運賃割引適用の基準となる距離を判定する方法~割引きっぷをうまく購入する策を探る~

アプトの路 運賃制度

鉄道運賃の割引には、往復割引の他、学生割引・障害者割引があります。また、大人の休日俱楽部・ジパング俱楽部会員といったシニア向けには、対象区間について運賃・料金の割引が提供されています。

基本的にはJR各社における制度ですが、その他の私鉄各社においても制定されている場合があります。ただし、これらの割引は全区間で適用されるわけではなく、距離制限があることが多いです。

JR線と私鉄線の間では多くの列車が直通運転されていて、それらの会社をまたがって乗車する機会が多くあります。そのようなケースには、連絡運輸の普通乗車券を購入することがあります。連絡運輸が関係すると、上記の運賃割引が適用されるための条件がより複雑になります

実際に乗車する距離が100kmに少し満たない場合、乗車区間を101km以上としてきっぷを購入するのが、割引適用=運賃節約のコツです!

この記事では、鉄道における運賃割引の適用を判断する基準である距離について、様々なケースを取り上げて解説します。連絡運輸が関係する場合の特殊な条件をご説明することで、理解を深めていただきたいと思います。

運賃割引の中では往復割引が有名ですが、当記事では学割や障害者割引、シニア向け割引といった対象者の属性による運賃割引に焦点を当てます。

この記事を読むと分かること
  • 学割や障害者割引(単独)が適用される距離は101km以上であること
  • 連絡運輸が絡む場合は割引種別によって基準が異なること
  • 途中下車可否の判定は通算の営業キロで判定すること

ユーザーの属性による運賃の割引は適用条件が複雑

上野駅きっぷうりば

鉄道運賃の割引には、全てのユーザーが受けられる往復割引の他、対象となるユーザーのみが受けられる割引が多くあります。

属性による運賃割引の中では「大人の休日俱楽部・ジパング俱楽部」会員向け割引が目立っています。その他には、指定学校の学生が受けられる「学生割引」(以下「学割」)や、障害者手帳を持ったユーザーが受けられる「障害者割引」があります。

「大人の休日俱楽部・ジパング俱楽部」会員割引は運賃・料金ともに割引になりますが、他の割引は運賃のみの割引です。

特に、障害者割引はとても複雑で、種別・等級によって受けられる割引内容が大きく異なります。当記事では詳しい説明を割愛しますが、割引が適用される場合、本人と介護者ともに運賃が5割引になります。ただし、介護者なしで単独で利用する場合、営業キロが片道101km以上になる場合に限られます。

学割についても、営業キロが片道101km以上で運賃が2割引となります。その適用条件は、障害者が単独で利用する場合と類似しています。

これらの割引はいずれも乗車する営業キロが基準になるため、距離の判定が非常に重要です。割引を適用させるためにきっぷの購入区間を調整するといった観点が、ここで発生します。

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連絡運輸が関係すると条件が複雑になる鉄道運賃の割引

鉄道きっぷには、一つの鉄道会社だけが乗車区間であるきっぷだけではなく、複数の鉄道会社にまたがって乗車するきっぷもあります。「連絡運輸」という複数の鉄道会社が連携する制度があり、乗車区間が複数の会社にまたがった連絡乗車券が発売されています。

首都圏における代表的な列車には特急「踊り子」号があり、JR線と伊豆急行線・伊豆箱根鉄道線にまたがった連絡乗車券を利用する機会があります。

連絡乗車券の値段は、原則的には各社の運賃額を合計したものとなります(運賃の「併算制」と呼ばれます)。

しかし、乗車券としては1枚のため、運賃の割引適用や途中下車の判定は通しの営業キロで行います学割および障害者割引(単独旅行)が適用されるのは、いずれも片道100km超です

学割は一つの鉄道会社当たり片道101km以上の営業キロが必要ですが、障害者割引は全体の区間を通算して片道101km以上の営業キロがあれば割引が適用されます。両者とも一見類似しているように思えますが、実は大きな違いがあるわけです。

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運賃割引が誤って適用されなかった事例も

近江鉄道普通列車

本来は運賃割引を受けられるケースにもかかわらず、条件が複雑なために割引適用が漏れてしまったケースがありました。滋賀県内を走る近江鉄道での出来事でしたが、後日発覚し報道されました。

療育手帳および身体障害者手帳を所持し第二種に該当するユーザーは、片道101km以上を単独旅行するケースに限って、運賃が5割引になります(このような制限や条件なしに割引を行う他の鉄道会社の事例も多くあります)。

この事象では、割引が本来適用されるべき療育手帳所持者の単独旅行において漏れが発生し、逆に割引が適用されるべきではない介護者付きの旅行において割引がされていました。

割引を適用する際の距離を判定する場合、近江鉄道線内だけではなく、連絡するJR線の営業キロを含めることが正当です。しかしながら、この事象においてはJR線部分の考慮がなされていなかったことにより、割引適用に漏れが発生したと考えられます。

それでは、割引の種類別に詳細を見ていきましょう!

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学割における距離判定

指定学校に在学する学生は、営業キロが片道101km以上のきっぷを購入する際、学割として運賃が2割引きになります。割引を受ける際には、学割証を取得した上で駅に提出します。

いま、営業キロが101kmの場合と申し上げましたが、一つの鉄道会社あたり101km以上である必要があります。連絡運輸が関係する場合に連絡乗車券を購入する場合が、特に複雑です。

例えば、近鉄線とJR線の2社を通しで乗車する場合、それぞれ101km以上となる場合のみ割引が適用されます。近鉄線の区間が101km以上であればその分が割引かれ、JR線の区間が101km以上であればその分が割引かれます。

学割適用となる経路図

JRの区間が割引になる場合「学割」、社線区間が割引になる場合「社学割」、両者が割引になる場合「鉄社学割」と、きっぷ券面に表示されます。

注意すべきは、全区間通算で101km以上ではなく、各別の営業キロで判定する点です。途中下車の可否が通算で101km以上かどうかで決まるため、ごっちゃになりやすいです。

この内容は、かつて学割を利用した老体の筆者よりも、現役の学生さんの方が詳しいですね。

障害者割引における距離判定

身体障害者手帳および療育手帳を所持するユーザーは、全ての鉄道会社で障害者割引を受けられます(運賃のみ)。障害者手帳には精神障害者保健福祉手帳もありますが、JR線や多くの会社線において2025年4月より割引が開始される旨の告知がありました。

これらの手帳には、種別や等級があります。身体障害者手帳および療育手帳に関しては「第一種」と「第二種」があり、運賃割引の条件が各社で異なります。

このうち、距離が関係するのは、第一種/第二種の単独旅行(介護者を伴わず一人で乗車すること)です。

第二種の障害者割引の場合、学割とは異なり、JR線と私鉄線の営業キロが「通算で」101km以上であれば、全区間で運賃が5割引になります。各鉄道会社で101km以上必要なことではない点に留意したいです。この点が誤って解釈されたのが、先ほど例示した近江鉄道の一件です。

途中下車可否の判定も、後述するように営業キロが通算して101km以上あるかどうかで行うため、運賃割引と平仄(ひょうそく)が取れます。

障害者割引が適用となる経路図

ここで設例を一つ挙げましょう。JR・東武連絡特急列車「スペーシア日光・きぬがわ」号に乗車する際に必要な乗車券は、連絡乗車券です。JR線・東武線それぞれの営業キロは片道101kmに満たないですが、通算すると片道101km以上となり、障害者割引の対象になります。

運賃の障害者割引に関して、ネット上には誤った情報が多くあふれているため、注意したいです。

2025年4月に導入される精神障害者保健福祉手帳所持ユーザーに対する障害者割引の導入に関する詳細を、以下の別記事(↓)にまとめてあります。是非ご一読ください。

「大人の休日俱楽部」「ジパング俱楽部」割引における距離判定

シニア世代が会員になれる「大人の休日俱楽部」および「ジパング俱楽部」においては、運賃だけではなく料金も所定の割合で割引になります。

当該割引を適用する場合でも、他会社線との連絡乗車券を購入できます。ただし、割引の適用条件には注意が必要です。

割引適用には、JR線区間のみで合計201km以上ある必要があります。これは、片道・往復・連続乗車券であればいずれでも大丈夫です。連絡する会社線の営業キロを通算できないので、注意しましょう。

連絡乗車券の割引そのものもJR線区間のみで、会社線区間は割引なしの運賃が加算されます。

学割の項目でもお話しした通り、途中下車の可否判定が101km以上かどうかなので、これもごっちゃになりやすいです。

途中下車可否の距離判定

大宮駅6番線ホーム

当記事の本題ではありませんが、きっぷの効力を語る上で欠かせない、途中下車制度適用可否の判定についてもご説明しておきたいと思います。

途中下車制度は、営業キロが片道101km以上の普通乗車券に適用されます。着駅に至るまでの途中駅できっぷを回収されずに旅行を継続できるため、運賃計算が有利になることがあります。途中下車制度が適用されない場合もありますが、できる限り活用したいです。

途中下車制度の基本については、以下の別記事(↓)がとても詳しいです。情報が必要な方は、是非ご一読ください。

ここでは、JR線と他鉄道会社線との連絡乗車券の場合について触れます。この場合「通算で」101km以上あれば、全区間で途中下車が可能となります。101km以上であるかどうかが、途中下車を考える上でのキモです。

JR線区間のみで101km以上必要なわけではないことに留意しましょう。

当記事でご説明する学割や障害者割引の距離判定と混乱しがちなので、しっかり区別できるようになりたいです。

連絡運輸を活用してきっぷの条件を良くする考え方および実例については、以下の記事(↓)をご一読ください。運賃割引ではなく、途中下車可否の判定に関する具体的な情報です。

距離の条件を満たしてきっぷを購入するのが賢いやり方

これまでご説明したことを踏まえると、実際に乗車する距離が割引適用の基準に少しだけ満たない場合の対処法が導き出されます。

お伝えするまでもなく、金額を比較した上で割引条件を満たすようにきっぷを購入した方が安くなることが分かります。例えば、営業キロ90km分のきっぷを所定の運賃で購入するのではなく、営業キロ101km分のきっぷを割引で購入するといったケースがこれに該当します。

割引を利用できる場合、制度を賢く活用したいです。

ここで、筆者の意見を少しだけお話しします。

連絡運輸の縮小によって割引を受けるチャンスが減る

ここまで見てきた通り、学割や障害者割引を適用する上で、連絡運輸はユーザー目線でメリットがあります。特に、東武鉄道や近畿日本鉄道(近鉄)といった営業エリアの広い鉄道会社においては、連絡運輸が本来重要です。

ところが、連絡運輸は縮小する一方です。特に、2023年春にJR東日本と東武鉄道の連絡運輸が、普通乗車券に関して大幅に整理されました。連絡運輸の設定そのものがなくなったため、学割や障害者割引を受けられる機会が失われる結果となりました。

JR西日本エリアやJR東海エリアにおいては、学割や障害者割引に絡んだ連絡乗車券の発売は続いていて、公共交通機関の役割を果たしていると言えましょう。

JR東日本に関しては、当記事の件のみならず、ユーザー切り捨ての施策を多く講じているような印象を受けます。一当事者として、本当にこれでいいのだろうかと不安を覚えます。

まとめ

アプトの路

鉄道運賃の割引の適用を決めるのは、乗車券の営業キロです。学割や障害者割引(単独旅行)は、片道の営業キロが101km以上となってはじめて適用となります。大人の休日俱楽部・ジパング俱楽部については、経路の全体で201km以上となれば所定の割引が適用されます。

連絡運輸が関連する場合、割引適用の基準となる距離の算出方が割引種別によって異なり、非常に複雑です。

以下の通り、JR線と他会社線との営業キロを通算できる場合とできない場合があります。

◆ 通算

  • 障害者割引
  • 途中下車可否の判定

◆ 不通算

  • 学割
  • 大人の休日俱楽部・ジパング俱楽部

この中でも障害者割引(単独旅行)については、JR線と他会社線の営業キロを通算して101km以上になれば割引が適用されます。一見ハードルが低いように見えますが、最近は連絡運輸の縮小の影響で適用を受けられる区間が減少しています。

ユーザー目線では、地味な部分で連絡運輸のメリットがあります。鉄道会社には、安易に設定を廃止しないことが求められます。

参考資料 References

● 知的障害者の一部の割引運賃、32年にわたり適用せず 近江鉄道 (朝日新聞)2024.3.07付

● 全線100キロ未満なのに割引条件は101キロ以上? 複雑すぎる「障害者運賃割引」 (神戸新聞)2019.9.14付

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第28条(学生割引普通乗車券の発売)

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第156条(途中下車)

● 旅客鉄道株式会社 身体障害者旅客運賃割引規則 第5条(取扱区間)

● 旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則 第17条・第53条(学生割引普通乗車券の発売)

● 旅客鉄道株式会社 旅客連絡運輸規則 第76条(途中下車)

改訂履歴 Revision History

2024年4月20日:初稿 修正

2024年3月20日:初稿 修正

2024年3月18日:初稿

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