全国津々浦々に延びるJRや私鉄の路線網は、日本国民が誇れる重要な社会基盤です。北は北海道から南は鹿児島県まで1本の線路で結ばれており、新幹線を乗り継げば1日で日本列島を縦断できます。
ところで、JR線をはじめとした日本の多くの鉄道会社においては、乗車する経路を基に運賃計算を行い、運賃や料金を収受してきっぷを発行することが大原則です。
特に、JR線のきっぷはオーダーメイドの側面があり、全国のローカル線を通るきっぷを一定の条件下で自由自在に作れます。その究極の形が、皆さまもご存じの「最長片道きっぷ」です。
最長片道きっぷを含め、乗車区間が長距離に及ぶきっぷの運賃計算に深くかかわっているのは「遠距離逓減制」という仕組みです。乗車する距離が長ければ長いほど、1キロメートル当たりの運賃水準(賃率)が低くなるように設計されています。
新幹線や寝台特急列車で遠くの駅に行くためのきっぷを買うと、運賃がこんなに安くていいのか、と思うかもしれません。遠くの駅に行けば行くほど運賃はグンと高くなるはずなのに、どうしてこのような現象が生じるのでしょうか。

JRきっぷにおける「遠距離逓減制」の効果は、営業キロが600kmを超えれば超えるほど大きくなります。日本列島を縦断する際、途中下車を予定している場合は全区間の普通乗車券を通しで購入すると、分割購入するのと比べて驚くほど安価です!
この記事では、運賃が安くなる理由を知るカギとなる「遠距離逓減制」という運賃制度について、マルスで発券できない多経路の出札補充券を見ながら制度上の裏付けや制度設計を見ていきます。
当記事を通して、鉄道きっぷにおける運賃計算の基礎となる考え方を理解していただければ幸いです。
- JRきっぷにおいて遠距離逓減制が維持されている背景には、国の指針があること
- 途中下車制度を活用すると、遠距離逓減制が適用された長距離きっぷの効果が出ること
- 多くの私鉄においても遠距離逓減制が導入されており、遠距離区間の運賃が割安なこと
マルスでは発行不可能な遠距離きっぷから感じられる遠距離逓減制の良さ

乗車区間の距離が長ければ長いほど1km当たりの賃率が低くなる「遠距離逓減制」の考え方を最大限活かしたのが、一筆書きの経路で後戻りせず進み続ける遠距離きっぷ(普通乗車券)です。
これからご紹介するのは、2016年に購入した当時の普通乗車券の実物と運賃額の内訳です。当時は2区間が連続した「連続乗車券」としての購入が可能でしたが、現在このようなきっぷを購入する場合、各券片を別々の普通乗車券として購入することになります。
JR線のきっぷは、よほどのことがない限り、マルス端末で発行されます。しかし、このきっぷに関しては、マルスで計算できる区間数を超えているために(マルス経路数オーバー)、例外的に手作業(出札補充券)で発行されました。

これが、購入した連続乗車券の全貌です。連続2の券片に関しては本券に経由線区を書ききれないため、経路を記載した別紙が添付されています。
それでは、各券片の運賃計算を詳しく見ていきましょう。

運賃計算の内訳の見方については、あとで詳しくご説明します。ここではざっと読み流し、遠距離逓減制のおかげで運賃がグンと安くなっていることを感じていただければ幸いです。
なお、本例に適用されている消費税率は、購入当時の8%です。
【第1券片(連続1)】

東京都区内→函館駅
運賃計算キロ:880.4km 普通運賃:購入時11,880円 有効期間:6日(連続2との合算で22日)
(普通運賃の内訳)
普通運賃を算出するには、第1地帯から第3地帯までの各賃率に応じた税抜運賃を合算した後に消費税率を乗じ、税込運賃を求めます。乗車区間がJR他社にまたがる場合、加算額(税込)を計上すると、最終的な運賃額を求めることが可能です。
| 運賃帯 | 営業キロ | 賃率 | 金額 | 備考 |
| 第1地帯 | 300.0km | 16.20 | 4,860円 | |
| 第2地帯 | 300.0km | 12.85 | 3,855円 | |
| 第3地帯 | 300.0km | 7.05 | 2,115円 | |
| 税抜運賃 | 10,800円 | |||
| 税込運賃(8%) | 11,660円 | |||
| 加算額 | 220円 | JR北海道加算額分 | ||
| 普通運賃 | 11,880円 |
第3地帯に相当する運賃計算キロは本来280.4kmですが、運賃計算には該当する距離帯の中心となる営業キロ300.0kmを使用します。
【第2券片(連続2)】

函館駅→熊谷駅
運賃計算キロ:2,875.9km 普通運賃:購入時26,790円 有効期間:16日(連続2との合算で22日)
(普通運賃の内訳)
普通運賃の算出方法は、第1券片と同様です。
第3地帯に相当する運賃計算キロは本来2,275.9kmですが、運賃計算には該当する距離帯の中心となる営業キロ2,260.0kmを使用します。
| 運賃帯 | 営業キロ | 賃率 | 金額 | 備考 |
| 第1地帯 | 300.0km | 16.20 | 4,860円 | |
| 第2地帯 | 300.0km | 12.85 | 3,855円 | |
| 第3地帯 | 2,260.0km | 7.05 | 15,933円 | |
| 税抜運賃 | 24,600円 | |||
| 税込運賃(8%) | 26,570円 | |||
| 加算額 | 220円 | JR北海道加算額分 | ||
| 普通運賃 | 26,790円 |
運賃計算キロがそれぞれ600kmを超えるこれらのきっぷにも、遠距離逓減制の効果が現れています。特に、運賃計算キロが2,875.9kmにも及ぶ第2券片の運賃額は、購入時には26,790円でした。後述するように、600kmを超えた部分(第3地帯)にかかる賃率が7.05円と、基本的な賃率16.20円の半分以下です(いずれも基準額の賃率)。
もしも遠距離逓減制がなく、運賃計算キロにかかわらず賃率が均一だとしたら(第1地帯)、運賃額は51,470円(うち加算額220円)にもなります。
このように、遠距離逓減制の効果によって運賃額が半分程度に抑えられているため、日本全国にわたる長距離の移動に鉄道を利用する動機付けになります。
このきっぷから、遠距離逓減制の制度設計がユーザー目線でいかに優れているかをご理解いただけたのではないでしょうか。

それでは、乗車区間の距離が長くなるほど賃率が低くなる背景や、賃率に基づいた運賃計算の考え方について詳しく見ていきましょう!
JRきっぷにおいて遠距離逓減制が続いている背景

JRきっぷの遠距離逓減制に関する経緯や背景を考える際、JRの運賃制度が旧国鉄の運賃制度を引き継いでいることを押さえておくと理解が進むでしょう。
1987年に旧国鉄が分割民営化される前は、全国一元の運賃制度が実施されていました。当然ながら、賃率には地域差がなく、一定の距離に対する運賃額は全国一律でした。乗車する距離が長ければ長いほど賃率が低くなる遠距離逓減制は、当時から現在まで継続されています。
旧国鉄の路線網がJR各社に移管された後、運賃制度も国鉄時代のままに継承されました。当初は全国で同一の賃率が適用されていましたが、各線区の経営状況は地域別に差が生じ、その状況を反映するためにJR各社で運賃が改定されました。
JR各社で運賃水準に差が生じたことによって問題になったのが、乗車区間がJR他社にまたがる場合です。
その解決策として、国鉄時代からの全国共通の賃率(基準額)を運賃計算のベースとし、JR各社の賃率との差を加算額によって調整する方法が採用されました。これが「通算加算方式」と呼ばれる運賃計算方であり、現在はJR東日本管内を含めてこの方法が普及しました。
その根底にあるのは、JR各社ごとに運賃計算を打ち切らず、全国にまたがるJR線の全区間の距離をベースにして運賃・料金を計算するという考え方です。それには、全乗車区間の距離に応じて運賃を逓減するという考え方(遠距離逓減制)も含まれています。
これは、2001年に政府(国土交通省)が出した「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」によるものです。「当分の間」というものの、現在までこの指針が脈々と生きています。
この指針によって、乗車区間に基づいた運賃計算の通算や遠距離逓減制といった国鉄時代のような運賃計算方がそのまま続いているのです。
現在ではJR各社間で賃率に差が生じているものの、遠距離逓減制をはじめとした全国一元の運賃制度が維持されているのは、突き詰めれば国の方針によるものと言えるでしょう。

それでは、遠距離逓減制に基づく運賃算出のメカニズムを押さえた上で、それが運賃計算方にどのようにして影響を及ぼしているかをJR各社と私鉄各社に分けて見ていきましょう。
遠距離逓減制に基づく鉄道運賃算出のメカニズム

鉄道運賃の設計としては、均一制運賃と従量制運賃に区分することが可能です。大都市内の電車・路線バスの運賃には均一制運賃が採用されることもありますが、大半の交通機関においては乗車する距離に応じた従量制運賃が導入されていると思われます。
多くの鉄道会社においては後者の従量制運賃がベースであり、各社の運送約款には1キロメートル当たりの運賃単価が定められています。これを「賃率」と言います。
「対キロ制」が採用されている場合、乗車区間の営業キロ(もしくは運賃計算キロ・擬制キロ)に対し、適用される賃率を乗じて運賃を算出します。
賃率の設定状況によっては遠距離の賃率がより低くなることがあり、そのように設計されたのが「遠距離逓減制」というわけです。なお、「遠距離逓減制」という用語は、JRの旅客営業規則には登場しません。
鉄道運賃の算出方法と考え方がよく似ているものに、電力料金があります。プランにもよりますが、電力料金については使用量が増えるほど、単位(kwh)当たりの単価が高くなる仕組みになっています。
鉄道運賃の場合は逆に、乗車する距離が増えるほど単位(キロメートル)当たりの単価が低くなる仕組みです。
JR各社における遠距離逓減制【東京駅・博多駅間の運賃試算】

JR各社の普通運賃に関しても、例によって「対キロ制」が原則です。営業キロが10km以下の運賃に限っては、例外的に「対キロ区間制」が採用されています。
JR線については、線区によって幹線と地方交通線に分けられ、それぞれの賃率が定められています。また、大阪附近の電車特定区間に設定されている賃率は、幹線よりも一段低いです。これらの賃率は、JR各社の旅客営業規則第77条以降に規定されています。
それでは、JR6社のうち本州3社の賃率を見ていきましょう。
それぞれの賃率は、下表の通りです。1kmから10kmまでは税込運賃(円)で、11km以上は1キロメートル当たりの賃率です(電車特定区間については鉄道駅バリアフリー料金込み)。
| 営業キロ | 地帯別 | 電車特定【大阪】 | 幹線【基準額】 | 幹線【東日本】 | 地交線【基準額】 | 地交線【東日本】 |
| 1-3km | *** | 150 | 150 | 160 | 150 | 160 |
| 4-6km | *** | 180 | 190 | 200 | 190 | 200 |
| 7-10km | *** | 200 | 200 | 210 | 210 | 220 |
| 11-300km | 第1地帯 | 15.50 | 16.20 | 16.96 | 17.80 | 18.66 |
| 301-600km | 第2地帯 | 12.30 | 12.85 | 13.45 | 14.10 | 14.80 |
| 601-km | 第3地帯 | *** | 7.05 | 7.05 | 7.70 | 7.70 |
営業キロ1kmから10kmまでは、各区分とも対キロ区間制によってキロ程別に定められています。
営業キロ11km以上は対キロ制で、キロ程に賃率を乗じて運賃を算出します。キロ程によって5km刻み・10km刻み・20km刻み・40km刻みのいずれかが適用されますが、対キロ区間制ではない点に留意しましょう。
具体例として、東海道・山陽新幹線で東京駅から博多駅まで移動する際に新大阪駅でいったん途中下車する場合の運賃計算の過程を見ていきます。新大阪駅で分割購入する場合と全区間を一括購入する場合の運賃計算の結果に注目すると、非常に興味深いです。
この区間を移動することが確定している場合、全区間の普通乗車券をあらかじめ購入し、新大阪駅では途中下車をすることによって1枚のきっぷを利用し続けることが可能です。
当記事では、各運賃帯の営業キロの中央値の取り方や、算出された金額の端数整理の方法に関する説明は割愛します。
【きっぷを分割購入】
● 東京駅(東京都区内)→ 新大阪駅(大阪市内)
営業キロ:552.6km
| 運賃帯 | 営業キロ | 賃率 | 金額 |
| 第1地帯 | 300.0km | 16.20 | 4,860円 |
| 第2地帯 | 250.0km | 12.85 | 3,213円 |
| 第3地帯 | 0.0km | 7.05 | 0円 |
| 税抜運賃 | 8,100円 | ||
| 税込運賃(10%) | 8,910円 | ||
| 加算額 | 0円 | ||
| 普通運賃 | 8,910円 |
● 新大阪駅(大阪市内)→博多駅(福岡市内)
営業キロ:622.3km
| 運賃帯 | 営業キロ | 賃率 | 金額 |
| 第1地帯 | 300.0km | 16.20 | 4,860円 |
| 第2地帯 | 300.0km | 12.85 | 3,855円 |
| 第3地帯 | 20.0km | 7.05 | 141円 |
| 税抜運賃 | 8,900円 | ||
| 税込運賃(10%) | 9,790円 | ||
| 加算額 | 0円 | ||
| 普通運賃 | 9,790円 |
● 合計
普通運賃:18,700円
【きっぷを一括購入】
● 東京駅(東京都区内)→博多駅(福岡市内)
営業キロ:1,174.9km
| 運賃帯 | 営業キロ | 賃率 | 金額 |
| 第1地帯 | 300.0km | 16.20 | 4,860円 |
| 第2地帯 | 300.0km | 12.85 | 3,855円 |
| 第3地帯 | 580.0km | 7.05 | 4,089円 |
| 税抜運賃 | 12,800円 | ||
| 税込運賃(10%) | 14,080円 | ||
| 加算額 | 0円 | ||
| 普通運賃 | 14,080円 |
● 合計
普通運賃:14,080円
以上の結果を見ると、普通乗車券を新大阪駅で分割購入すると、通しで購入するよりもなんと4,620円も高くなるのです。
東京都区内・福岡市内間の普通乗車券には、遠距離逓減制が反映された第3地帯の低賃率が営業キロ580km分に適用されます。さきにご紹介した日本縦断の出札補充券の事例ほど距離は長くないですが、これでも通しで購入するメリットは十分にあります。
それに対して、東京都区内・大阪市内間の普通乗車券および大阪市内・福岡市内間の普通乗車券には、そのようなうまみはありません。
遠距離を移動する際に途中下車を予定している場合、乗車経路をあらかじめ確定し、全乗車区間で1枚の普通乗車券を作りましょう。遠距離になればなるほど旅費の節約につながることは間違いありません。
私鉄各社における遠距離逓減制【東武鉄道の事例】

JR以外の私鉄各社における普通運賃の仕組みは、会社によって様々です。多くの私鉄では対キロ区間制が採用されていますが、中には区間制や均一制を採用している会社も見られます。
対キロ区間制においては、一定の距離帯に応じた運賃額が個別に定められます。例えば、1kmから3kmまでの距離帯の運賃は150円と定められているケースです。乗車する距離に応じて階段状に運賃が変化します。
会社によっては、対キロ区間制と遠距離逓減制を併用しているケースが見られます。近距離帯では運賃が高く設定されていても、長距離帯では低く設定されているような場合です。JRと同様、乗車する距離が長ければ長いほど、キロメートルあたりの単価が低くなります。
ここでは、対キロ区間制が採用された会社のうち、東武鉄道の運賃表を具体的に見てみましょう(下表には、鉄道駅バリアフリー料金が含まれています)。
| 営業キロ | 運賃(円) |
| 1-4km | 160 |
| 5-7km | 180 |
| 8-10km | 210 |
| 11-15km | 270 |
| 16-20km | 330 |
| 21-25km | 380 |
| 26-30km | 430 |
| 31-35km | 490 |
| 36-40km | 540 |
| 41-45km | 610 |
| 46-50km | 670 |
| 51-60km | 750 |
| 61-70km | 830 |
| 71-80km | 920 |
| 81-90km | 1,000 |
| 91-100km | 1,090 |
| 101-120km | 1,230 |
| 121-140km | 1,400 |
| 141-km | 1,590 |
概ね10km刻みで運賃が定められていますが、遠距離では20km刻みになっています。元々運賃水準が低い東武鉄道ですが、特に101km以上の距離帯の運賃水準が低いことが目立ちます。
代表的な区間の運賃を具体的に見ていきましょう。
● 北千住駅 → 春日部駅
営業キロ:28.2km 普通運賃:430円
1kmあたりの単価:15.24円
● 浅草駅 → 鬼怒川温泉駅
営業キロ:140.8km 普通運賃:1,590円
1kmあたりの単価:11.29円
近距離帯の単価が概ね15円に対し、100キロ超えの遠距離帯の単価が概ね11円です。JRの賃率と比較しても距離当たりの単価が低いことがお分かりいただけるでしょう。

遠距離逓減制に基づいた運賃計算の仕組みを一通り理解できたところで、運賃制度における遠距離逓減制の課題や見通しについて考えていきたいと思います。
途中下車制度と一体となって機能する遠距離逓減制

新幹線を乗り継げば、1日で北海道から鹿児島県まで移動できる時代になりました。しかし、日本全国を鉄道で移動するのに、どの駅であっても1日で旅行を終了できるわけではありません。
食事をとったり買い物をするためには、改札口から出場しなければなりませんが、その都度きっぷを回収されては不便です。
JR各社の運賃制度においては、乗車区間によっては1日で旅行を終了することが想定されておらず、途中下車しながら着駅に向けて旅行することを前提に制度設計されています。
普通乗車券の経路を組む際、距離が長ければ長いほど賃率が低くなるというメリットを享受するためには、途中下車制度を活用することが大前提です。
途中下車が可能となるのは最低でも営業キロが100kmを超える場合ですが、その程度の距離では途中下車の必要性はそれほど高くありません。
しかし、営業キロが長くなればなるほど、途中下車をする必要性が生じます。特に、遠距離逓減制が適用される営業キロ600km超の普通乗車券で旅行する場面では、途中下車が欠かせないでしょう。
したがって、JRきっぷにおいて全国のJR駅間の運賃を通算することと遠距離逓減制を維持しようとすれば、途中下車制度をなくすことはできません。
運賃計算上の遠距離逓減制と途中下車制度は、切っても切れない一体的な関係にあります。
途中下車制度の基本については、以下の記事をぜひご一読ください。

遠距離逓減制の見通し

国鉄時代の運賃制度がそのままJR各社に承継されてから、まもなく40年が経ちます。国鉄が分割民営化された1987年とは社会情勢や輸送事情が全く変わっており、運賃制度に関しても時代に即した修正が本来欠かせません。
運賃制度の根幹をなす遠距離逓減制の将来的な見通しは、どうでしょうか。
2001年に出された「新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針」が現在も生きていることを、すでに申し上げました。国の指針が見直されない限り、JR各社が自らの判断で遠距離逓減制や途中下車制度を見直すことはあまり考えられません。
したがって、遠距離逓減制に基づいた賃率設定や運賃制度は、すぐにはなくならないと考えます。
国鉄分割民営化された当時とは状況が変化しており、JR各社をまたいで全国規模で移動する機会は減りました。遠距離逓減制を維持する社会的な要請は薄れてきていると言えるでしょう。
万が一遠距離逓減制が撤廃されるようなことがあれば、運賃制度面で鉄道網が分断されることになり、鉄道で全国を移動する動機付けが薄れてしまいます。
日本国民の財産である全国規模の鉄道ネットワークが失われることは、日本の経済にとって大きな損失に違いありません。遠距離逓減制は、日本の鉄道網が一体的なものであるために欠かせないツールではないでしょうか。
まとめ

JR各社や多くの私鉄の運賃制度においては、乗車区間の距離が長いほど1キロメートル当たりの運賃単価(賃率)が低くなるように設計されており、その考え方を「遠距離逓減制」と呼びます。
JR各社の運送約款である旅客営業規則上には、遠距離逓減制という用語は明記されていませんが、この規則で定められた賃率が運賃に反映されています。以下の区分に基づいて運賃を算出しますが、その中でも第3地帯の賃率が大幅に低いです。
- 営業キロ300km以下の部分:第1地帯
- 営業キロ600km以下の部分:第2地帯
- 営業キロ601km以上の部分:第3地帯
乗車経路の営業キロ(運賃計算キロ・擬制キロ)が601km以上となる場合、距離が長いほど旅費の節約効果が高くなります。遠距離を移動する際に途中駅で下車する予定がある場合、きっぷを途中駅で分割せずに全乗車区間を1枚の普通乗車券にまとめましょう。遠距離逓減制のメリットを享受できるようになるため、旅費を大きく節約できます。
遠距離の経路を1日で旅行完了することはあまり考えられず、遠距離逓減制が適用された遠距離きっぷを使う場合は途中下車が前提になります。したがって、遠距離逓減制と途中下車制度は切っても切り離せない関係であると言えるでしょう。
現状では、国の指針によって遠距離逓減制や通算加算方式が維持されている形です。全国津々浦々にまたがる鉄道ネットワークが一体的なものであるためには、それらの仕組みを堅持するのが望ましいでしょう。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR旅客営業制度のQ&A(自由国民社)2017.5
● 運賃・料金のしくみ(国土交通省)2026.6閲覧
https://www.mlit.go.jp/common/001007700.pdf
● 新会社がその事業を営むに際し当分の間配慮すべき事項に関する指針(国土交通省)
● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
当記事の改訂履歴
2026年6月23日:当サイト第2稿
2023年11月17日:当サイト初稿


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