東京都心部を頻繁に電車で移動するユーザー向けに、JR山手線の全区間およびJR中央線の一部区間(山手線内に限る)に乗り放題の定期券があることをご存じでしょうか。
「山手線内均一定期券」を購入すれば、1か月14,970円で山手線内の全区間が乗り放題です。いわば、山手線に1か月無制限に乗車できるサブスクと考えて差し支えないでしょう。
この定期券の使い勝手が良いことは言うまでもありませんが、果たして元を取れるのかが気になります。

この定期券が使用できるのは記名人のみに限定されるため、複数人での使いまわしができません。価格設定がかなり高く、元を取るためのハードルはかなり高いです。
この記事では、JR東日本が発売している「山手線内均一定期券」をご紹介します。この定期券のサンプルを示した上で、購入方法、価格面や使い勝手におけるメリットやデメリットを考えていきたいと思います。
- 山手線内の通勤と営業先・用務先への往訪を1枚の定期券に集約できること
- ネットやモバイルでの購入が不可能で、駅窓口で購入する必要があること
- 磁気定期券として発売されるため、IC専用改札を通れないこと
山手線内均一定期券の概要

定期乗車券を購入する場合、通常は購入する前に乗車区間を決めます。当然ながら、運賃は乗車区間に応じて変動します。しかし、その原則の例外に当たるのが、当記事で取り上げる「山手線内均一定期券」です。
山手線内均一定期券はJR各社の運送約款(旅客営業規則)上、特殊均一定期券に分類されます。これは均一運賃で、有効期間内で設定区間を無制限に乗車できます。
特殊均一定期券の発売対象区間が唯一東京山手線内とされているため、山手線内均一定期券として発売されている形です。乗り放題となる東京山手線内の対象区間は以下の通りで、各駅の駅名標には[山]と表示されています。

- JR山手線:全区間
- JR中央線:神田駅・代々木駅間および秋葉原駅・御茶ノ水駅間
山手線内均一定期券は1か月間有効で、発売額は大人14,970円と固定です(うち280円が鉄道駅バリアフリー料金)。したがって、3か月定期や6か月定期、通学定期の設定はありません。
また、JR東日本の東京地区で利用可能なオフピーク定期券も、この定期券には適用されません。
このように、商品設計が非常に単純明快であるため、購入条件や値段に迷いを抱く余地はありません。ちょうど、1か月間乗り放題で14,970円のサブスクを購入する感覚です。
山手線内均一定期券の様式

これが、山手線内均一定期券のサンプルです。
プラスチック製の磁気定期券で、耐久性が考慮されています。JR東日本の様式では、偽造防止のための処理が比較的シンプルです。

定期券の種類として「特殊均一1箇月」、有効区間として「東京山手線内」、「東京山手線内各駅間有効」と記載されています。
有効期間は使用開始日から1か月間で、翌月の応当日の前日まで有効です(このサンプルでは、26日から翌月25日まで有効)。
券面に記載された発売金額は、大人14,970円で固定です。使用者の氏名と年齢が記名人として記載されています。
山手線内均一定期券については交通系ICカードに搭載できないため、必ず磁気定期券となります。
山手線内均一定期券の購入方法

山手線内均一定期券は、ネットや指定席券売機では購入できません。最寄りの駅にあるみどりの窓口での購入が必要です。
購入する際、記名人の氏名(カタカナ)および生年月日、電話番号を購入申込書に記入し、窓口に提出します。
現金もしくはクレジットカードで決済し、磁気定期券を受け取る形です。
山手線内均一定期券のメリット・デメリット

商品設計がシンプルな山手線内均一定期券は、メリットやデメリットが明確です。ここで、深く掘り下げたいと思います。
メリット
1か月14,970円で山手線内の全区間が無制限に乗車可能である点が、この定期券を活用する上での最たるメリットです。使い方によっては、東京都心部での交通費を削減できる可能性があります。
- 定期券の効力が万能であること
- 営業先・用務先への往訪にも活用できること
山手線内の区間が通勤経路に含まれる場合、山手線内均一定期券を購入すれば通勤だけではなく、用務で山手線内の区間を頻繁に移動することが可能です。利用区間や頻度によっては、企業にとって経費節減につながる可能性があります(経理処理は別に考慮するとして)。
例えば、池袋駅・品川駅間の1か月通勤定期運賃(8,290円)と山手線内均一定期券14,970円との差額は、6,680円です。オフィスが品川駅で、東京駅の近くにある営業先に定期的に往訪するとしたら(普通片道運賃180円)、19回往復すれば元を取れる計算です。
8,290円 + (180円 x 2 x 19回) = 15,130円
このように、定額で1か月間乗り放題の山手線内均一定期券は、究極のサブスクと言えるでしょう。
デメリット
山手線内均一定期券の使い勝手が万能である一方、根本的なデメリットがいくつかあります。
- 価格設定が高いこと
- 記名人しか使用できないこと
- 磁気定期券のみであること
価格設定の高さ
元を取るのが難しい点が、この定期券を購入する上での高いハードルです。
山手線内均一定期券の価格である14,970円は、山手線一周34.5km分の通勤定期運賃に相当します。この区間の普通片道運賃は500円であるため、30回分の利用を想定した商品設計です。
しかし、山手線内で乗車する際の1回あたりの運賃は、現実的には200円前後であることが多いです。そのため、単純に片道運賃で比較する限り、元を取るためにはより多くの回数乗車しなければなりません。
記名人のみ使用可能である点
この定期券のサンプルを見た通り、券面には記名人が記載されています。持参人方式ではないため、記名人以外は使用できません。
例えば、営業用に会社で1枚購入し、複数の従業員で使いまわすことが不可能です。このことが、価格面での元の取りにくさにつながっています。
磁気定期券に限定される点
山手線内均一定期券はIC定期券化されておらず、磁気定期券として利用します。したがって、IC専用改札口を利用できません。
また、オフピーク定期券は、交通系ICカードSuica限定です。そのため、この定期券に関してはオフピーク定期券の適用対象外で、価格面での恩恵を受けられません。
まとめ

東京山手線内のJR線全区間に1か月間無制限に乗車可能なのが「山手線内均一定期券」です。
規則上、特殊均一定期券に分類され、定期運賃が一律で大人14,970円と定められています。ちょうど、東京都心部のJR線に1か月間乗り放題のサブスクを購入する感覚です。
山手線内均一定期券は磁気定期券として発行されるために交通系ICカードには搭載できず、IC専用改札を通れません。ネットや指定席券売機では発売されておらず、駅のみどりの窓口で購入する必要があります。
IC定期券ではないため、オフピーク定期券の設定もありません。
JR山手線一周経路片道34.5km分の普通片道運賃500円をベースに定期運賃が設定されているため、非常に割高です。通勤利用だけでは元を取るのが難しく、通勤利用にプラスして東京都心部を頻繁に往訪するようなユーザーに適しています。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第95条第4号(大人定期旅客運賃)
当記事の改訂履歴
2025年7月21日:当サイト初稿
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