JRきっぷ「大都市近郊区間」制度の基本【規則第156条・第157条】途中下車と選択乗車の大幅な原則修正がもたらす影響を解説

JR東京駅丸の内地下中央改札口 定番記事

首都圏や近畿圏を走る大都市近郊のJR線には多くの路線が網を張っており、いろいろな経路を取ることができます。一定の範囲内であれば、数ある経路の中から都合の良いものを自由に選択しても差し支えありません。

例えば、JR上野駅からJR新宿駅に向かう際、JR山手線に乗ってもJR中央線に乗っても運賃は同額です。とはいえ、きっぷのルールや運賃計算の方法がどのようになっているのか、普段はあまり意識しないのではないでしょうか。

同じ区間を利用する場合でも、その日の気分によって違う経路を選択できることには、JRきっぷの「大都市近郊区間」制度というルール上の裏付けがあります。

大都市近郊区間制度によって、運賃制度の基本ルールの多くが修正されます。いわゆる「大回り乗車」という手法が生み出される結果となり、早朝から深夜まで列車に乗り続けることや、駅ナカのお店めぐりを楽しむことができるわけです。

大都市近郊区間制度は、ユーザーの乗車行動に大きな影響をもたらします。それにもかかわらず、この制度を明確に定義する条文が存在せず、解釈や運用が難解です。端的には、乗車経路が自由である代わりに、途中下車が制限される制度であることを押さえるとよいでしょう。

この記事では、JR運賃制度の柱である「大都市近郊区間」制度に関する概要や根拠となる条文、乗車上の制限について一通りご説明します。基本的なきっぷのルールがこの制度によっていかに修正され、様々なワザが生み出される背景になっているかをご理解いただければ幸いです。

この記事を読むと分かること
  • 後戻りせず一筆書きの経路を進む限り、初乗り運賃での「大回り乗車」が可能なこと
  • 大都市近郊区間制度に関する独立した条文は存在せず、他の条文に散在していること
  • 最短経路による運賃計算や経路特定区間特例の不適用が明文化されていないこと

「大回り乗車」が正当化される大都市近郊区間制度

グランスタ東京

JRきっぷのルールにあまり詳しくなくても、「大回り乗車」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。

「大回り乗車」とは、一定の範囲内で任意の経路を選択し、遠回りで乗車することを指します。後戻りせずに一筆書きとなる経路を進み、改札口から出場しない限り、初乗り区間のきっぷで何時間も列車に乗り続けることができるわけです。

東京駅から160円区間ゆき普通乗車券

東京駅から初乗り区間のきっぷを買えば、着駅まで最短経路で向かうことはもちろん、少し遠回りして普段とは違った景色を楽しめます。朝から晩までひたすら列車に乗り続けても、「エキュート」や「グランスタ」といった駅ナカをはしごしながら進んでも大丈夫です。

このような乗り方は決して不正乗車ではなく、「大都市近郊区間」という制度によって正当化されています。この制度を応用する「大回り乗車」については、当記事後半でもふれます。

大回り乗車を可能とする「大都市近郊区間」制度とは、一体どのようなものでしょうか?これから、大都市近郊区間に関するルールを探っていきましょう!

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JRきっぷにおける「大都市近郊区間制度」とは

山手線神田駅

最初に、JRきっぷにおける「大都市近郊区間」制度についての概要や対象エリアについて押さえたいと思います。

大都市近郊区間制度の概要~経路の選択が可能な代わり途中下車が制限される~

大都市周辺を走っているJR線の一定の範囲は「大都市近郊区間」として定義されており、全国に5か所指定されています

きっぷに記載されている発駅と着駅が大都市近郊区間内で完結する(大都市近郊区間内相互発着である)場合にこの制度が適用され、きっぷの基本的なルールがこの制度によって上書き修正されます。

大都市近郊区間制度が適用されるのは、普通乗車券(紙のきっぷ)です。もともと乗車経路が特定されている定期乗車券については、この制度の対象になりません。

乗車経路が指定され途中下車が可能な普通乗車券の基本原則

JRきっぷの運賃・料金計算においては、実際に乗車する経路に基づくのが原則です。あらかじめ経路を指定してきっぷを購入し、その経路通りにきっぷを使います(規則第67条)。したがって、特例が適用される場合を除き、他の経路を利用することはできません。

また、JR線の普通乗車券については、乗車経路の営業キロが101km以上であれば途中下車できることが原則になっています(規則第156条第1項)。この原則により、途中駅できっぷを回収されることなく改札口を出場し、同じきっぷで旅行を継続できるわけです。

大都市近郊区間制度でそれらの原則が修正される

ところが、大都市近郊区間制度では、それらの基本原則が修正されます(規則第156条第2号)。大都市近郊区間内相互発着である普通乗車券については、途中下車の取り扱いをしない代わりに、逆戻りせずに一筆書きの経路を進む限り、任意の経路を選択できます(規則第157条第2項:選択乗車)。

つまり、きっぷを購入する段階では、乗車経路をあらかじめ決める必要はありません。選択乗車のルールを守る限り、旅行を開始してから気が赴くままに経路を自由に選択できるわけです。

出場まで乗車区間が確定しない交通系ICカードによるIC乗車に関しては、大都市近郊区間制度ではなく、JR東日本管内であれば「東日本旅客鉄道株式会社 ICカード乗車券取扱規則」によるルールが適用されます。出場時まで乗車経路が確定しない点において、普通乗車券による選択乗車とは性質が根本的に異なりますが、結果的に経路を選択しての乗車が可能です。

大都市近郊区間制度の対象エリア

大都市近郊区間に関しては、全国に5つのエリアが定められています。元々は東京圏・大阪圏および福岡県内の三大都市圏がこの制度の対象エリアでしたが、JR東日本管内のSuicaエリアとして追加された仙台圏と新潟圏が大都市近郊区間に追加されました。

東京近郊区間

JR東日本管内の関東・甲信地区のほぼ全域および福島県浜通りの在来線が、東京近郊区間に含まれています。古くから制定されていたエリアであり、首都圏Suicaエリアと概ね同じ範囲です。東海道・東北・上越・北陸新幹線は、東京近郊区間に含まれません。

東京近郊区間範囲図

東京近郊区間は、長野エリアの松本駅以北にも段階を踏んで拡大されました。まず、2025年3月15日より同区間に追加されたのは、以下の区間です。

  • 篠ノ井線松本駅・篠ノ井駅間
  • 信越本線篠ノ井駅・長野駅間
  • 大糸線松本駅・穂高駅間

さらに、大糸線穂高駅・白馬駅間が、2026年3月14日より同区間に追加されました。

仙台近郊区間

JR東日本管内の南東北地区のほぼ全域が、仙台近郊区間の対象エリアです。東北新幹線および奥羽本線福島駅・新庄駅間の特急列車(山形新幹線)は、仙台近郊区間に含まれません。仙台Suicaエリアの展開と同時に、仙台近郊区間が定められました。

仙台近郊区間範囲図

新潟近郊区間

JR東日本管内の新潟県内の大部分が、新潟近郊区間の対象エリアです。新潟Suicaエリアの展開に合わせて、新潟近郊区間が設けられました。上越新幹線は、新潟近郊区間に含まれません。

新潟近郊区間範囲図

大都市近郊区間の中では最も小さなエリアですが、新潟市周辺が果たして「大都市」と言えるかどうか、怪しいところです。

なお、上越線土樽駅から越後湯沢駅を経て小千谷駅までの区間は、新潟県内にもかかわらず新潟近郊区間に含まれていません。

大阪近郊区間

近畿圏の大半が大阪近郊区間の対象エリアに含まれます。東京近郊区間と並び、古くから制定されていたエリアです。かつては文字通り大阪近郊の駅に限られていましたが、現在はJR西日本京阪神エリアの大部分に拡大されました。

大阪近郊区間範囲図

新幹線区間については大都市近郊区間の対象外になることが一般的ですが、東海道新幹線米原駅・新大阪駅間および山陽新幹線西明石駅・相生駅間については例外的に大阪近郊区間に含まれます。

福岡近郊区間

福岡県内の大半が福岡近郊区間に含まれます。山陽新幹線小倉駅・博多駅間は当該エリアに含まれない一方、在来線扱いの博多南線は当該エリアの対象です。

福岡近郊区間範囲図

福岡近郊区間の範囲はJR発足当時からほぼ変化せず、そのまま維持されています。

普通乗車券の記載事項を見ると、大都市近郊区間制度が適用されているか否かが分かる場合があります。一体、どのようにすれば判別できるのでしょうか。

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大都市近郊区間制度が適用されたきっぷ4選

大都市近郊区間制度が適用された普通乗車券4例を、実際にご覧いただきます。

東京駅から160円区間の金額式普通乗車券

東京駅にある近距離券売機で、東京駅から初乗り運賃区間の普通乗車券(大人160円)を購入しました。

東京駅から160円区間ゆき普通乗車券

近距離券売機で購入できるのは、原則的に営業キロ100km以下の普通乗車券であり、途中下車ができません。券面には「発売当日限り有効」「下車前途無効」が記載されています。

なお、きっぷを発売する駅からの営業キロが100km以下である普通乗車券は、金額式で発売することが可能です。

東京駅から神田駅ゆき普通乗車券

東京駅から初乗り運賃区間に含まれる東京駅・神田駅間の普通乗車券を、東京駅にある指定席券売機で購入しました。

東京駅から神田駅ゆき普通乗車券

きっぷの効力は、前述した金額式普通乗車券とおおむね同じです。ただし、指定席券売機で購入するとマルス券として発券されるため、発売金額が同じであっても着駅が特定されます。

土浦駅から熊谷駅ゆき普通乗車券

大都市近郊区間内相互発着となる経路かつ、発駅から着駅までの最短経路の営業キロが101km以上となる場合の普通乗車券として、土浦駅(茨城県土浦市)から熊谷駅(埼玉県熊谷市)ゆきの普通乗車券を購入しました。

土浦駅から熊谷駅ゆき普通乗車券

営業キロが101km以上であっても、券面に「発売当日限り有効」と「下車前途無効」が記載されている場合、大都市近郊区間相互発着であることが分かります。

乗車経路が大都市近郊区間相互発着である場合、最短経路である「常磐・武蔵野・東北・高崎線」が省略されることなく記載されます。

伊豆高原駅から新横浜駅ゆき普通乗車券

連絡運輸の普通乗車券であっても大都市近郊区間制度の適用を受ける事例としてご紹介するのが、伊豆急行線伊豆高原駅から新横浜駅ゆき在来線経由の普通乗車券です。

伊豆高原駅から新横浜駅ゆき普通乗車券

伊豆急行線は大都市近郊区間に接続する連絡社線とされているため、連絡運輸であっても大都市近郊区間制度の対象となる形です。

そのため、全区間の営業キロが通算101km以上であっても、きっぷの有効区間は当日限りで、途中下車はできません。

それでは、大都市近郊区間制度によって修正される内容を、規則面から探っていきましょう!

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大都市近郊区間制度に関連する旅客営業規則上の諸ルール

特急ときわ号上野駅にて

大都市近郊区間制度については、旅客営業規則上の裏付けが必ずしも明確ではなく、いくつかの条文から類推してルールが導かれる点が特徴です。

運賃計算方やきっぷの効力面に関して、大都市近郊区間制度に関連するルールを見ていきましょう。

【総論】大都市近郊区間制度に関する独立した条文は存在しない

JR各社の運送約款である「旅客営業規則」上に、大都市近郊区間制度が規定されています。しかし、多くの大都市圏ユーザーが影響を受けるにもかかわらず、この制度について明確に定義された独立した条文はありません。

大都市近郊区間制度に関する規定は、いくつかの条文の中に隠れるように散在しているのが特徴であり、結果的に根拠づけがあいまいになっています。

直接的に規定されているルール

驚くことに、大都市近郊区間制度全般を網羅した条文はありません

大都市近郊区間の範囲については、途中下車に関する規定である旅客営業規則第156条第1項第2号に潜んでいます。

また、途中下車の制限と対になった規定である選択乗車についても、旅客営業規則第157条第2項に隠れている形です。

旅行開始後における区間変更(乗り越し精算)について、旅客営業規則第249条第1項中に大都市近郊区間相互発着の普通乗車券に対する取り扱いが規定されています。

途中下車・選択乗車・区間変更に関する規定が散在しているため、当該規定を探し出し、その全容を理解することは容易ではありません。

間接的に導かれるルール

大都市近郊区間内相互発着の経路においては、運賃計算が最短経路をもって行われることが間接的に導かれます。運賃計算にかかわる重要な基本原則であるにもかかわらず、ルールとして明文化されていません。

大都市近郊区間相互発着の普通乗車券において、旅客営業規則第69条および第70条に規定された経路特定区間特例が実質的に適用されないという点は、運賃計算上非常に重要な観点です。それにもかかわらず、不適用について明文化されていないのです。

このように、大都市近郊区間制度が運賃計算の基本ルールに優先適用されることに対する根拠は、明確ではありません。

途中下車【規則第156条第2号】

大都市近郊区間制度の根幹は、実際に乗車する経路選択をユーザーに委ねるために、途中下車の取り扱いを制限することです。旅客営業規則第156条第2号が、その根拠です。

選択乗車中に途中下車を認めてしまうと、初乗り運賃の普通乗車券でフリー乗車が可能になってしまうため、選択乗車中における途中下車の制限には一定の合理性があるでしょう。

普通乗車券の乗車区間が大都市近郊区間相互発着である場合、その普通乗車券では途中下車が認められません(途中下車すると、後述するように区間変更の取り扱いを受けることになります)。

この制限については、JR線の区間だけではなく、大都市近郊区間に接続する連絡社線(私鉄線)にも適用されます。

大都市近郊区間の制定時には、対象エリアはあまり広大ではありませんでした。しかし、現在は大都市近郊区間の範囲が広大になり、合理的な範疇を超えてしまったと言えるでしょう。

特に、東京近郊区間においては1日で移動を完了することが困難な経路も生じているため、途中下車の自由を剥奪されたユーザーにとって不利益です。

途中下車制度についての基本や大都市近郊区間が広大になったことの弊害については、以下の記事を是非ご一読ください。

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選択乗車【規則第157条第2項】

普通乗車券の乗車経路が大都市近郊区間相互発着である場合、券面に表示された経路にかかわらず、大都市近郊区間内の任意の経路を選択可能です。

一筆書きの経路を進み、後戻りしない限り、ユーザーが任意の経路で着駅に向かうことが可能です。このことを、大都市近郊区間制度における「選択乗車」と言います。

これは旅客営業規則第157条第2項に定められており、前条の規定と並んで大都市近郊区間制度の根拠となっています。

大都市近郊区間内であれば選択乗車の範囲には細かな規定がないため、極端な形として大回り乗車が可能というわけです。東京近郊区間の場合、関東甲信地区のほぼ全域が選択乗車できるエリアであり、初乗り区間の普通乗車券で広範囲をめぐる日帰りの長旅を楽しめます。

最短経路による運賃計算方【明文なし】

乗車経路が大都市近郊区間相互発着となる場合、乗車経路通りに運賃計算を行うという本来のルールが、根本から修正されます。

大都市近郊区間制度が適用される経路であれば、発駅から着駅までの運賃計算には常に最短経路の営業キロ(運賃計算キロ)を適用します。この運賃計算方は旅客営業規則上で明確に規定されておらず、他の諸規定から類推適用する形です。

乗車経路によらず運賃計算が1通りに特定されるため、適用される運賃額は常に最安です。普通乗車券の発売時に乗車経路を考慮する必要がないため、駅員にとっては出札業務が簡素化されます。ユーザーにとっては、きっぷを買う時に乗車経路を気にする必要がありません。

駅員もユーザーも煩わしさから解放される制度であり、大都市近郊の適切な範囲に限定される限りは合理的であると言えるでしょう。

大都市近郊区間制度はきっぷの効力に制限を及ぼすものに過ぎず、きっぷの発売方や運賃計算方を強制するものではないことに留意したいです。したがって、大都市近郊区間で完結する経路であっても、ユーザーが希望すれば、実乗経路・営業キロに基づいてきっぷを発売しても問題ありません。

とはいえ、大都市近郊区間制度が適用されるきっぷでは途中下車ができないため、実乗経路に基づく運賃計算は意味がないでしょう。現実的には最短経路できっぷを発売することになります。

経路特定区間特例(規則第69条・第70条)の不適用【明文なし】

旅客営業規則第69条で定められた経路特定区間や同規則第70条の太線区間は、いずれも東京近郊区間と重複しており、どの規定を適用するのかが問題です。

乗車経路が大都市近郊区間相互発着である場合、大都市近郊区間の適用が優先され、規則第69条と第70条の特定区間は適用されないことになります。

すでにご紹介した土浦駅・熊谷駅間の普通乗車券の経由欄に、70条太線区間ではなく最短経路が表示されていることが、この証左です。

大都市近郊区間相互発着である場合に大都市近郊区間制度が優先適用されることは、実は旅客営業規則上には何ら記載されていません。規則第69条及び第70条の実質的な不適用に関しては不文律となっているため、難解なルールであると言えるでしょう。

旅行開始後における選択乗車中の乗車変更【規則157条第3項】

選択乗車中に券面に記載された着駅とは別の駅で途中下車する場合、旅行開始後における乗車変更(区間変更)の取り扱いになります。

大都市近郊区間内相互発着の場合、発駅を基準として旅行開始時に使い始めた普通乗車券の額面と実際の運賃額との差額を精算します。追徴される場合は差額を支払い、余剰となった場合は差額分は返ってきません。

営業キロが101km以上の場合も発駅を基準として差額計算する点が、区間変更の基本ルールとは異なります。この点も、大都市近郊区間制度ならではと言えるでしょう。

交通系ICカードによるIC乗車との関係

JR東日本管内の東京近郊区間・仙台近郊区間・新潟近郊区間については、それぞれのSuicaエリアとほぼ一致しています。

Suica等の交通系ICカードによるIC乗車に関しては、出場まで乗車経路や運賃額が確定しないことや、改札口から出場するたびに運賃計算を打ち切るのが特徴です。これらの特徴が、実は大都市近郊区間制度とよくマッチしているのです。

普通乗車券(紙のきっぷ)と交通系ICカードのIC乗車で取り扱いを統一するため、Suicaエリアの範囲と大都市近郊区間制度を適用する範囲を揃え、両者の整合を取っているのではないかと思われます。

途中下車ができない大都市近郊区間内でやはり途中下車したいという場合、それに適したきっぷが発売されていると便利です。大都市近郊区間の一定の範囲をカバーしたフリーきっぷや大都市近郊区間制度に関連した裏ワザをご紹介します!

途中下車したい場合に便利なフリーきっぷ

上野駅中央改札

大都市近郊区間内での途中下車に制限がある中、JR東日本管内では、大都市近郊区間内を土休日にフリー乗車できる便利な企画乗車券が発売されています。途中下車したいユーザーに対する一種のソリューションと言えるでしょう。

大回り乗車では、折り返し乗車や着駅以外の改札口からの出場ができません。それに対し、フリーきっぷを使えば、思い立った時に後戻りや途中下車を楽しめます。

東京近郊区間

都区内パス・休日おでかけパス(いずれも当日限り有効)

東京23区内(東京都区内)を走るJR線全線が1日乗り放題のフリーきっぷが「都区内パス」です。また、東京駅から概ね80km圏内のJR線が土休日に限って乗り放題になるのが「休日おでかけパス」です。休日おでかけパスには、紙のきっぷ版とSuica搭載版がありますが、値段と新幹線乗車に関する効力が両者で異なります。

仙台近郊区間

小さな旅ホリデー・パス(当日限り有効)

JR東日本東北本部管内(宮城県・山形県・福島県内の一部)のJR線普通列車・快速列車が、土休日に限り1日乗り放題のフリーきっぷです。フリー乗車区間が、概ね仙台近郊区間と重なっています。

「小さな旅ホリデー・パス」の詳細については、姉妹サイト「鉄道の極み」に投稿した別記事をぜひご一読ください。

南東北エリアのフリーきっぷ「小さな旅ホリデー・パス」を使い倒す方法~価格分析から元を取る使い方を考察~
宮城県・山形県・福島県内を走るJR東日本の普通・快速列車に、2,850円で1日乗り放題のフリーきっぷ「小さな旅ホリデー・パス」。普通列車に乗車するだけではなく、快速列車として走る観光列車に乗車する際にも、乗車券として活用できます。週末に南東…

新潟近郊区間

えちごツーデーパス(2日間有効)

新潟県内全域のJR線および私鉄線に2日間乗り放題なのが、土休日のみ発売される「えちごツーデーパス」です。新潟近郊区間全域をカバーしています。

大都市近郊区間制度に関係するワザ2選

日暮里駅コンコース

最後に、大都市近郊区間制度に関連した裏ワザを2つご紹介します。

大回り乗車

前述した通り、発駅から着駅まで向かう際に遠回りの経路を進む「大回り乗車」は、選択乗車の究極の姿です。

最も身近なところでは、すでにご紹介した東京駅から神田駅(東京都千代田区)ゆきの普通乗車券を使用して、山手線をほぼ一周することが挙げられます。また、この乗車券で千葉県の房総半島を一周することも、大回り乗車の手法によって可能です。

大回り乗車を実行する際には、乗車する経路をメモ書きして、駅員や車掌に自ら説明できるよう準備しておくことをおススメします。ルールに則った行為とはいえ、低額のきっぷで長時間にわたって長距離を乗車することから、不正乗車の嫌疑をかけられるリスクを認識しておきたいです。

始発から終電までまるまる一日かけて、大都市近郊区間の中を何百キロも大回り乗車で乗り歩くという強者もいるとかいないとか。

新幹線を経路に含めて大都市近郊区間制度の適用を回避

大都市近郊区間制度が適用されるのは、大阪近郊区間の一部区間を除き、在来線が対象です。したがって、経路に新幹線を含めることで、大都市近郊区間制度によって制限されている途中下車が可能になります。

例えば、東京山手線内から高崎問屋町駅(群馬県高崎市)ゆきの普通乗車券において、全区間が在来線経由だと途中下車ができません。しかし、同区間の全部もしくは一部を新幹線経由とすると大都市近郊区間制度が適用されず、きっぷの基本原則通りに途中下車が可能です。

この活用法を詳しく解説した記事を、ぜひご一読ください。

新幹線と在来線が並行する区間において普通乗車券を新幹線経由とするメリットは?ネット予約サービスと指定席券売機の操作方法を解説
新幹線を利用する際には、原則的に新幹線経由の普通乗車券および新幹線特急券を購入する必要があり、その普通乗車券上の経由欄には新幹線乗車区間が明示されています。ところで、新幹線は在来線を補完するために整備されており、新幹線と在来線が並行している…

なお、大阪近郊区間において新幹線と在来線が同一線路扱いの区間については、このワザを活用できないことに留意してください。

まとめ

JR東京駅丸の内地下中央改札口

JRきっぷにおける「大都市近郊区間」制度はもっぱら、乗車区間が大都市近郊区間相互発着となる場合に途中下車を制限するものです。

一方で、大都市近郊区間内において選択乗車が可能であり、任意の経路を進むことができます。したがって、運賃計算を最短経路に基づいて行うのが合理的です。

大都市近郊区間制度とSuica等交通系ICカードによるIC乗車との相性がよく、互いに補完関係にあると言えます。Suicaエリアの拡大に連動して、大都市近郊区間が拡大されました。

途中下車が必要な場面がほぼ発生しない近距離の移動では、大都市近郊区間制度は業務の簡素化につながり合理的です。

しかし、大都市近郊区間を無制限に拡大すると、途中下車が制限されることによって普通乗車券の使い勝手が悪くなります。普通乗車券に対して大都市近郊区間制度の適用を無理に拡大するのは、慎重であるべきでしょう。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則

● 時刻表復刻版 1987年3月号(JTB)

● JR旅客営業規則のQ&A(自由国民社)2017.5

当記事の改訂履歴

2026年5月13日:当サイト第2稿

2023年11月28日:当サイト初稿

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