交通系ICカードアプリをインストールしたスマートフォンで自動改札をスムーズに通過する光景は、もはや日常となりました。その代表的なアプリが「モバイルSuica」です。
このアプリはJR東日本が開発しており、Androidスマートフォンに搭載されています。
「モバイルSuica」に「お金」をチャージすれば、その残高を鉄道運賃や物販の支払いに利用できます。また、Suicaグリーン券やおトクなきっぷもアプリ上で購入可能です。
しかし、「モバイルSuica」を利用する上で意外と戸惑うのが、利用履歴の確認や領収書の発行ではないでしょうか。普段、鉄道や店舗を利用する際にはあまり意識しないため、いざ必要になったときに困ってしまうかもしれません。

「モバイルSuica」へのチャージはクレジットカードのみと思われがちですが、実は現金でのチャージも可能です。現金でチャージする場合は、その場で領収書を受け取るのを忘れないようにしましょう。
この記事では、Androidスマートフォン版「モバイルSuica」の利用履歴や領収書を自分で発行する方法を解説します。Androidスマートフォンをお持ちであることを前提に説明を進めます。
- 会員メニューサイト上で利用履歴や領収書をPDFファイルとして取得できること
- 現金チャージした分の領収書については会員メニューサイトで取得できないこと
- 非接触ICカードリーダーを利用すると利用履歴をCSVファイルで取得できること
意外に分かりにくい「モバイルSuica」利用履歴・領収書の出し方
「お金」をチャージして鉄道を利用したり、店舗で代金を決済するのに便利な「モバイルSuica」。しかし、利用履歴を調べたり、そのデータをファイルとして手元に保存したい場合、困ることがあるのではないでしょうか。

筆者自身も「モバイルSuica」の利用履歴や領収書を紙媒体やファイルで欲しいと思うことがあります。しかし、その方法が分かりにくいために面倒になって、アプリ上の確認で済ませてしまいがちです。
アプリ上にデータを表示するのは至って簡単ですが、ファイルとしていざ手元に保存しようとすると、意外に方法が分からずにつまづいてしまいます。そのためのサポート情報が意外に少ないため、筆者の体験を共有したく、当記事を投稿しました。
当記事での「お金」という表現について
「モバイルSuica」にチャージした残高は、正式には「ストアードフェア(Stored Fare)」、略して「SF残高」と呼ばれます。これは、「貯められた運賃」を意味する専門用語です。
しかし、現在ではこの残高が鉄道運賃だけでなく、電子マネーとして物販の決済にも広く利用されています。
当記事では、より分かりやすくご説明するため、便宜的にこの残高を「お金」と表現することにします。
「モバイルSuica」の会員メニューサイト
スマートフォンで利用する「モバイルSuica」アプリに関連するツールとして、Webブラウザで閲覧できる会員メニューサイトが用意されています。「モバイルSuica」のユーザーであれば誰でも当該サイトを利用して、さまざまな情報の確認や設定が可能です。

会員メニューサイトでは、以下のことを行うことができます。
- モバイルSuicaのステータス確認
- 「お金」の利用履歴の確認
- 利用明細書・領収書のダウンロード
- 各種手続き
ただし、会員メニューサイトのユーザーインターフェースは、かなり古いです。画面がレスポンシブ対応ではないため、スマートフォンでは操作しにくいです。そのため、これから説明する内容を実行するには、PC上のWebブラウザで操作することをおススメします。
会員メニューサイトへは、以下のリンクからどうぞ。
チャージした「お金」の利用履歴・領収書の発行方法
「お金」をチャージするには、登録したクレジットカードでオンライン決済するしかないと思われがちです。しかし、現金でのチャージも、実は可能です。
ここでは、チャージした「お金」の利用履歴を確認する方法、および領収書を発行する方法をご説明します。
「モバイルSuica」アプリ・会員メニューサイトでの確認方法
「モバイルSuica」を利用して消費した「お金」の利用状況を確認するには、「モバイルSuica」アプリか会員メニューサイトを使用することが基本です。
「モバイルSuica」アプリや会員メニューサイトからは利用履歴の確認が可能で、会員メニューサイトからは領収書の発行ができます。
「モバイルSuica」アプリ上での利用履歴の確認
「モバイルSuica」アプリ上で操作を行うと、利用履歴の参照が簡単に行えます。履歴が表示された画面のスクリーンショットを撮ることも、一時的な手段になり得るでしょう。
ただし、アプリでは紙媒体やデータとして記録を保持できないため、会員メニューサイトでデータを取得するための操作が必要です。
会員メニューサイトでの利用履歴の入手
過去26週以内かつ最新100件分の利用履歴を、PDFファイルとしてPCに保存できます。

会員メニューサイトでの領収書の発行
登録したクレジットカードでチャージした分の領収書が、過去1年分にさかのぼって発行可能です。ただし、自動改札でのオートチャージ分については、領収書が発行されません。

取引の手段と期間を指定すると、該当する取引が表示されます。その中から必要なものにチェックを入れ[印刷]をクリックすると、PDFファイルとして領収書をPCにダウンロード可能です。

この領収書は、適格簡易請求書としてインボイス対応になっています。また、電子データとしての処理も可能です。
駅のチャージ専用機・コンビニATMでの確認方法
駅のチャージ専用機やコンビニにあるATMでは、スマートフォンであっても現金チャージできます。
緑色の近距離用券売機および黒色の多機能券売機はスマートフォンを扱えないため、「モバイルSuica」のチャージを行えません。桃色のチャージ専用機を利用しましょう。

現金チャージをする際、レシート状の利用明細や領収書を発行できます。
駅のチャージ専用券売機(桃色)
初期画面には、チャージ金額のボタンと利用履歴を表示・印字するボタンがあります。

ここで利用履歴印字を選択すると、最新の利用履歴が紙のレシートとして出てきます(20件もしくは100件)。

チャージする金額を選択すると[領収書]ボタンが表示されます。

ここでボタンを押してから現金を入れると、レシート状の領収書が出てきます。

注意すべきなのは、現金チャージした分について、上記会員メニューサイト上でPDF領収書を出力できない点です。電子領収書(PDFファイル)が必要な場合は、アプリ上から登録したクレジットカードでチャージし、当該サイト上で領収書を取得することをおススメします。
コンビニのATM
コンビニ店内にあるセブン銀行ATMなどで、「モバイルSuica」の現金チャージを行えます。ATMでは利用明細書(領収書)を発行できますが、利用履歴の表示・印字を行うことはできません。
セブンイレブン店内にあるセブン銀行ATMでチャージしてみました。

チャージが完了した後に、金額が表示された利用明細書(領収書)を発行できます。

非接触ICカードリーダーによる利用履歴確認
非接触ICカードリーダーを利用すると、自宅やオフィスで「モバイルSuica」の利用履歴をデータとして保存することができます。
ソニー製の「RC-S300」は、交通系ICカードを扱える非接触ICカードリーダーです。これをPCに接続し、「モバイルSuica」が搭載されたスマートフォンをかざします。
すると、専用ソフト「SFCard Viewer 2」上に最新20件分の利用履歴を表示できます。チャージした手段がクレジットカードか現金か関係なく、履歴の表示が可能です。
この方法の利点は、利用履歴をCSVファイルとして保存し、データとして利用できることです。法人用にはSuicaの精算や管理を行う他のソリューションもありますが、個人では非接触ICカードリーダーを利用する方法が最適でしょう。
ソニー製の「RC-S300」については、以下のページを参照してください。
Suicaグリーン券を購入する場合の領収書取得方法
普通列車用のSuicaグリーン券を「モバイルSuica」アプリ上で購入できます。ただし、登録したクレジットカードでのオンライン決済に限定され、駅のホームにあるSuicaグリーン券発売機は利用できません。

「モバイルSuica」アプリで購入したSuicaグリーン券の領収書は、上述した会員メニューサイトから自分で発行します。
「お金」をチャージした分の領収書を発行するのと同じ手順で、領収書を発行する取引を選択します。

[印刷]すると、領収書がPDFファイルとしてPCに保存されます。これも、インボイス対応です。

「モバイルSuica」アプリ上で購入できる「おトクなきっぷ」の領収書を発行したい場合も、上記の手順に従います。
「モバイルSuica」や非接触ICカードリーダーのサポートが必要な場合
「モバイルSuica」アプリや非接触ICカードリーダーを利用していると、トラブルに遭遇することがあります。
「モバイルSuica」の利用は、基本的に自己責任です。サポートが必要な場合、JR東日本が提供している以下のサポートサイトを参照し、自己解決を目指しましょう。
※「Access Denied」と表示されますが、気にせずクリックして問題ありません。
どうしても自己解決が難しい場合は、サポートセンターにメールで連絡します。筆者が利用した経験では、返信は比較的早いものの、対応が必ずしも親切とは言い切れません。
「モバイルSuica」アプリのトラブルの原因は、アプリ側とスマートフォン側の両方が考えられますが、いずれかの切り分けが困難です。トラブルを自己解決するのが困難であることが、モバイルSuicaが普及する上での大きな課題だと考えています。
非接触ICカードリーダーのサポートについては、製造したメーカーのサポートセンターに連絡します。例えば、ソニー製のリーダーであれば、ソニーのサポートセンターが窓口です。
まとめ

Androidスマートフォンに交通系ICカード「Suica」を格納したのが、「モバイルSuica」です。「お金」のチャージやSuicaグリーン券の購入がスマートフォン上で完結するため、とても便利です。
ただし、モバイルSuicaの利用履歴や領収書の出し方がやや分かりにくいです。
利用履歴や領収書をPDFファイル形式で取得するには、「会員メニューサイト」という管理画面にアクセスします。しかし、このサイトの設計は古く、スマートフォンでは閲覧しにくいです。そのため、PC上で操作することをおススメします。
「お金」のチャージに関しては、登録したクレジットカードによるオンライン決済以外にも、駅のチャージ専用機やコンビニATMでの現金チャージが可能です。
チャージ専用券売機では、現金チャージ分の紙の領収書(レシート)や利用履歴の印字ができます。ATMでは、領収書として利用できる利用明細票を取得可能です。
非接触ICカードリーダーを用意すれば、最新の利用履歴をCSVファイルとして抽出できます。
「モバイルSuica」は単なるアプリではなく、生活必需品である交通系ICカードです。このサポートを個人のITリテラシーに依存してしまうことに問題を感じているのは、筆者だけでしょうか。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● モバイルSuica>Android端末をご利用のお客さま (JR東日本) 2025.7閲覧
当記事の改訂履歴
2025年7月31日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年10月27日:前サイト初稿(原文作成)
コメント