JR東日本・北海道管内の新幹線および北陸新幹線に、会社のオフィスに見立てた車両があることをご存じでしょうか。
平日に限り、仕事や勉強の作業部屋として活用できるよう「TRAIN DESK(トレイン デスク)」という車両が設定されています。一般の車両と区分することによって静粛な空間が生じ、作業に集中できるというわけです。
このサービスは指定席として提供されているため、あらかじめ専用の指定券を確保する必要があります。業務出張等で新幹線を利用する際、この車両の詳細をあらかじめ知っておくと、移動時間を有効活用できます。

専用の机やテーブルは設置されておらず、電源コンセントやWiFiも一般車両と同様です。ビジネスパーソン優先ながらも「専用」ではないため、静粛な環境で休息を取りたい場合にも活用できます。
この記事では、JR東日本・北海道管内の新幹線および北陸新幹線に設定された「TRAIN DESK」に関して、きっぷの購入条件や注意点をご説明します。あわせて、この車両で許容されることや控えるべきことを考えていきたいと思います。
当記事が、公式情報にとらわれない「TRAIN DESK」の活用法を考える上でのヒントとなれば幸いです。
- TRAIN DESKの設定趣旨を理解していればビジネスパーソンに限らず利用できること
- 「こまち・つばさ・つるぎ」号にはTRAIN DESKが設定されていないこと
- TRAIN DESK専用指定券の購入が必要なものの一般車両と料金に差がないこと
「TRAIN DESK」の特色を知って設定趣旨を理解

新幹線の座席をオフィスに見立て、移動時間にその座席で仕事や作業に集中できるようゾーニングされたのが「TRAIN DESK(トレイン デスク)」です。
「TRAIN DESK」の特色・沿革
ノートPCの打鍵音を出したり、Web会議で発声したりすることは、一般の車両では難しいです。そのようなことを座席にいながら行えるようにし、移動時間を活用できるよう、作業専用のゾーンとしてこの車両が設定されました。
「TRAIN DESK」は一般の座席と区分された専用の区画ですが、このサービスを利用するための特別な加算料金はありません。指定席を取る際、単に「TRAIN DESK」を選択する形です。
2021年に設定された「新幹線オフィス車両」が、「TRAIN DESK」の前身です。2023年3月ダイヤ改正後の平日から、サービスの名称が「TRAIN DESK」と変わりました。
新幹線オフィスとしての実証実験が2021年2月に二度にわたり行われた後、同年11月から「新幹線オフィス車両」としてサービスの運用が始まりました。2020年に新幹線の利用が減少したことを受け、座席の有効活用を図る目的で運用が開始されました。
設備面では一般車両と変わらない
「TRAIN DESK」については、移動中の仮想オフィスとして利用することが想定されています。ただし、専用の個室ブースやパーティション、テーブルが完備されているわけではありません。あくまでも、普通車指定席として利用する形です(電源コンセントとWiFiは「TRAIN DESK」であるかどうかに関係なく利用できます)。
設備面では一般の車両と変わらないものの、運用面では移動時間に仕事や作業に集中したいユーザーを一か所に集めた形です。ゾーニングという点では、いわゆる最繁忙期に設定される「子連れファミリー車両」と考え方が似ています。ただし、「TRAIN DESK」は「子連れファミリー車両」とは違い、作業に集中したり休息したりするための車両です。
前身の「新幹線オフィス車両」に実際に乗車しましたが、ビジネスパーソンだけが乗車できる「専用」車両という誤解が見受けられます。作業に集中したい人が利用することが前提であるものの、車両の設定趣旨を理解した上であれば誰でも利用できる車両ではないでしょうか。
「TRAIN DESK」の設定条件

「TRAIN DESK」が設定される条件について、ここでみていきましょう。
● 設定曜日
土休日および最繁忙期を除いた平日に「TRAIN DESK」が設定されます(最繁忙期:GW・お盆時期・年末年始)。
注意が必要なのは、飛び石連休の中日の平日など最繁忙期には「TRAIN DESK」ではなく、一般車両として運用される点です。設定日に関してはサービスの公式ページで確認が可能ですが、座席を予約する際の予約の可否でも判断できます。
● 設定号車
- 東北・北海道新幹線(E5系・E2系):7号車
- 上越・北陸新幹線(E7系・W7系):9号車
1列車当たり1両だけの設定であるため、提供席数が少ないことを覚えておきたいです。「新幹線オフィス車両」時代には、この区画は8号車に統一されていました。しかし、「TRAIN DESK」においては、方面によって号車が別々になっています。
● 普通車指定席として設定
「TRAIN DESK」は、普通車指定席です。原則的には座席指定された新幹線特急券が必要ですが、一部区間で特例があります。
方面・列車による「TRAIN DESK」の設定状況

JR東日本・北海道管内の新幹線および北陸新幹線で利用できる「TRAIN DESK」ですが、列車によって設定状況が異なります。その状況を、ここで見ていきましょう。
各方面・各列車の設定状況を、一覧表としてまとめました。
線区名 | 列車名 | 運行区間 | 設定状況 | 備考 |
東北・北海道 | はやぶさ | 東京駅・新函館北斗駅 | 7号車 | 盛岡駅以北の区間で特例あり |
東北・北海道 | はやて | 東京駅・新函館北斗駅 | 7号車 | 盛岡駅以北の区間で特例あり |
東北 | やまびこ | 東京駅・盛岡駅 | 7号車 | 仙台駅・盛岡駅間で特例あり |
東北 | なすの | 東京駅・郡山駅 | 7号車 | 全席自由席の列車は設定なし |
秋田 | こまち | 東京駅・秋田駅 | 設定なし | |
山形 | つばさ | 東京駅・新庄駅 | 設定なし | |
上越 | とき | 東京駅・新潟駅 | 9号車 | |
上越 | たにがわ | 東京駅・越後湯沢駅 | 9号車 | 全席自由席の列車は設定なし |
北陸 | かがやき | 東京駅・敦賀駅 | 9号車 | |
北陸 | はくたか | 東京駅・敦賀駅 | 9号車 | |
北陸 | あさま | 東京駅・長野駅 | 9号車 | |
北陸 | つるぎ | 富山駅・敦賀駅 | 設定なし |
条件が一律に設定されているわけではなく、状況により特例があることが分かります。
東北・北海道新幹線
東北・北海道新幹線では、指定席が設定されたすべての列車で「TRAIN DESK」を利用できます。全車自由席の列車には、「TRAIN DESK」の設定はありません。
「はやぶさ」「はやて」号
「はやぶさ」号および「はやて」号は、全車指定席です。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「7号車の指定席」を取ります。
● 盛岡駅以北の区間における特例
盛岡駅以北の区間のみ利用する場合、新幹線特定特急券もしくは新幹線定期券を持っていれば、座席指定なしで空席を利用できます。
● 仙台駅・盛岡駅間における特例
仙台駅・盛岡駅間で途中駅に停車するタイプの列車においては、新幹線自由席特急券か新幹線定期券を持っていれば、座席指定なしで空席を利用できます。
これらの特例を使う場合、座席指定ができないので注意してください。当該座席の指定券を持った人には席を譲りましょう。
新幹線特定特急券に関する詳細については、以下の記事をぜひご一読ください。
「やまびこ」号
「やまびこ」号には指定席と自由席が設定されていますが、「TRAIN DESK」は指定席扱いです。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「7号車の指定席」を取ります。
仙台駅・盛岡駅間における必要なきっぷの特例については、前述の通りです。
「なすの」号
「なすの」号においては、指定席が設定される場合と、全車自由席の場合があります。指定席が設定される列車に限り「TRAIN DESK」を利用できます。
● 指定席が設定された列車
「なすの」号の「TRAIN DESK」は、指定席扱いです。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「7号車の指定席」を取ります。
● 全車自由席の列車
「TRAIN DESK」の設定はありません(7号車はあくまでも一般の普通車自由席として運用されます)。
秋田・山形新幹線
秋田新幹線「こまち」号および山形新幹線「つばさ」号に関しては「TRAIN DESK」の設定はありません。
上越新幹線
上越新幹線では、指定席が設定されたすべての列車で「TRAIN DESK」を利用できます。全車自由席の列車には、設定がありません。
「とき」号
「とき」号には指定席と自由席が設定されていますが、「TRAIN DESK」は指定席扱いです。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「9号車の指定席」を取ります。
「たにがわ」号
「たにがわ」号においては、指定席が設定される場合と、全車自由席の場合があります。指定席が設定される列車に限り「TRAIN DESK」を利用できます。
● 指定席が設定された列車
「たにがわ」号の「TRAIN DESK」は、指定席扱いです。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「9号車の指定席」を取ります。
● 全車自由席の列車
「TRAIN DESK」の設定はありません(9号車はあくまでも一般の普通車自由席として運用されます)。
北陸新幹線
北陸新幹線の全区間では、「つるぎ」号を除くすべての列車で「TRAIN DESK」を利用できます。
「かがやき」号
「かがやき」号は、全車指定席です。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「9号車の指定席」を取ります。
東北・北海道新幹線「はやぶさ」号および「はやて」号のような、特定特急券による特例は特にありません。
「はくたか」「あさま」号
「はくたか」号および「あさま」号には指定席と自由席が設定されていますが、「TRAIN DESK」は指定席扱いです。きっぷを購入する際「TRAIN DESK」として設定された「9号車の指定席」を取ります。
「つるぎ」号
富山駅・敦賀駅間で運行されている「つるぎ」号に関しては「TRAIN DESK」の設定はありません。
「TRAIN DESK」の利用料金・予約方法

ここでは、「TRAIN DESK」を利用するのに特別なきっぷが必要なのかどうか、料金面やきっぷの購入に関する詳細をご説明します。
料金
「TRAIN DESK」を利用するには、7号車もしくは9号車の新幹線特急券および普通乗車券が必要です(特例適用区間では新幹線定期券でも利用可能)。
新幹線特急料金は、一般車両と同額です。「TRAIN DESK利用券」などの追加料金は発生しないので、安心してください。また、紙のきっぷであるか「新幹線eチケット」であるかによって料金に差が出ることはありません。

ネット専用割引「新幹線eチケット(トクだ値)」や「大人の休日俱楽部パス」、「大人の休日俱楽部会員限定 北陸フリーきっぷ」といった特別企画乗車券を利用する場合でも、このサービスを利用できます。
予約の方法・きっぷの様式
「TRAIN DESK」の座席を取るには、ネット予約サービス「えきねっと」か駅の指定席券売機・窓口を利用します(北陸新幹線に関しては「e5489」を利用可能)。
ここでご説明するのは、「なすの」号に設定された「TRAIN DESK」を利用するためのきっぷを購入した際に実際に操作した手順です。
ネット予約サービス「えきねっと」
「新幹線eチケット」を購入して「TRAIN DESK」を利用する場合、「えきねっと」を利用することになります。

座席の種類を選択する際、普通車指定席には一般の指定席と「TRAIN DESK」が表示されます。必ず後者を選択し、先に進みます。

「TRAIN DESK」を選択すると、利用上の注意事項が表示されます。了解の上、先に進みます。

「TRAIN DESK」の号車だけ選択できます(本例の「なすの」号は7号車)。
指定席券売機
指定席券売機でも、列車の設備を選択する際に「TRAIN DESK」を指定できます。

乗車したい列車の普通車「指定席」を選択します。

その次の画面で、一般の指定席か「TRAIN DESK」か選択できます。後者を選択すると注意事項が表示されるので、了解して先に進みます。
きっぷ(新幹線eチケット・新幹線特急券)の様式
「TRAIN DESK」であるかどうかはきっぷ上にさりげなく表示されているため、一見して分かりにくいです。以下の方法で見分けます。
新幹線eチケット
ネット予約「えきねっと」で予約すると、チケットレスで乗車できます。紙のきっぷがないため、予約確認メールやスクリーンショットを保存しておきましょう。

当該画面には、「TRAIN DESK」の表示があります。
紙のきっぷ(新幹線特急券)
「えきねっと」で紙のきっぷを指定した場合、駅できっぷを購入する場合は、紙のきっぷを利用します。

席番の右側に小さく「T」と表示され、「TRAIN DESK」利用だと分かります。

ここから、公式サイトに記載されていない利用の在り方について考えていきたいと思います。余計なお世話だと思わずに、お付き合いいただければ幸いです。
「TRAIN DESK」で許容されること・控えるべきこと

基本的に、誰でも利用できる「TRAIN DESK」。仕事(リモートワーク)や勉強の作業環境を優先的に作るためのゾーンです。そのため、一般車両でのマナー・常識が通じない点があることを知っておく必要があります。
公式ページの記載を基にして、「TRAIN DESK」で許容されること、および控えるべきことを考えてみました(あくまでも筆者の主観であることをお断りします)。
許容されるべきこと
仕事(リモートワーク)や勉強に集中できる環境を確保するという点が、許容されることを考える上でのポイントです。オフィスではPCの打鍵音や通話の声がするため、それらは許容されるべきではないでしょうか。
スマートフォンでの通話
一般車両では車内で通話ができませんが、「TRAIN DESK」では仕事しやすいよう通話の配慮がされています。座席にいながらのリモート会議、電話での声出し通話が想定されています。
ただし、必要以上の大声は出さないよう、配慮が必要ではないでしょうか。
ノートPCの打鍵音
PCで仕事やリモート会議を行うことが想定されています。キーボードの打鍵音が苦手な人は、自分で耳栓を用意するか、一般車両に移動したほうが良いでしょう。
疲れた時の休息
通話の際の声やキーボードの打鍵音を許容できる限り、この車両で休息をとることも許容されるべきです。小さな子供の泣き声や大声での談笑がない環境は、公共交通機関にあっては貴重です。
「TRAIN DESK」にて常に作業していなければならないわけではなく、筆者も休息のために静粛な環境を活用しています。
控えるべきこと
実際のオフィスでは、業務外の私語や歓談は一般的ではありません。「TRAIN DESK」において、ファミリーやグループ客が歓談して仕事や作業の邪魔にならないように、以下のような制限が意図されているのではないかと考えます。
スマートフォン・PCのスピーカー機能
通話での声出しは許容されていますが、スピーカーはOFFにするよう要請されています。
同乗者同士での歓談
通話がOKなのに、歓談がNGというのは一見不思議ですが、歓談の声が仕事や作業に集中するための妨げになるというのが設定の趣旨です。作業に集中するための静粛性が求められるゾーンであることを理解する必要があります。
したがって、グループやファミリーで歓談を予定している場合は、一般車両の方が適しているでしょう。
過度の飲酒
仕事が終わってから乗車する時に、軽く一杯やりながら休息することが想定されていると推察します。
ただし、実際のオフィスでは仕事中飲酒しないのに、車内での飲酒がOKなのは、個人的にはずいぶん寛容な運用かと思います。
席を詰めて座ること
「TRAIN DESK」では、ビジネスユースの利便性を確保したいところです。電源コンセントの数が限られていることもあり、分散して座った方がよいでしょう。
もちろん、列車全体が満席の時は致し方ないことですが、空席がある限りにおいては間隔を空けて座席を予約したいです。
まとめ

仕事(リモートワーク)や勉強といった作業に集中するための環境であることを理解していれば誰でも利用できる「TRAIN DESK」。
実際に乗車すると、スーツを着込み、ノートPCで作業しているビジネスパーソンが多く乗車していました。そんな光景から、ビジネスパーソン専用車両と誤解されている節があるのではないかと思います。
「TRAIN DESK」と銘打っていますが、リモートワークのための特別な設備があるわけではなく、あくまでも運用上の区分です。一人か少人数で乗車することが想定されていると思われます。
作業に集中するための静粛さが必要な車両なので、乗客同士の歓談は控えるべきです。したがって、歓談をするのが一般的なファミリーやグループでの利用には向いていません。
「はやぶさ」号や「はやて」号の一部区間で例外があるものの、「TRAIN DESK」は原則的に普通車指定席の扱いです。「えきねっと」や指定席券売機で「TRAIN DESK」の座席を取る際、一般の普通車指定席ではなく「TRAIN DESK」と表記のある設備を選択するのを忘れないようにしてください。
「TRAIN DESK」を利用する際、追加料金は必要ありません。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● TRAIN DESK(JR東日本)
● JR東日本ニュースリリース「新幹線オフィスの実証実験において快適で効率的なリモートワークを実現するために各企業と連携します」2021.01.26付
● JR東日本ニュースリリース「新幹線オフィス車両、東北・北陸・上越新幹線全方面で実施」2021.10.05付
当記事の改訂履歴
2025年6月05日:当サイト初稿(リニューアル)
2023年3月28日:初稿 再構成
2022年12月02日:前サイト初稿(原文作成)
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