売日~いつでも使えるわけではない~
このきっぷは、いつでも買えていつでも使えるきっぷではありません。ここでは、その条件を見ていきます。
利用期間
きっぷの利用期間は、年度ごとに個別に設定されます。例年、4月下旬(GW)から11月上旬までの時期に利用可能です。通年で購入できるきっぷではないことに留意しましょう。
また、利用できるのは毎日ではなく、土休日に限られます。きっぷを利用できる日がかなり少ないことにお気づきではないでしょうか。
ただし、利用制限期間には制限がなく、最繁忙期であるGWやお盆休み期間中の土休日にも利用できます。
発売日
利用する当日に限って発売されます。
言い換えれば、きっぷは前売りされないということになります。そのため、あらかじめきっぷを入手して遠方の知人などに送ることができません。
きっぷの発売箇所~どの駅でも買えるわけではない~
この手のフリーきっぷは、フリー乗車区間の全駅で購入できることが多いです。
しかし、一日散歩きっぷは、フリー乗車区間の一部の駅のみでの発売です。それ以外の駅では購入できないことに要注意です。
先ほどお見せしたフリー乗車区間の図です。このうち、きっぷを買える駅は黄色いマーカーで引いた区間の有人駅です。札幌駅の近隣区間である函館本線小樽駅(北海道小樽市)/函館本線岩見沢駅(北海道岩見沢市)/千歳線千歳駅(北海道千歳市)までの各駅に限定されます。
札幌市内および近郊に住んでいるユーザーにとっては容易に入手できるきっぷである一方、その範囲外からは入手が難しいです。きっぷを利用できるユーザーは限られているように感じます。
札幌への訪問者にとって、きっぷを入手するハードルが高いきっぷであることがお分かりになるのではないでしょうか。
一日散歩きっぷの様式
きっぷを買うと、本券と案内券の2枚を受け取ります。
本券はマルス端末から発券されるマルス8.5cm券で、自動改札機を利用できます。
案内券には、このきっぷを利用する上での注意点が書かれています。特急列車が利用できない点や特例区間に関する説明があります。
余談ながら、このきっぷは長年発売されていて、かつては赤色の常備券でした。
それでは、筆者が乗車したことのある列車を含め、このきっぷで乗車できる列車をご紹介します!
どのような列車に乗車できるか~代表的な列車を紹介~
このきっぷでは、普通列車および快速列車の自由席、そして指定席券を買えば指定席も利用できます。JR北海道の札幌都市圏においては、札幌駅と新千歳空港駅を結ぶ快速「エアポート」号に指定席の設定があります。
快速「エアポート」号指定席(Uシート)
快速「エアポート」号の4号車は、指定席です。この指定席は「Uシート」と呼ばれていて、特急列車並みのリクライニングシートで快適に移動できます。
指定席券(大人840円/子ども420円)を別に買えば、このきっぷでUシートを利用できます。
実際の座席は、下の写真のような感じです。
WIFIや電源コンセントなどの設備はありませんが、かなり快適に過ごせます。そのため、外国人ユーザーを含め、そこそこ人気があるようです。
函館本線山線を走る普通列車
函館本線長万部駅から倶知安駅(北海道倶知安町)を経て、小樽駅に至る区間を、俗に「山線」と呼びます。沿線の風景がよいこともあって、乗り鉄ファンには根強い人気があります。
富良野線を走る普通列車
このきっぷでは、富良野線の一部区間(富良野駅から美瑛駅まで)に限り乗り放題です。ラベンダー畑や美瑛の丘といった風光明媚な風景を車窓から望めます。
指定席券なしで乗れることがあるUシート
札幌駅を中心に運用されるUシート付きの6両編成の列車は通常、快速エアポート号に充当されます。しかし、間合い運用として一部の普通列車にも充当されることがあります。
Uシートが連結されているにもかかわらず、それらの普通列車には指定席の設定がありません。つまり、運が良ければ指定席券なしでUシートに座れるということです。
この形態は知る人ぞ知るもので、地元のユーザーを中心に人気があります。6両編成で運行される函館本線や札沼線の普通列車には、Uシートが連結されている可能性があります。そのことを知っておくと、おトクです。
どこまで乗れば元を取れるか~コスパの分析~
一日散歩きっぷの値段がやや高めの設定であることを、冒頭で申し上げました。ただし、JR北海道管内の運賃水準が高いため、使い方によっては十分に元を取れます。
ここでは、どの程度乗車すればきっぷの元を取れるのかを考えていきます。
先に申し上げた通り、このきっぷの値段は大人2,540円/子ども1,270円です。したがって、片道で1,270円以上の区間を往復するか、片道で2,540円以上の区間を乗車すれば、きっぷの元を取れる形です。
それでは、そのような区間はどこが該当するのでしょうか。JR北海道の運賃テーブルは、次の通りです。
運賃計算キロ | 運賃額 |
(中略) | |
46-50km | 1,130円 |
51-60km | 1,290円 |
(中略) | |
101-120km | 2,420円 |
121-140km | 2,860円 |
片道の運賃計算キロが51km以上である区間を往復するか、片道の運賃計算キロが121km以上ある区間を片道でも乗車すれば、きっぷの元を取れることが分かります。
札幌駅から51km以上離れた駅は、函館本線余市駅(北海道余市町)/函館本線光珠内駅(北海道美唄市)/千歳線植苗駅(北海道苫小牧市)以遠の駅です。小樽駅/岩見沢駅/南千歳駅は距離が微妙に足りないため、何とも言えない価格設定です。簡単に元が取れるように思えますが、そんなことはありません。
新千歳空港駅については加算運賃が設定されているため、若干距離が足りなくてもギリギリ元が取れます。札幌駅から新千歳空港駅を日帰りで往復する場合には、このきっぷが適しています。
札幌駅を日常利用する人が、少し遠くに日帰りで出かけるような場合に、最適なきっぷであることが言えます。
まとめ
JR北海道管内の札幌近郊の駅で発売されているフリーきっぷ「一日散歩きっぷ」は、地元のユーザーを中心に人気があります。
きっぷの名称の通り、札幌圏を走る普通列車および快速列車に一日乗り放題になります。指定席券を別に購入すれば、快速エアポート号の指定席(Uシート)に乗車できます。
ただし、きっぷの発売条件にひとクセあり、決して買いやすいとは言えません。利用する当日にしか購入できず、購入できる駅も札幌近郊の駅に限られています。
前売りされず、新千歳空港駅・南千歳駅で発売されていないため、札幌を訪問するユーザーにとっては入手するハードルがとても高いです。札幌滞在2日目以降に利用するのが、現実的ではないでしょうか。
また、きっぷの発売金額が微妙に高く、遠くに出かけないと元を取ることができません。
このようなことから万人が気軽に利用できるわけではなく、対象ユーザーが選別されるような形です。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料 References
● 一日散歩きっぷ(2024年度設定)|JR北海道のおトクなきっぷ(JR北海道)2024.5閲覧
当記事の改訂履歴 Revision History
2024年5月28日:当サイト初稿
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