地下鉄南北線・都営三田線|営業形態ときっぷの解説~同じ線路を2社で運営する事例~

都営三田線6500形電車 運賃制度

東京都心部を走り、東急線やその先の相模鉄道線に乗り入れる路線は、地下鉄南北線と都営三田線です。普段は何も考えずに乗車しますが、実はとても興味深い路線です。

目黒駅(東京都品川区)から白金高輪駅(東京都港区)までの区間では同じ線路を共用し、地下鉄南北線と都営三田線が走っていることは広く知られています。そんな路線は、運賃やきっぷの面でも実に特殊ですが、普段はなかなか意識しないのではないでしょうか。

筆者もその特殊さを見逃してきたのですが、改めて目黒駅や白金高輪駅を訪れ、この区間に乗車しました。普通の駅では1社のきっぷしか売っていないところ、これらの駅には東京メトロと都営地下鉄の券売機が並んでいて、ある種異様な風景です。

地下鉄南北線と都営三田線に関しては、路線の所有と営業、運行主体が異なる事例ですが、鉄道事業に関する法律の裏付けがあります。石川県や岡山県のローカル鉄道にも同じような事例がありますが、東京のど真ん中でもこのような事例があるのです。

地下鉄南北線と都営三田線の運営形態について、普段はなかなか意識することがありません。列車の直通運転に目を惹かれがちですが、運賃制度やきっぷからその特殊さにようやく気付けます。

この記事では、他社が建設した線路や施設を使用し、自社で営業や車両の運行を行う事例として、東京メトロ南北線および都営地下鉄三田線の目黒駅から白金高輪駅までの区間を紹介します。これらの駅の様子をお伝えし、購入できるきっぷをみていきましょう。

この記事を読むと分かること
  • 目黒駅・白金高輪駅間は2社局共同運営の区間であること
  • 同駅間はどちらの会社のきっぷを買っても大丈夫なこと
  • 目黒駅は東急電鉄が管理するため、きっぷの発売が委託されていること

他社所有の路線への列車の乗り入れ・営業形態~地下鉄南北線/三田線の場合~

白金高輪駅出入口

地下鉄南北線は、目黒駅から赤羽岩淵駅(東京都北区)までの21.3kmの区間で、東京メトロが営業しています。また、都営地下鉄三田線は、同じく目黒駅から西高島平駅(東京都板橋区)までの26.5kmの区間で、東京都交通局が営業しています。

東京地下鉄南北線と都営三田線

この区間のうち、目黒駅・白金高輪駅間(2.3km)では、東京メトロおよび東京都交通局の2社が営業する形です。この区間の線路や施設は東京メトロが所有しますが、当該区間のきっぷについては両社が発売します。

目黒駅では両線が東急電鉄目黒線と相互直通運転を行っているため、路線の営業形態や運行形態が余計に複雑です。また、この区間には相模鉄道や東急電鉄、埼玉高速鉄道の車両が入ってきて、見られる車両が百花繚乱です。

鉄道路線は原則的に1社で所有し、営業し、列車を運行します。しかし、それには例外があります。本記事にて紹介する地下鉄南北線および都営地下鉄三田線のケースが、その例外に該当します。

したがって、目黒駅・白金高輪駅間で完結するきっぷ(目黒駅・白金高輪駅相互間)には、東京メトロ発行のものと東京都交通局発行のものがみられます。この区間の運賃には特定運賃が定められていて、それらのきっぷは同額です。以前は東京メトロと東京都交通局の初乗り運賃が同額ではなかったため特定運賃の違いが明確でしたが、本記事時点では両社とも同額のため、特定運賃であることが見えにくいです。

鉄道事業を運営するための法律に「鉄道事業法」があり、3つの運営形態が定義づけされています。

それは、鉄道路線を敷設して自ら営業する「第一種鉄道事業」、他社の路線を使用して自ら営業する「第二種鉄道事業」、そして鉄道路線を敷設して他社に営業させる「第三種鉄道事業」です。

目黒駅ー白金高輪駅間について当てはめると、路線を所有し、かつ営業するのが第一種鉄道事業者の東京メトロ、東京メトロの線路を使用して営業するのが、第二種鉄道事業者の東京都交通局です。

それでは、駅の様子やきっぷを見ていきましょう。

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地下鉄南北線/都営地下鉄三田線の駅訪問

最初に、共用区間の目黒駅と白金高輪駅の駅の様子を見ていきます。

目黒駅

目黒駅にて、東急目黒線と接続します。東急新横浜線を経て、相模鉄道線方面に直通運転します。

東急目黒駅きっぷうりば

目黒駅のきっぷうりばには、東急電鉄、東京メトロ、都営地下鉄の3社の券売機が設置されています。まとめて東急電鉄が管理しています。

目黒駅東京メトロ南北線券売機

東京メトロの券売機。普通乗車券だけではなく、24時間券などの企画券も購入できます。

目黒駅都営三田線券売機

都営地下鉄の券売機。こちらも普通乗車券以外に連絡乗車券、企画券を購入できます。

都営地下鉄6500形電車

そして、地下深くにあるホームへ。都営三田線の西高島平駅ゆき列車には、東京都交通局の乗務員が目黒駅から乗務します。

埼玉高速鉄道2000系電車

東急目黒線に入っていく列車。埼玉高速鉄道の車両です。

白金高輪駅

東京メトロが第一種鉄道事業者として管理する駅です。

白金高輪駅出入口

駅の入口には、東京メトロと都営地下鉄の2社が併記されています。

白金高輪駅きっぷうりば

改札口手前にあるきっぷうりば。目黒駅と同様、東京メトロと都営地下鉄の券売機が並んでいます。

白金高輪駅東京メトロ券売機

東京メトロの券売機。南北線専用と表示されています。

白金高輪駅都営地下鉄券売機

都営地下鉄の券売機。東京メトロが管理していますが、他の駅と同様、普通乗車券や企画券を購入できます。

白金高輪駅駅名標

白金高輪駅のホームは2面4線で、地下鉄南北線と都営三田線が別のホームから発着します。これは、都営三田線の駅名標ですが、東京メトロ仕様です。

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東京メトロ/東京都交通局が発売するきっぷ

駅で入手できる普通乗車券は金額式のみで、素っ気ないです。しかし、その背景を知ってからきっぷを眺めると、とても興味が湧いてきます。

東京メトロ発売分

目黒駅から白金高輪駅までの区間は、東京メトロが第一種鉄道事業者として営業している区間です。したがって、きっぷも特記することはありません。ただし、目黒駅におけるきっぷの発売は東急電鉄に委託されています。

目黒駅東京メトロ運賃表

目黒駅きっぷうりばに掲示された東京メトロの運賃表。南北線麻布十番駅以遠に向かう場合、東京メトロの券売機できっぷを購入します。

東京メトロ24時間券

実際に使用するための東京メトロ24時間券も、目黒駅にて購入しました。領収書を券売機では出力できないため、改札口にて処理機から出力された東急電鉄名義のレシートをもらいました。

東京都交通局発売分

東京都交通局が第二種鉄道事業者として営業するため、東京メトロが管理する区間にもかかわらず、自社のきっぷを発売しています。

目黒駅都営地下鉄運賃表

目黒駅きっぷうりばに掲示された都営地下鉄の運賃表。共用の白金台駅、白金高輪駅にも運賃額が表示されています。都営三田線三田駅以遠に向かう場合、都営地下鉄の券売機できっぷを購入します。

都営地下鉄普通乗車券

目黒駅にて購入した都営地下鉄180円区間の乗車券。東京メトロの乗車券と効力は同じです。東急電鉄が管理している駅にもかかわらず、券売機にて領収書を取得できました。

2社の乗車券の対比

きっぷそのものは単なる金額式の券売機で、きっぷ鉄的には特におもしろい部分はありません。今回は、制度面をきっぷから感じることに意義があります。

普通乗車券目黒駅購入分

目黒駅で購入した2社の乗車券。目黒駅・白金高輪駅相互間として使用する場合、いずれも効力は同じです。

普通乗車券白金高輪駅購入分

白金高輪駅で購入した2社の乗車券。白金高輪駅・目黒駅相互間の乗車券として使用する場合、いずれも効力は同じです。

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まとめ

東京都心に位置する地下鉄南北線/都営三田線の目黒駅から白金高輪駅までの区間は、両社が営業し、両社の列車が同じ線路を走る珍しい運営形態です。

目黒駅では東急目黒線に接続しているため、上記路線の共同営業と東急線との列車の相互乗り入れが同時にみられる稀な場所です。

目黒駅ー白金高輪駅相互間では、施設を所有する東京メトロが第一種鉄道事業者、東京メトロの施設を使用する東京都交通局が第二種鉄道事業者として、それぞれ正々堂々と営業しています。

この区間には両社の列車が乗り入れていますが、目黒駅にて接続する東急電鉄との相互直通運転とは制度面で似て非なるものです。

同じ区間を2社が営業しているため、きっぷもそれぞれ発売されます。この区間は競合関係にはないため、どちらの会社のきっぷでも同じ効力で、同区間を走るすべての列車に乗車できます。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料 References

● 東京メトロ 営業のご案内(東京地下鉄)2023.3

● 鉄道要覧 R4年版

● 鉄道事業法 第2条(定義)

改訂履歴 Revision History

2024年02月28日:初稿 修正

2024年01月11日:当サイト初稿(リニューアル)

2023年9月07日:前サイト初稿

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