サイドトリップ型の経路における運賃計算・きっぷの買い方~連続乗車券か別途購入か~

JR西日本223系電車 運賃制度

出発駅から到着駅まで移動する際、ふと寄り道をしたくなることがありませんか。その場合、途中駅から別の路線に分岐乗車して寄り道をする駅へ立ち寄り、再び途中駅に戻って移動を再開することになります。

例えば、京都市内には二条城や嵐山、東福寺といった観光スポットがあり、それぞれ山陰本線やJR奈良線でアクセスできます。京都駅から、それらの路線に乗り継ぐ形です。

このような場合、きっぷの買い方をうまく考える必要があります。寄り道をする区間だけ往復乗車券を別に買うか、寄り道する経路をあらかじめ全体の経路の一部に組み入れるか、迷いどころです。

王道はありませんが、分岐乗車区間の距離が短ければ往復乗車券を別途購入し、距離が長ければ連続乗車券を買うのも一策です。

この記事では、途中駅で寄り道をし、サイドトリップの経路を取る場合の運賃の計算方法、経路の取り方によって生じる運賃の差について考えていきます。分かりやすい例として、東海道新幹線京都駅で途中下車し、京都市内の駅に立ち寄る事例を取り上げます。

この記事を読むと分かること
  • 分岐区間を乗車する場合、二通りの運賃計算が可能なこと
  • 経路上に特定都区市内駅や70条ゾーンが含まれる場合、運賃計算に要注意
  • きっぷの買い方次第で乗車変更や払いもどしに影響が及ぶこと

経路の途中でサイドトリップ(分岐乗車)となる設例

東海道新幹線N700系

月次で発売される大判の時刻表には、運賃計算のルールが掲載されています。その中に、サイドトリップとなる経路に関する分岐乗車の設例があります。JR日光線宇都宮駅(栃木県宇都宮市)から日光駅(栃木県日光市)までの区間を分岐乗車するケースが、とても有名です。

この場合、経路上で折り返して乗車する形(複乗)となるため、経路全体を一枚の片道乗車券に含めることはできません。

したがって、宇都宮駅から日光駅までの往復乗車券を別途購入するか、当該区間を含んだ連続乗車券を購入するか、都合の良い方を選ぶことになります。

どのような場合に複乗となり運賃計算を打ち切るか、基本的な考え方について別の記事にまとめました。以下の記事(↓)を是非ご一読ください。

冒頭で申し上げた京都市内には有名な寺社や観光スポットが多くあり、筆者も寄り道したくなることがあります。二条駅や嵯峨嵐山駅には山陰本線で、JR東福寺駅にはJR奈良線で向かうことができます。

それぞれの駅に向かうには、これらの区間の往復乗車券を別途購入するか、連続乗車券を購入するか、いずれかを選択することになります。

必要なきっぷの組み合わせがどのようになるか、具体的には下記のイラストでイメージしていただきたいです。

きっぷの組み合わせ

しかし、いずれの駅も、特定都区市内制度上の京都市内の駅に該当する点に注意が必要です。全体の経路の距離によって購入すべききっぷが異なります。また、別途乗車する区間が京都市内で完結する場合、そのきっぷは購入しなくてもよいことになります。

京都市内の駅に立ち寄り、別途購入した往復乗車券の実例を挙げながら、サイドトリップ型の経路となる場合の運賃計算を、これから具体的に検証していきたいと思います。

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大阪市内→京都市内寄り道→東京都区内における運賃計算の実例

大阪市内から東京都区内に帰る機会がありました。その際、京都市内にある円町駅(京都市中京区)に用事ができ、立ち寄ることになりました。

大阪駅から東京駅までの経路図

今回は「大阪市内 ➡ 東京都区内」の片道乗車券をあらかじめ買っていたため、京都駅・円町駅間の往復乗車券を別途購入しました。

しかし、このような経路の場合、大阪市内のいずれかの駅から円町駅までの区間と、円町駅から東京都区内までの2枚の片道乗車券を買うことも考えられます。もちろん、連続乗車券として購入しても差し支えありません。

これから、それぞれのパターンできっぷを購入した場合の運賃計算を実際に行っていきたいと思います。

分岐乗車区間を別途購入する場合の運賃計算

京都駅駅名標

大阪市内から東京都区内までの片道乗車券と、分岐乗車する区間(京都駅・円町駅間)の往復乗車券を購入するパターンです。

  • 大阪市内 ➡ 東京都区内【片道】
    営業キロ556.4km/片道8,910円
  • 京都駅 ➡ 円町駅 ➡ 京都駅【往復】
    営業キロ5.8km/片道190円 往復380円

合計金額は、9,290円です。

経路の営業キロが長ければ長いほど運賃の賃率(1km当たりの単価)が低廉になるため、運賃計算を安易に分割しないことが肝要です。このケースでは、ベースとなる経路の距離ができるだけ長くなるよう、片道乗車券としています。

全体を一組の連続乗車券とする場合の運賃計算

大阪市内のいずれかの駅から円町駅までの区間、および京都市内から東京都区内までの区間の2区間で一組の連続乗車券を購入するパターンです。

今回は、大阪市内の中心駅、大阪駅からの旅行開始としたいと思います。

  • (連続1)大阪駅 ➡ 円町駅
    営業キロ48.6km/片道860円
  • (連続2)京都市内 ➡ 東京都区内
    営業キロ513.6km/片道8,360円

合計金額は、9,220円です。

円町駅が京都市内の駅であるため、連続2の運賃計算は中心駅の京都駅から行う点に留意します。サイドトリップの区間が特定都市区内で完結する場合、一考の価値がある手法です。

結論

大阪駅から途中円町駅に立ち寄り、東京駅まで乗車した場合の運賃計算は、サイドトリップ部分のみ別途計算する場合と、連続乗車する場合とでは、ほとんど金額に差が生じませんでした。

ただし、別の区間で運賃計算をした場合には、計算結果から明確な有利不利がある可能性があります。王道はないため、事前の運賃シミュレーションをおススメします。

きっぷの買い方自体は、連続乗車券よりも片道乗車券・往復乗車券の組み合わせの方が簡単です。ただし、連続乗車券にもメリットがあるため、両者とも切り捨てることはできません。

それでは、実際に買ったきっぷをご覧いただきます!

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実際に購入したきっぷ

今回は、大阪市内から東京都区内ゆきの片道乗車券を買い求めた後に、円町駅への立ち寄りが決まりました。したがって、連続乗車券ではなく、全体の経路としての片道乗車券と、別途乗車分の往復乗車券の組み合わせとなっています。

● 大阪市内 ➡ 東京都区内 片道乗車券

大阪駅から東京都区内ゆき普通乗車券

● 京都駅 ➡ 円町駅 ➡ 京都駅 往復乗車券

(ゆき券片)

京都駅から円町駅ゆき普通往復乗車券

(かえり券片)

京都駅から円町駅ゆき普通往復乗車券
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東京都心部でサイドトリップ型の経路となる場合

JR東日本E233系電車

注意が必要なのが、東京都心部を通過する普通乗車券を使用する場合に寄り道をするケースです。この場合、旅客営業規則第70条の規定が影響するため、話が複雑です。

例えば、静岡駅(静岡市葵区)から東京都心部を通過し、大宮駅(さいたま市大宮区)まで向かう際の経路を考えてみましょう。東海道新幹線と上野東京ラインで着駅の大宮駅を目指していましたが、途中駅の東京駅(東京都千代田区)から吉祥寺駅(東京都武蔵野市)まで寄り道したくなったというようなケースです。

この場合に購入すべききっぷは、一体どの区間でしょうか。分岐乗車区間を別途購入する形になりますが、東京駅・吉祥寺駅間ではなく、新宿駅・吉祥寺駅間です。

静岡駅から大宮駅までの経路図

上図の通り、東京都心部(便宜的に「70条ゾーン」と呼びます)を通過する場合、最短経路にて運賃計算を行います。そして、実際に乗車する経路は、複乗とならない限りユーザーの任意とすることができます。

このケースに当てはめると、運賃計算上の最短経路は[品川駅(山手線)新宿駅(山手線)池袋駅(埼京線)赤羽駅]です。経路を工夫することによって、分岐乗車の区間を縮めることができます。

規則第70条は非常に難解ですが、このルールを知っていると運賃の節約に繋がります。

NOTE

新宿駅・吉祥寺駅間の運賃を別に支払うことにした場合、区間変更ではなく別途乗車扱いにしてもらうよう、駅係員に説明が必要です。分岐乗車を始めた東京駅まで戻ってきて、東北新幹線または上野東京ラインで大宮駅に向かう場合、東京駅・新宿駅間も複乗になります。その場合、東京駅・吉祥寺駅間の往復乗車券を購入する必要があります。

乗車変更・払いもどしをする場合の比較

サイドトリップ型の経路となる場合に購入するきっぷは、上述した通り、このイラストの組み合わせからいずれかを選びます。

きっぷの組み合わせ

このうち、往復乗車券と連続乗車券は2枚で一組の乗車券とみなします。したがって、乗車変更や払いもどしを行う場合の取り扱いには、注意が必要です。

乗車変更

乗車券から乗車券へ、指定券から指定券へといった乗車変更が、それぞれのカテゴリー内で可能です。これは「乗車券類変更」と言われ、きっぷの使用を開始する前(旅行開始前)であれば1回に限って可能です。

乗車券であれば、全く違う区間への乗車変更が1回のみ可能です。ただし、往復乗車券や連続乗車券の場合は、2枚とも使い始めていないことが条件です。

特に、連続乗車券の場合、1枚目を使い始めてしまった場合には、2枚目だけでの乗車券類変更ができません。その場合「区間変更」の扱いとなりますが、変更後の運賃が安くなった場合も差額の返還がないことになっているため、ユーザーにとっては不利です。

払いもどし

これも、往復乗車券と連続乗車券は2枚で一組の考え方です。旅行開始後でも払いもどしできる場合がありますが、旅行開始前に払いもどすのが基本です。往復乗車券の帰りの分のみ、または連続乗車券の2枚目のみの払いもどしができない点に留意したいです。

払戻手数料は、乗車券一組につき320円です。きっぷを全く使っていない場合、2枚セットでも1枚分の手数料で済むため、別々の片道乗車券として購入するよりも有利です。

まとめ

JR西日本223系電車

旅行する経路から外れて寄り道する場合、その経路はサイドトリップ型となります。その場合、きっぷの買い方の検討が必要です。

サイドトリップとなる分岐区間の往復乗車券を別途購入するか、サイドトリップの区間を含めて一組の連続乗車券を購入するか、ユーザーが選択することになります。

基本的には、両者の運賃計算をした上で比較検討し、総額が安い方できっぷを買うとよいでしょう。

特定都区市内制度やいわゆる「70条ルール」によって、サイドトリップに絡む運賃計算がより複雑になるのが、運賃計算上の難点です。

乗車変更や払いもどしのルールも、片道乗車券とは異なっています。通常できる取り扱いが不可能なこともあるので、よく注意しましょう。

参考資料 References

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第26条(普通乗車券の発売)

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則 第70条(特定区間における旅客運賃・料金の営業キロ又は運賃計算キロ)

改訂履歴 Revision History

2024年02月28日:初稿 修正

2024年02月03日:初稿

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