「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」購入・利用体験【2021年夏限定発売】

東京スカイツリー アーカイブ

東武東上線・越生線を除く東武本線系統の全線に2日間乗り放題な乗車券と、東京スカイツリーの天望デッキ・天望回廊の両方を利用できる入場券がセットになった「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」(以下、デジタルきっぷ)が、2021年7月中旬から9月末までの期間限定で発売されました。

今日では多くの鉄道会社からデジタルきっぷが発売されるようになりましたが、2021年夏当時はまだまだ先駆的な取り組みでした。

東武線圏内に住む筆者も、このきっぷに興味津々でした。そこで、2021年8月のある週末に時間を確保し、東武線の乗り鉄と東京スカイツリーからのサンセットを楽しみました。

この記事では、実証実験的な意味合いもあった「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」の概要と購入方法、実際の利用体験をご紹介します。

1日目には、東武野田線(アーバンパークライン)の乗りつぶしをしてから、東京スカイツリーの天望デッキ・天望回廊を夕暮れ時に訪れました。そして、2日目には東京から鬼怒川温泉に向かい、「SL大樹」号に乗車してみました。

このデジタルきっぷは現在発売されていませんが、デジタルフリーきっぷが試行発売された先進事例として、記事に残したいと思います。

この記事を読むと分かること
  • 2021年に1回だけ発売された先駆的なデジタルきっぷであること
  • 東武本線のフリーきっぷと東京スカイツリー入場券とセットで販売
  • 2日間有効とはいえ48時間利用が可能だったこと

デジタルフリーきっぷの先駆け

東武鉄道ウェブサイトより引用

鉄道におけるデジタルきっぷ発売の取り組みが広がってきたのが、このデジタルきっぷが発売された2021年のことです。その頃はデジタルきっぷの発売事例を見ることはほとんどなく、紙のフリーきっぷがまだまだ全盛でした。

そんな中にあって、東武本線系統全線が乗り放題という、前例がないきっぷが発売される点に筆者も強く惹かれました。

デジタルきっぷの販売価格は大人3,000円と破格な価格設定で、電車に乗れば簡単に元が取れました。東京スカイツリーの天望デッキに入場し、東武線沿線のどこかへ行く場合にはおトクな設定でした。このデジタルきっぷは「乗車券」のみのため、特急列車やSL列車に乗車する際の「特急・座席指定料金」は別に支払う必要がありました。

また、このデジタルきっぷを見せると、東武系の観光施設数箇所で割引を受けられました。その詳細については、この記事では割愛させていただきます。

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「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」の購入方法

「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」は、東京スカイツリーの「天望デッキ」と「天望回廊」の両方に入場できるチケットと、東武東上線・越生線を除く全線に2日間乗り放題な乗車券(東武フリーパス)のセット券でした。インターネット上でオンライン購入が可能でした。このデジタルきっぷは、実際に利用開始する30日前から前日までに購入する必要があり、利用開始当日には購入できませんでした。

きっぷの料金は、年齢に応じて以下の金額でした。天望デッキと天望回廊の前売セット券(休日用)の価格と同額でした(大人の場合同額で、小人・中人は少し高い)。したがって、東京スカイツリーの入場券のおまけとして、乗車券としての「東武フリーパス」が付いている形といえます。

  • 大人(18歳以上)3,000円
  • 中人(12-17歳)2,700円
  • 小人(6-11歳)1,700円

乗車券部分の「東武フリーパス」は紙のきっぷではなく、スマホ上のウェブブラウザの画面上に表示される画像情報でした。そのため、普通の紙の乗車券と違い、次のものを用意する必要がありました。

  • インターネット接続可能なスマートフォン
  • 決済手段としてのクレジットカード

購入するには以下のURLにアクセスし、東京スカイツリーに入場する日時と人数を指定してから決済をし、購入を完了する形でした。支払手段の選択肢にはクレジットカードか、WeChatPayなどの日本人が通常利用しないバーコード決済のいずれかが表示されるため、実質的にはクレジットカードが必要でした。

代金の決済を済ませ、きっぷの購入が完了すると、以下の画面が表示されました。この画面上からは、スカイツリーの入場券のQRコードが表示されたバウチャーと、東武線の乗車券を表示できるバウチャーにそれぞれ飛ぶことができました。

実際のバウチャーは以下のような感じで、紙への印刷用とスマホでの表示に最適化されたイメージとの両方が提供されました。

東京スカイツリー入場券部分のバウチャー
東武フリーパス(乗り放題乗車券)部分のバウチャー
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「東武フリーパス」(2日間乗り放題の乗車券)を利用開始

今回は、大宮駅から東武野田線を利用して船橋駅まで通しで乗車し、JR線と都営バスで東京スカイツリーに移動して都内に宿泊。翌日に、浅草駅から特急列車とSL列車で鬼怒川温泉を往復し、大宮駅に戻る経路で移動しました。

最初に東武線の電車に乗車する時が、デジタルきっぷの使用開始(アクティベーション)となります。使用開始に合わせて、デジタルきっぷのバウチャーから東武フリーパスへのリンクをクリックし、使用開始の画面を表示します。

前の画面で[利用]を押すとこの画面が表示され、本当に利用開始するか確認されます。駅の有人改札に着いた時にこの画面を表示します。

きっぷをアクティベートした瞬間にこの画面(緑色)が表示されて、有効期限までのカウントダウンが始まります。このきっぷの有効期間は2日間ということになっていますが、実際はアクティベートした瞬間から48時間利用が可能です。

実際の画面イメージは、東武鉄道のロゴマークの部分が動画になっていて、その動画部分を駅員さんに見せて有人改札を通るようになっています。

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東武野田線(アーバンパークライン)乗りつぶし

東武野田線10000系電車

2139A列車:大宮駅 15時14分 → 船橋駅 16時31分

東武野田線は愛称が「東武アーバンパークライン」で、さいたま市大宮区の大宮駅から千葉県柏市の柏駅を経由して、千葉県船橋市の船橋駅を結ぶ62.7kmの路線です。大宮駅から柏駅までは国道16号線にほぼ並行する郊外路線です。運行系統は、柏駅で実質的に分割されています。柏駅発着の列車が多いですが、日中の急行列車は大宮駅から船橋駅まで通しで走る列車もあります。

筆者は、土曜日の日中に走る急行列車に通しで乗車してみました。

東武野田線大宮駅

大宮駅には東武線も乗り入れていますが、JRに埋もれる形で地味な存在です。東武野田線乗り場は、東口のルミネ1の一角にひっそりと存在しています。

東武大宮駅ホーム

大宮駅のホームは島式ホーム1か所で、駅としては小規模にもかかわらず、乗客数はかなり多い印象を持ちます。

東武大宮駅駅名標

大宮駅の駅名標。東武線といえばラインカラーはオレンジ色です。しかし、野田線系統はブルーなのが印象的です。さいたま市に東武線が走っているイメージは薄いのですが、れっきとした東武圏内です。

東武大宮駅行先標

発車表示板。大宮駅でも、船橋行きの表示を見られます。

この日乗車した急行列車の車両は、リニューアルされた10000系でした。6両編成の進行方向最前部に乗車しましたが、柏駅で折り返しとなり、進行方向の最後部となります。

東武野田線10000系電車

急行列車は途中の春日部駅まで急行運転し、その先運河駅まで各駅に停まり、それ以遠は終点の船橋駅まで再び急行運転です。約1時間15分の小さな旅でしたが、終点の船橋駅まで通しで乗車したのはおそらく筆者だけだったと思います。。。

東京スカイツリーからのサンセットを楽しむ

そして、土曜日の夕方に東武野田線の終点船橋駅からJR線と都営バスを乗り継ぎ、本所吾妻橋に向かいました。

東京スカイツリー

東京スカイツリーに登る前に、本所吾妻橋近くの源森橋で、東京スカイツリーを背景に東武電車の行き来するところを眺めました。

東京スカイツリー入場チケット

スカイツリーの天望デッキには、夕方18時少し前に入場しました。バウチャーのQRコードをスマホ上に表示させて、自動発券機に読み込ませます。それで、入場券を受け取りました。

東京スカイツリーから望むサンセット

待ち時間なしで展望台へ。日中は家族連れが多いのですが、夕方の主な客層として、若者のグループやカップルが目立ちました。この日は空にもやがかかっていたため、富士山を眺めることはできなかったのですが、西方に沈む太陽を拝むことができました。

特急「リバティけごん」号で下今市駅まで乗車

東武特急リバティ

リバティけごん3号:浅草駅 7:00分 → 下今市駅 8:45分

東武浅草駅

東京スカイツリーに登った翌朝早く、特急列車の始発駅である浅草駅に向かいました。

リバティけごん号特急券

浅草駅では、「リバティけごん」号の特急券と、接続する「SL大樹」号の座席指定券を購入。それから列車が発車するホームに上がり、列車に乗車しました。

特急リバティ行先標

早朝の列車ということで3両編成でしたが、当時は乗客も少なく、空いていました。

「SL大樹」号に乗車して鬼怒川温泉駅へ

SL大樹

SL大樹1号:下今市駅 9:33分 → 鬼怒川温泉駅 10:09分

SL大樹座席指定券

SL大樹の座席指定券。入鋏のチケッターのデザインがなかなかgoodです。

下今市駅駅舎

リバティけごん3号が定刻に下今市駅に着いてからSL大樹1号の発車まで45分ほどあったので、一旦駅の改札口を出て外から駅舎を眺めました。下今市駅全体が大正ロマン風にまとめられていますが、駅舎も例外ではなく、レトロな装いです。

SL大樹空席状況

東武鬼怒川線には蒸気機関車が複数あって、1日に4往復が運転されています。SL列車同士の離合が見られるのは、日本国内でおそらく東武鬼怒川線内だけだと思われます。というわけで、SL1号から8号まで運転されますが、いずれの列車も「空席あり」でした。

SL大樹

発車の13分前の9時20分に列車が入線してきましたが、この日は乗客がとても少なかったです。普段は機関車に群がる多くの人々が、この時はほとんどおらずさみしい感じがしました。

客車の1-3号車それぞれの入口には、アテンダントさんが一人づつ立ち、乗客を出迎えていましたが、ちょっと寂しそうでした。

下今市駅ホーム発車標

駅ホームにある発車案内表示も凝っていて、フォントがレトロ風です。東武鉄道は、設備投資に気合を入れているなぁと思います。

この列車の2号車はあいにくドリームカーではなかったこともあってか本当に空いていて、乗車した3号車には筆者の他に一人しか乗客がおらず、ほぼ貸し切り状態でした。

アテンダント通信

SL大樹が走り出してからちょうど4年ということで、「アテンダント通信」は4周年記念号でした。乗客にとっては「アテンダント通信」目当てにリピートするのもありだと思います。この取り組みには、スタッフさんが尽力されていることが感じられます。

JR直通特急「きぬがわ」号で帰路に

JR東日本253系電車

きぬがわ4号:鬼怒川温泉駅 10時39分 →(東武日光線・JR宇都宮線経由)→ JR大宮駅 12時16分

鬼怒川温泉駅駅舎

筆者はこの日、鬼怒川温泉に滞在する時間がなかったため、SL転車台での作業を見学してからすぐにJR大宮駅まで直通特急列車に乗車しました。

JR・東武線直通特急列車は、運賃・料金がやや特殊です。

チケットレス特急券もなく、乗車券として交通系ICカードも使えないため、紙のきっぷをあらかじめ購入しなければなりません(予約システムがJRのマルスで、東武線内の特急予約システムと異なります)。

JR東日本の駅で事前に特急券・乗車券を購入しておくか、鬼怒川温泉駅(現地)の駅窓口で紙の特急券・乗車券を購入しなければいけません。東武線内の特急列車に比べ、料金的にも高額なため、乗車を躊躇するのが本音です。

特急きぬがわ号B特急券

今回は東武線乗り放題の「東武フリーパス」を持っているので、余計にイレギュラーな案件でした。特急券はJR大宮駅まで通しで購入しましたが、乗車券については、乗り越し先のJR線内の分を東武線内で購入できず、厄介でした。というわけで、鬼怒川温泉駅では、通しの特急券だけを購入して、ひとまず乗車。

鬼怒川温泉駅発車標

駅の改札口を通ってホームに向かう途中の案内表示。特急「きぬがわ」号はJR線内に入っていきます。

JR東日本253系電車

車両はJRの253系。東武のスペーシア100系電車と違ってオーソドックスな車両で、個室もない簡素な列車です。

特急きぬがわ号行先標

車両の行先表示。JR新宿行きの列車は、東武線がカバーしていない大宮、池袋、新宿に出るには便利な列車です。

列車が発車してから東武線内を走る時間が長く、東武線からJR宇都宮線に入る栗橋駅には11時50分頃に到着。栗橋駅では乗務員交代のため、3分間程度運転停車。栗橋駅の渡り線に入る直前には架線のデッドセクションがあって、車両の惰性で進むヒヤヒヤな箇所です。

JR線内に入ってから、運賃の車内精算をしてもらうべくJRの車掌さんを待っていましたが、栗橋駅を発ってから大宮駅までは約20分しかなく、なかなかやってこなくて、気持ちがやきもきしました。

栗橋駅から大宮駅ゆき車内補充券

今回「東武フリーパス」を持っていることもあって、その事情を着駅で説明するエネルギーもなかったので、何としてでも運賃を車内精算しておきたかったのです(不正乗車と疑われかねない)。何とか車掌さんを呼び止め、車内精算を何とかしてもらい、手元には印字された車内補充券が残りました。

「東武フリーパス」の有効期限が満了

土曜日の午後にアクティベートして使用開始したフリーパス。48時間の使用期間が満了したのは、月曜日の午後でした。緑色だった画面イメージが真っ赤に変わって、使用できない状態になりました。

今回は、東京スカイツリーの天望デッキ・天望回廊の入場と、東武野田線の片道乗車、鬼怒川温泉までの往復乗車で、約7千円分の価値を3千円で利用できたことになります。2日間にわたり東武沿線をめいいっぱい楽しめて、おトクなきっぷでした。

まとめ

東京スカイツリー

東武本線系統の全線が2日間にわたって乗り放題で、東京スカイツリーの入場券がセットの「東武本線乗り放題デジタルきっぷ」は、発売された2021年当時には先進的なきっぷでした。まだまだデジタルきっぷの発売がされていなかった中での試行的な取り組みであったと考えます。

2日間有効で大人3,000円というという価格設定は破格で、鉄道を利用するだけで十分に元を取れました。それに加えて東京スカイツリーの入場券が付いていて、一粒で二粒分おいしいという感じでした。

現在ではデジタルフリーきっぷが鉄道会社各社で広がってきましたが、先進的な事例としてこのデジタルきっぷを永久に記録しておくに値すると思います。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料 References

● 東武鉄道ニュースリリース:「東京スカイツリー天望回廊付き東武本線乗り放題デジタルきっぷ」 を発売します! 2021.7.15付

https://www.tobu.co.jp/cms-pdf/releases/20210715114349POpDQvFK0O0nPawYP9Ak2w.pdf

改訂履歴 Revision History

2024年01月27日:初稿

2021年9月02日:原文作成

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