新大阪駅・北新地駅発着の運賃を大阪駅起点に調整する特例【規則第88条・第89条】行先が「大阪・新大阪」のきっぷを見る

山陽本線普通列車姫路駅にて 運賃制度

大阪駅・新大阪駅から在来線または山陽新幹線に乗車して姫路駅以遠に向かうための普通乗車券を手にした時、距離によっては「大阪・新大阪」が表示されていることにお気づきでしょうか。

出発駅あるいは到着駅として単一の駅名または特定都区市内(大阪市内等)が乗車券に記載されているのが通常ですが、2駅が併記されていることを不思議に感じた方がいるのではないかと思います。

また、大阪駅に近接しているJR東西線北新地駅を発着し、同線加島駅を経て尼崎駅以遠の各駅に向かう場合の運賃も、非常に興味深いです。大阪駅の地下ホームであることはうめきたと共通しているものの、北新地駅は営業上大阪駅とは別の駅です。

このように、大阪駅・新大阪駅・北新地駅をめぐっては、きっぷに関して不思議な現象が見られます。線区の成り立ちによって不可欠になった運賃計算上の特例を苦心して設けたことが、旅客営業規則の条文からうかがえます。

大阪駅からの営業キロが200kmを超える区間に関しては特定都区市内制度が適用され、当記事で挙げる特例の対象にはなりません。営業キロが200km以下の区間に適用される範囲限定の特例であることを押さえるとよいでしょう。

この記事では、大阪駅・新大阪駅・北新地駅をめぐる普通乗車券に適用されるさまざまな特例を徹底的に探っていきます。当記事が、条文からどのような取り扱いが類推されるかを理解するための助けとなれば幸いです。

この記事を読むと分かること
  • 【88条】大阪駅と新大阪駅が一つの駅として扱われ、発売条件や効力に影響が及ぶこと
  • 【89条】北新地駅発着(加島駅経由)は運賃計算キロの調整で、効力に影響がないこと
  • 特定都区市内制度が適用される(大阪市内発着となる)場合には特例が適用されないこと

「大阪・新大阪」駅をめぐり何が起こっているか?きっぷの現物を確認

大阪駅駅名標

最初に、大阪駅(大阪市北区)および新大阪駅(大阪市淀川区)を発着するきっぷの特殊性について、2つの事例を見ていきましょう。

大阪駅・新大阪駅から岡山駅までの普通運賃

これらの駅をめぐる最も身近な場面は、岡山駅(岡山市北区)に向かう時に購入するきっぷです。

大阪駅・岡山駅間については、山陽新幹線と在来線(東海道本線・山陽本線)が並行しており、新幹線に乗車するか在来線普通・快速列車に乗車するかを選べます。

大阪駅・新大阪駅から姫路駅までの路線図

ここで留意したいのが、大阪駅と新大阪駅の位置関係です。

新幹線は大阪駅に乗り入れておらず、隣の新大阪駅を発着します。実質的に同じ駅として機能している大阪駅と新大阪駅が、営業キロで3.8km離れていることをここで押さえておきましょう。

両駅から岡山駅までの本来の営業キロは、以下の通りです。

  • 大阪駅・岡山駅間:営業キロ176.5km(東海道本線・山陽本線経由)
  • 新大阪駅・岡山駅間:営業キロ180.3km(山陽新幹線経由)

営業キロ3.8kmの差があるわけですが、ここで注目したいのが運賃帯です。営業キロがかたや180km以下、かたや180km超と運賃帯をまたいでおり、本来は運賃額が異なります。特例がなければ大阪駅発着は3,080円、新大阪駅発着は3,410円です。

実質的に同じ駅である大阪駅・新大阪駅発着の区間において運賃額が異なるのは、どう考えても合理的ではありません。

普通乗車券の現物を確認

ここで、大阪駅と新大阪駅を発着するきっぷを見てみましょう。

姫路駅(兵庫県姫路市)より岡山駅方に4駅離れた山陽本線網干駅(兵庫県姫路市)ゆき普通乗車券の現物をご紹介します。

大阪駅と新大阪駅から網干駅までの営業キロは以下の通りですが、この区間についても営業キロが3.8km分乖離しています。

  • 大阪駅・網干駅間:営業キロ98.2km
  • 新大阪駅・網干駅間:営業キロ102.0km

本来ならば、運賃額に差が生じても不思議ではありません。

ゆきに在来線、かえりに新幹線を利用することを想定し、経由の異なる普通乗車券を購入してみました。

(ゆき)

大阪駅・新大阪駅から網干駅ゆき普通乗車券

(かえり)

網干駅から大阪駅・新大阪駅ゆき普通乗車券

これらの券面に表示された経由欄は当然異なりますが、いずれも大阪駅発着として運賃計算を行い、運賃が調整された結果同額です。

大阪駅と新大阪駅が同一の駅とみなされるため、発着駅として「大阪・新大阪」と券面上に表示されていることが分かります。普通乗車券の発駅および着駅に関しては、原則的に単一の駅名あるいは特定都区市内が表示されますが、この例は非常に特殊と言えるでしょう。

北新地駅発着の普通運賃にも調整が

大阪駅と地下通路でつながっている北新地駅(大阪市北区)は、一見すると大阪駅の地下ホームです。しかし、この駅はJR東西線に属する別の駅です。

実質的には大阪駅の一部であるため、運賃計算や乗車券の取り扱いに特例が見られます。例えば、北新地駅から西宮名塩駅(兵庫県西宮市)までの普通運賃を見てみましょう。

  • 北新地駅・西宮名塩駅間:営業キロ30.8km(本来は580円)
  • 大阪駅・西宮名塩駅間:営業キロ29.6km 普通運賃490円

北新地駅からJR東西線加島駅(大阪市淀川区)を通過し、尼崎駅以遠の各駅を発着する場合の普通運賃は、大阪駅発着(塚本駅経由)の運賃と同額に調整されます。

北新地駅・西宮名塩駅間の普通運賃も、本来であれば580円であるところ、特例によって490円に調整されるわけです。運賃計算方において、北新地駅は大阪駅の地下ホームのような扱いがされていると言えるでしょう。

大阪駅と新大阪駅は、機能的には同じ駅であるものの、物理的には異なる(設定されたキロ程が異なる)駅です。距離が違うのに運賃が同額なのは、一体どのようなわけでしょうか。

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大阪駅・新大阪駅・北新地駅発着の運賃が調整される背景

姫路駅駅舎

大阪駅もしくは新大阪駅発着かつ姫路駅以遠に向かう場合の特例が実務にどのように影響するかを理解することは、なかなか困難です。北新地駅発着で加島駅を経由し、尼崎駅以遠に向かう場合の運賃計算の特例も、同様です。

しかし、線区の成り立ちや輸送の実態をしっかりと押さえれば、これらの特例がなぜ必要であるかを容易に理解できるでしょう。

大阪駅・新大阪駅から西に向かう場合

大阪駅を発着し、山陽新幹線を利用して西に向かう場合、基本的には新大阪駅で乗り継ぎます。したがって、大阪駅と新大阪駅は、実質的に同じ駅として機能しているわけです。

前述した通り、山陽新幹線と在来線(東海道本線・山陽本線)は並行しており、一部の区間を除いて新在同線として扱われます。新在同線である以上、どちらを経由しても営業キロが同じでなければおかしなことになります。

厄介なのが、大阪駅と新大阪駅は機能的には同じ駅でありながら、あくまでも別の駅として異なる営業キロが設定されていることです。西に向かう場合、新大阪駅を発着する場合は大阪駅を発着する場合よりも常に3.8km長いことになります。

同じ駅として機能しているにもかかわらず、どちらの駅を発着するかによって運賃額に差が生じるのは、合理的だとは言えません。

また、大阪駅を発着する場合、新大阪駅で山陽新幹線に乗り継ぐと、厳密には大阪駅・新大阪駅間を復乗(折り返し乗車)することになります。何らかの特例がないと、運賃額が異なる以上の不都合が生じるわけです。

大阪駅・新大阪駅にかかるこのような不具合を解決するため、西に向かう場合の運賃計算に限り大阪駅と新大阪駅を同一の駅として扱う特例(旅客営業規則第88条)が設けられたといえば、合点がいくでしょう。

新幹線と在来線を同じ線路として扱う原則と、その例外である「新在別線」については、以下の記事をぜひご一読ください。

「新在別線」扱いのルールを活かして一筆書きの経路を編み出す手法!並行する新幹線と在来線の原則と例外を知って自在に経路組み
東海道本線や山陽本線、東北本線といった在来線に並行して走る新幹線には在来線を補強する役割があり、同じ線路として扱われることになっています。新幹線経由の普通乗車券を持っていれば在来線を利用することが可能であり、逆も然りです。ところで、新幹線の…

大阪駅・北新地駅から尼崎駅までの営業キロの差

大阪駅の一部として機能するJR東西線北新地駅から西方向を見ると、JR東西線北新地駅・尼崎駅間(8.9km)と東海道本線大阪駅・尼崎駅間(7.7km)が並行しています。

実質的に同区間であるにもかかわらず、両区間の営業キロには1.2kmの差があります。北新地駅と大阪駅のどちらを発着するかによって運賃額に差が生じるのは、決して合理的ではありません。

この問題を解消するため、北新地駅を発着し、加島駅を経由して尼崎駅以遠の各駅を着駅とする場合に運賃額を調整するための特例が必要なわけです。

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大阪駅・新大阪駅・北新地駅発着の特例に関する条文(規則第88条・第89条)

姫路駅コンコース

大阪駅・新大阪駅を発着し、姫路駅以遠の各駅を着駅とする場合に大阪駅と新大阪駅を同一の駅として扱う特例は、JR各社の運送約款である旅客営業規則第88条に定められています。

第88条(新大阪駅又は大阪駅発又は着となる普通旅客運賃の計算方)
新大阪駅又は大阪駅と姫路駅以遠(手柄山平和公園、京口又は播磨高岡方面)の各駅との相互間の普通旅客運賃は、姫路駅を経由する場合に限り、大阪駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロによつて計算する。

条文は運賃計算方を強制しており、新大阪駅発着であっても大阪駅の営業キロ(運賃計算キロ)を用いて運賃計算を行う形です。見方を変えれば、運賃計算上大阪駅と新大阪駅を同一の駅として扱うと捉えることが可能でしょう。

北新地駅を発着し、加島駅を経由して尼崎駅以遠に向かう場合の運賃計算上の特例は、旅客営業規則第89条が根拠です。

第89条(北新地駅発又は着となる普通旅客運賃の計算方)
北新地駅と尼崎以遠(立花又は塚口方面)の各駅との相互間の普通旅客運賃は、加島駅を経由する場合に限り、大阪駅を起点又は終点とした営業キロ又は運賃計算キロ(いずれも塚本駅を経由するものとする。)によつて計算する。ただし、第86条の規定により普通旅客運賃を計算する場合を除く。

第89条では、これらの特例を理解する上で避けて通れない特定都区市内制度(規則第86条)について言及されており、制度が適用となる場合を除くと丁寧に記載されています。

両条文を読み比べる上で見逃せないのが、普通乗車券の有効期間を定めた規則第154条第2項です。同項では、第69条から第71条および第86条から第88条の規定によって運賃を計算する乗車券について、その計算に用いた営業キロで有効期間を算出すると定められています。

ここに第88条は列挙されている一方、第89条は列挙されていません。そのため、第88条が適用される乗車券は有効期間・途中下車の可否・割引適用の判定まで大阪駅基準となるのに対し、第89条が適用される乗車券は運賃のみが調整され、効力の判定は北新地駅からの実際の乗車経路で行います。この違いは、後述する香呂駅(兵庫県姫路市)の事例で明確に表れます。

第88条と第89条に関してはいずれも実際の運用が複雑であるにもかかわらず、条文の書き方が非常に簡素です。運賃計算方や取扱方に関する具体的な説明が欠けているため、条文を類推解釈しなければならず、より難解になっていると言えるでしょう。

規則第88条および第89条における特例は、いずれも普通乗車券に限って適用されます。定期乗車券についてはこれらの特例が適用されないため、注意してください。

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規則第88条・第89条特例と特定都区市内制度との関係

新大阪駅駅名標

当記事で解説している特例を理解するには、特定都区市内制度について押さえていることが前提になります。

特定都区市内制度が不適用の場合に限って活きる特例

大阪駅・新大阪駅・北新地駅は、特定都区市内制度(規則第86条)においていずれも大阪市内の駅に属します。大阪駅からの営業キロが200kmを超える場合、普通乗車券には「大阪市内」と記載されます。つまり、これらの3駅は同一の駅として扱われるわけです。

これが何を意味しているかというと、特定都区市内制度は、第88条における「大阪・新大阪」の特例ならびに第89条における北新地駅にかかる運賃計算の特例に優先適用されるということです。

特定都区市内制度が適用されれば、そもそも大阪駅と新大阪駅は同一として扱われ、北新地駅・尼崎駅間と大阪駅・尼崎駅間の営業キロの差を考慮する必要もありません。

したがって、両特例は、特定都区市内制度が適用されないケース、つまり大阪駅からの営業キロが200kmを超えない場合に限って適用されます。適用範囲が非常に限定的であるためにあまり知られておらず、より一層難しく感じるのです。

規則第88条において大阪駅と新大阪駅を同一駅として扱うのは特定都区市内制度と類似しており、いわば「ミニ特定都区市内」とも言えるでしょう。

特定都区市内制度の基本については、以下の記事もあわせてご一読ください。

JRきっぷ「特定都区市内制度」の基本【横浜市内に関する制度変更対応版】制度のクセを応用して賢く節約するワザを徹底解説!
新幹線に乗車するためのきっぷを手に取った際、新幹線の停車駅名がそのまま表示されていなかった経験をお持ちではないでしょうか。例えば、東京駅から博多駅ゆきの普通乗車券を購入した場合、発駅には東京駅ではなく「東京都区内」、着駅には博多駅ではなく「…

大阪市内の出口駅が加島駅である場合の運賃逆転現象の怪

特定都区市内制度が適用される200kmのボーダーラインをめぐり、興味深いことが発生します。

大阪駅発着では営業キロ200kmを超えないものの、北新地駅発着では営業キロが200kmを超え、特定都区市内制度が適用される(大阪市内発着となる)場合が生じます。

第86条の適否判定では、中心駅(大阪駅)から大阪市内の最短経路で出口駅まで数え、出口駅から先は実際の乗車経路で数えます。

加島駅を出口駅とする大阪市内の経路選択方

JR東西線加島駅を経由して西に向かう場合、大阪駅から加島駅へは線路が直接つながっていないため、判定に用いる経路は[大阪駅・大阪環状線・京橋駅・JR東西線・尼崎駅]となり、出口駅は加島駅です。大阪駅・尼崎駅間は塚本駅経由であれば7.7kmですが、京橋駅経由では16.7kmと9.0km長くなります。

これがねじれとなり、大阪駅起点(塚本駅経由)の営業キロが191.0kmを超える駅では、加島駅が出口駅となる北新地駅発着が大阪市内発着となります。その結果、駅によっては大阪駅発着より運賃が高くなる逆転現象が見られます。

北新地駅を出発して加島駅で大阪市内を出て、福知山線経由で山陰本線佐津駅(兵庫県香美町)に向かう場合、大阪駅から数えた営業キロは208.1kmとなり、特定都区市内制度が適用されます。運賃額は3,740円・有効期間は3日間です。この場合、第89条特例は第86条に劣後するため、適用されません。

一方、大阪駅から塚本駅(大阪市淀川区)を経て同駅に向かう場合の営業キロは199.1kmであり、第86条は適用されません。運賃額は3,410円・有効期間は2日間です。

このように大阪市内発着となる駅は29駅あり、そのうち佐津駅のように運賃が330円高くなるのは9駅です。残る駅は運賃が同額であるものの、有効期間や乗車券に表示される発着駅が異なります。

営業キロ200km前後のボーダーラインにおいて、第86条の適否によって運賃額や有効期間が変わることが理解していただけたのではないでしょうか。

規則第88条特例の適用範囲

姫路駅駅名標

旅客営業規則第88条が適用される区間において、新大阪駅発着であっても大阪駅発着と同じ営業キロで運賃計算を行う特例は、以下の条件で適用されます。

  • 大阪駅もしくは新大阪駅と、姫路駅以遠(姫路駅を含む)の各駅との相互間で、姫路駅を経由する場合
  • 特定都区市内制度が適用されない場合

大阪駅起点の営業キロが、大阪駅・姫路駅間の営業キロ87.9km以上200.0km以下である場合に限定されることを押さえましょう。

第88条特例が適用される場合、普通乗車券上の発着駅は「大阪・新大阪」となることから、同一駅として扱われることが分かります。そのため、運賃額の調整のみならず、有効期間・途中下車の可否・割引適用の判定すべてが大阪駅基準です。

これらの条件を満たす駅は、経路の選び方によって対象となるものを含めて、当記事執筆時点で148駅です(通常の最短経路では姫路駅を含めて125駅)。一つの特例の対象がこれだけに限られるため、特例としてはマイナーな部類に入ります。

適用区間の一覧をPDFでご提供しています。ダウンロードが可能なので、ぜひ参照してください。

(ダウンロードボタン)

規則第89条特例の適用範囲

福知山線普通列車大阪駅にて

旅客営業規則第89条が適用される区間において、北新地駅発着(加島駅経由)の普通運賃を大阪駅発着として営業キロを調整する特例は、以下の条件で適用されます。

  • 北新地駅を発着し、かつ加島駅を経由して尼崎駅以遠に向かう場合
  • 特定都区市内制度が適用されない場合

前述した通り、加島駅を経由する場合は、大阪駅起点(塚本駅経由)の営業キロが191.0kmを超えると特定都区市内制度の対象となります。

第89条特例に関しては、営業キロ(運賃計算キロ)の調整のみであることを押さえましょう。普通乗車券の有効期間・途中下車の可否・割引適用については、北新地駅起点で行うことに留意してください。

これらの条件を満たし、実際に特例が働くのは、当記事執筆時点で242駅です(通常の最短経路では209駅)。第88条特例と同じくマイナーな特例ですが、適用範囲は第88条特例よりも広いです。

こちらもPDFをダウンロードできるので、ぜひ参照してください。一覧には、大阪市内発着となって特例の対象外となる駅も、備考付きで掲載しています。

(ダウンロードボタン)

規則第88条および第89条特例は、営業キロ100km超・200km超のボーダーラインの影響を大きく受けます。これから、実例を見ていきましょう!

播但線香呂駅が象徴的な事例

姫路城

ここでは、大阪駅からの営業キロが100kmのボーダーライン上に位置する好例として、播但線香呂駅(兵庫県姫路市)をご紹介したいと思います。

香呂駅は大阪駅からの営業キロが姫路駅経由で99.1kmであり、規則第88条の適用対象です。また、北新地駅からの営業キロは100.3kmであり、規則第89条が適用されます。

ここで、規則第88条によって大阪駅と同一の駅とみなされる新大阪駅の営業キロを、大阪駅と比較してみましょう。また、規則第89条の適用を受ける北新地駅についても同時に比較したいと思います。

区間実乗キロ運賃計算キロ運賃額判定キロ有効期間途中下車割引適用乗車券表示
大阪駅・香呂駅99.1km100.2km1,980円99.1km1日間不可不可大阪・新大阪
新大阪駅・香呂駅102.9km100.2km1,980円99.1km1日間不可不可大阪・新大阪
北新地駅・香呂駅100.3km100.2km1,980円100.3km2日間可可北新地

営業キロが100kmに満たない大阪駅発着であっても運賃計算キロが100kmを超えているのは、播但線が地方交通線であるためです。姫路駅・香呂駅間の営業キロ11.2kmを換算キロ12.3kmに置き換えて運賃を計算するため、運賃計算キロは100.2kmとなります。

いずれの駅を発着した場合でも、普通運賃額は1,980円と同額です。しかし、乗車券の有効期間や途中下車の可否、割引適用の可否に差が生じます。

このうち、新大阪駅発着に関しては、実乗キロが100kmを超えるにもかかわらず、大阪駅と同一の駅とみなされます。実乗キロベースでは本来途中下車が可能なはずですが、それが不可能であり、各種割引も適用されません。

しかも、新大阪駅発着の運賃は、特例がなかったとしても1,980円で変わりません。運賃額は変わらないにもかかわらず、大阪駅と同一の駅とみなされることで効力面だけが不利になるわけで、いわば救済規定の副作用と言えるでしょう。

一方、北新地駅発着(加島駅経由)にかかる規則第89条の適用範囲は運賃計算上の営業キロ調整のみであるため、効力に影響を及ぼしません。実乗キロが100kmを超えているため、有効期間が2日間(途中下車が可能)となり、各種割引も適用されます。

北新地駅発着に関しては、運賃額が調整されるにもかかわらず、効力面には影響が及ばない好例です。

規則第88条・第89条の特例が存在することによって微妙に影響が及ぶことが、この例を通じて理解していただけたのではないでしょうか。

赤穂線経由のきっぷによって理解が一層困難に~営業キロ200km超をめぐる怪~

新大阪駅コンコース

次に、大阪駅からの営業キロが200km超のボーダーラインにかかる区間を見ていきましょう。

山陽本線・山陽新幹線新倉敷駅(岡山県倉敷市)は、大阪駅からの営業キロが最短経路で198.5kmです(播州赤穂駅経由:兵庫県赤穂市)。一方、山陽本線上郡駅(兵庫県上郡町)経由では、大阪駅からの営業キロは201.7kmと、200kmをわずかに超えます。

経由線区によって200km超のボーダーラインにかかり、特定都区市内制度(規則第86条)の適用有無にかかわる微妙な区間です。

経由営業キロ運賃計算キロ運賃額判定キロ発着駅名有効期間適用条文
赤穂線198.5km204.2km3,740円198.5km大阪・新大阪2日間第88条
山陽本線201.7km201.7km3,740円201.7km大阪市内3日間第86条

運賃額そのものは結果的に同額であっても、経由線区の違いによって適用される特例が異なり、乗車券の効力に大きな差が生じます。

赤穂線経由では営業キロが200kmを超えないため、特定都区市内制度が適用されません。そのため、次順位で規則第88条特例が適用され、普通乗車券に表示される発着駅は「大阪・新大阪」で有効期間は2日間です。

一方、山陽本線上郡駅経由では営業キロが200kmをわずかに超えるため、特定都区市内制度が適用になります。発着駅は「大阪市内」となり、有効期間は3日間です。

同じ運賃額であっても乗車できる範囲が前者とは異なる上、大阪市内の各駅で途中下車可能か否かについても差が付くことに注意を払いたいです。

このような現象が生じる要因は、赤穂線が地方交通線であることです。特定都区市内制度の200km判定は営業キロで行う一方、運賃は運賃計算キロで求めます。そのため、赤穂線経由とすることで運賃計算キロが逆転し、大阪駅からの区間によっては運賃額が影響を受けます。

このように、大阪駅方面から東岡山駅(岡山市中区)以遠に向かう場合、普通乗車券の経路を赤穂線経由とすると、区間によってはユーザー不利な結果が生じます。

山陽本線と赤穂線に関しては、規則第157条第30号の選択乗車によって他方の経路を選択できるため、赤穂線経由で普通乗車券を発売しないのが妥当でしょう。実際にネット予約サービス上で検索したところ、赤穂線経由の経路にはブロックがかかっていることを確認しました。

赤穂線を含め、山陽本線の支線をめぐる経路特定区間や選択乗車の特例については、以下の記事でも取り上げています。

岩徳線・山陽本線をめぐる運賃・料金計算の怪を探る!規則第69条の経路特定区間特例がもたらす影響~1駅先の運賃が安いわけ~
JR線の運賃は、実際に乗車する経路の距離によって計算するのが原則で、通常は遠くの駅に行くほど運賃が高くなります。したがって、手前の駅までの運賃が先の駅への運賃よりも高くなるということは、通常はあり得ません。ところが、全国のJR線の中には、手…

まとめ

山陽本線普通列車姫路駅にて

大阪駅あるいは新大阪駅を発着し、姫路駅以遠の各駅に向かう場合に発売される普通乗車券を見てみると、通常の様式と異なることが分かります。原則的に1つの駅名が表示されているところ、2つの駅名が「大阪・新大阪」として併記されているのです。

これは、大阪駅と新大阪駅が同じ駅とみなされ、どちらの駅を利用しても運賃額やきっぷ使用上の条件(効力)が同一であることを示しています(規則第88条)。典型的な区間として大阪駅/新大阪駅・岡山駅間を挙げることができ、在来線と新幹線利用にかかわらず運賃が同額に調整されている形です。

また、大阪駅の地下ホーム的な存在とみられているJR東西線北新地駅と大阪駅の関係も類似しています。北新地駅から加島駅を経由し、尼崎駅以遠の各駅に向かう際に発売される普通乗車券について、運賃に限って調整の対象です(規則第89条)。

大阪駅発着(塚本駅経由)の運賃計算キロを用いることとされているため、結果的に運賃額が大阪駅発着と同一に調整されます。

規則第88条および第89条については、特定都区市内制度(規則第86条)の適用に劣後し、大阪駅からの営業キロが200kmを超えない場合に限って適用されます。適用対象が限られるため、数ある特例の中でもマイナーな部類に入るでしょう。

大阪駅からの営業キロに左右される特例であるため、営業キロ100km超および200km超のボーダーラインの影響を顕著に受けます。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則

当記事の改訂履歴

2026年10月25日:当サイト初稿

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