西九州新幹線や九州内の在来線特急列車の予約購入に活用できるのが、JR九州が運営するネット予約サービス「JR九州インターネット列車予約」です。基本的には、特急券と普通乗車券をセットで発売することが想定されています。
しかし、特急券や普通乗車券をそれぞれ単体で購入したいケースがあるでしょう。
実は、「JR九州インターネット列車予約」では、普通・快速列車に乗車する場合に必要な普通乗車券を特急券を伴わずに購入できます。このサービスを利用すれば駅に行かなくても普通乗車券を購入可能になったため、きっぷなしに乗車する心配がなくなりました。
出先で使用するきっぷをあらかじめこのサービスで購入し、駅で受け取っておけば、きっぷうりばの列に並ぶ必要はありません。事前にきっぷを持っていれば、とても安心ですね。

このネット予約サービスで購入できる普通乗車券は、乗車前に駅での受け取りが必要です。事前にきっぷを受け取れない場合、普通乗車券の購入手段として適していません。
この記事では、「JR九州インターネット列車予約」を利用して特急券を伴わずに普通乗車券のみを購入することに焦点を当てます。普通乗車券だけで購入できるようになった背景やメリット・デメリットを探り、実際に普通乗車券を購入・受け取りした様子をご紹介します。
- 取扱エリアが「e5489」と重複しているため、補完的な役割にとどまること
- 簡易委託駅のきっぷうりばでは、紙のきっぷの受け取りができないこと
- 福岡市地下鉄および肥薩おれんじ鉄道にまたがる通過連絡運輸の取扱が可能なこと
「JR九州インターネット列車予約」で購入できる普通乗車券
普通列車や快速列車に乗車するには乗車券だけでよく、特急券は必要ありません。
しかし、「JR九州インターネット列車予約」では特急列車のきっぷを購入することが前提だったため、普通列車を利用する場合にこのサービスを利用できませんでした。
現在は、普通乗車券のみでの購入機能が追加されたため、このような制限なしに必要なきっぷを購入できるようになっています。
「e5489」との関係
JR九州が運営する「JR九州インターネット列車予約」の取扱エリアは、JR西日本が運営するネット予約サービス「e5489」の取扱エリアに完全に含まれています。そのため、このサービスで予約購入したきっぷをJR西日本管内でも受け取り可能で、便利です。
所定運賃の普通乗車券であれば「e5489」で事足りるため、「JR九州インターネット列車予約」は代替手段に過ぎません。普通乗車券の購入に限っては、いわば「e5489」の下位互換版と言えるでしょう。
九州内の一部連絡運輸で威力を発揮
しかし、乗車区間にJR線以外が含まれる連絡運輸が関係する場合、その限りではありません。JR九州管内でしか購入できない連絡乗車券を購入する場合、「JR九州インターネット列車予約」を利用しなければなりません。
例えば、JR筑肥線と直通運転する福岡市地下鉄や肥薩おれんじ鉄道に関しては、JR九州と通過連絡運輸の設定があります。両社との連絡乗車券を購入するケースでは「JR九州インターネット列車予約」が威力を発揮すると言えるでしょう。
ただし、このサービスが対応している連絡運輸関連の普通乗車券は、ごく一部の区間に限定されていることに留意したいです。
「JR九州インターネット列車予約」の概要や特長、きっぷの買い方について、別の記事に詳しくまとめてあります。以下の記事をぜひご一読ください。
普通乗車券のみを購入できるようになった背景

「JR九州インターネット列車予約」において特急券を伴わずに普通乗車券のみを購入できるようになった背景には、以下のような事情があると考えられます。
無人駅の増加・窓口業務の合理化
JR九州管内にも無人駅が多く、みどりの窓口も減少傾向です。きっぷうりばがある駅であっても簡易委託駅で、扱っている券種に限りがあります。
券売機すら設置されていない無人駅から乗車する場合、ネット予約サービスでのきっぷの予約購入が便利です。また、指定券を扱っていない駅を利用するユーザーにとっては、ネット予約サービスで指定券を予約購入できると重宝します。
特急券と普通乗車券の発売を分離する必要性
昨今は、特急券と乗車券がセットのきっぷだけではなく、チケットレス特急券の発売が進んでいます。JR九州管内ではチケットレス特急券は導入されていませんが、取扱エリアに含まれるJR西日本管内では導入が進んでいます。
チケットレス特急券を利用する際、交通系ICカードを利用することが想定されています。そのため、乗車券をセットで発売する必要はありません。
それでも、乗車券を購入したいニーズはあるはずです。そのようなケースに備え、ネット予約サービスで普通乗車券のみを発売する必要があると言えます。
さらに、三障害にかかわる手帳を所持するユーザー向けの割引乗車券の発売が、ネット予約サービスでも始まっています。特急券には割引が適用されないため、割引が適用される普通乗車券を特急券とは別に購入できる必要があるのです。
普通乗車券のみを「JR九州インターネット列車予約」で購入するメリデメ
普通乗車券のみをネット予約サービスで購入できるようになれば、ユーザー目線では利便性が増す形でメリットを享受できます。ただし、「JR九州インターネット列車予約」は紙のきっぷを受け取ることが前提のサービスであるため、いいことばかりではありません。
ここでは、普通乗車券のみを「JR九州インターネット列車予約」で購入することのメリットおよびデメリットを検討します。
メリット
普通乗車券を駅で購入する場合、原則的には乗車当日に発駅で購入することになります。他駅発の普通乗車券を購入できること(他乗代と言います)が一般的ですが、規則上は購入が不可能です。したがって、会社によっては他駅発の普通乗車券を発売しないことがあります。
しかし、「JR九州インターネット列車予約」では、駅ではない箇所できっぷを予約購入する形です。そのため、自駅・他駅という概念がそもそも生じません。これが、どこにいても各駅発のきっぷを購入できる形でユーザーにメリットをもたらします。
上述した規定にかかわらず、JR九州管内の駅では元々他乗代に関する制限はありませんでしたが、ネット予約サービスの登場で利便性がより一層増しました。
デメリット
前述した通り、所定運賃の普通乗車券を単体で購入する点においては、「JR九州インターネット列車予約」は「e5489」の下位互換版です。つまり、e5489のユーザーであれば、普通乗車券を購入するためにわざわざJR九州インターネット列車予約を利用する必要がありません。
また、このサービスを利用して購入した普通乗車券は、紙のきっぷです。したがって、乗車する前にネット予約サービスの受け取りが可能な駅できっぷを受け取らなければなりません。
この受け取りの制約が、サービスのデメリットと言えるでしょう。
例えば、仙巌園駅(鹿児島県鹿児島市)のような無人駅やきっぷうりばがある簡易委託駅には、マルス端末や指定席券売機が設置されておらず、きっぷの受け取りが不可能です。また、受取エリア外である東日本地区に在住している場合、あらかじめ受け取ることができません。
このような場合、あらかじめネット予約サービスできっぷを購入し、受け取っておくのは、必ずしも現実的であるとは言えません。
さらに、JR九州の駅では、交通系ICカード、片道デジタルきっぷ、クレジットカードのタッチ乗車といった運賃の支払手段が多様で便利です。そのため、ネット予約サービスで普通乗車券を買うことが必ずしも優れた手段とは限りません。

「JR九州インターネット列車予約」を利用して、近距離区間の普通乗車券を購入してみました。きっぷの購入手順と実際に受け取ったきっぷをご紹介します!
「JR九州インターネット列車予約」で近距離きっぷを購入!
普通列車しか停車しない日豊本線仙巌園駅を着駅とする普通乗車券を、特急券を伴わずに単独で購入してみました。
ウェブブラウザ上での購入手順を説明した上で、実際に受け取った普通乗車券をご紹介します。駅窓口で受け取ったため、指定席券売機での受取手順の説明は割愛します。
ウェブブラウザ上の操作の流れ
「JR九州インターネット列車予約」できっぷを購入するには、利用登録が必要です。あらかじめ登録を済ませましょう。
1.「JR九州インターネット列車予約」のトップページを開き、乗車区間、乗車日、人数を入力します。[乗車券のみ購入する]のチェックボックスをクリックすると、乗車券だけでの購入が可能になります。

2.[乗車券のみ購入する]にチェックが付くと、メッセージが表示されます。メッセージが表示されれば、乗車券のみの購入モードに入ったことが分かります。

3.検索結果が表示されます。通常は特急券と乗車券のセット料金が表示されますが、普通乗車券の金額が表示されています。

4.決済方法を指定し、購入を完了します。購入が完了すると、6で始まる5桁の予約番号が表示されます。駅でのきっぷ受け取りの際に必要なので、忘れずに控えましょう。

指定席券売機の受取画面
「JR九州インターネット列車予約」で予約した無割引の普通乗車券は、JR九州管内の指定席券売機およびJR西日本管内のみどりの券売機で受け取れます。もちろん、両社の駅窓口でも受け取り可能です。

これは、JR西日本みどりの券売機できっぷを受け取る際に表示される画面です。「JR九州インターネット列車予約」を押します。
普通乗車券の様式
最終的にどのようなきっぷを手にするか、ここで見てみましょう。

これは、きっぷを受け取れない仙巌園駅に代わり、JR九州管内の他駅の窓口で受け取った普通乗車券です。きっぷの左上に「JR九州ネット予約」と表示されており、ネット予約サービスで購入したきっぷであることが分かります。
まとめ

JR九州が運営するネット予約サービス「JR九州インターネット列車予約」では、特急券と乗車券がセットになったきっぷばかりではなく、特急券を伴わない普通乗車券を単独で購入できます。
このサービスの取扱エリアおよびきっぷの受け取りエリアがJR西日本のネット予約サービス「e5489」と重複しているため、いわば「e5489」の下位互換版です。普段「e5489」を利用しているのであれば、わざわざ「JR九州インターネット列車予約」を利用する必要はありません。
ネット予約サービスを利用して普通乗車券を買えば、発駅に縛られることがありません。取扱エリア内の任意の駅を発駅として自由に普通乗車券を購入できるのは、ネットならではのメリットです。
しかし、JR九州管内においては、紙のきっぷを利用する以外にも交通系ICカードやクレジットカードのタッチ決済、片道デジタルきっぷといった多様な運賃支払手段が用意されています。利用区間によっては、事前に受け取りが必要な紙のきっぷに依存する必要はありません。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● インターネット予約のご案内 | 駅・きっぷ・列車予約(JR九州)2025.9閲覧
当記事の改訂履歴
2025年9月02日:当サイト初稿
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