Suicaエリア拡大で「途中下車」制度が危うい?ユーザー本位の運賃制度を維持するための方策を運賃試算結果から考える

JR東日本E233系電車 運賃制度

在来線を利用する際、Suica等の交通系ICカードを使用して改札を通るのが、現在では一般的です。

その影響で、紙のきっぷ(普通乗車券)の出番が徐々に少なくなってきました。紙のきっぷには、交通系ICカードにはない「途中下車」という優れた制度があります。しかし、交通系ICカードの普及の影響で、特にJR東日本管内では途中下車制度の維持が怪しくなってきたような気がします。

JR東日本管内においては、Suicaの利用エリアが拡大するのと連動して、途中下車制度が適用されない「大都市近郊区間」が拡大しました。この流れについて、途中下車制度を骨抜きにしようとしているのではないか、という疑念をお持ちの方がいるのではないでしょうか。

この記事では、近未来的に起こりそうな途中下車制度の存廃について、広大なSuicaエリアを抱えるJR東日本に焦点を当てます。そして、JR東日本の思惑とユーザーにとっての便益のせめぎあいについて考察したいと思います。

この記事を読み進めるには、途中下車制度・大都市近郊区間・遠距離逓減制に関する基礎的な知識が必要です。なるべく易しくお話しできればと思います。

この記事を読むと分かること
  • JR東日本管内において、Suicaエリアと大都市近郊区間は連動していること
  • Suica利用エリアの拡大によって、途中下車制度が骨抜きにされる可能性があること
  • 途中下車制度を前提とした運賃計算方が、ユーザーにとって有利な場合が多いこと

JR東日本管内でSuicaエリアが相次いで拡大

JR東日本の首都圏エリアでは、2001年11月から2002年春にかけて、交通系ICカードSuicaによる乗車サービスが始まりました。2001年のサービスインの段階では、拡大される前の東京近郊区間にある424駅(東京駅から大体100km圏内)が対象でした。

その後、2009年と2014年にSuica利用エリア(東京近郊区間)が拡大され、巨大なエリアが誕生しました。同時に、新潟エリア(新潟近郊区間)と仙台エリア(仙台近郊区間)が追加されています。

2023年5月には、北東北エリアの秋田・青森・盛岡地区にSuicaが導入されました。また、2025年3月には篠ノ井線長野駅および大糸線穂高駅まで、2026年3月には大糸線白馬駅までSuicaエリアが拡大されています。

画像引用元:JR東日本ニュースリリース

このように、JR東日本エリアの大半の駅が現在、いずれかのSuicaエリア(大都市近郊区間)に所属する形です。

長野駅までのSuicaエリア拡大によって、東京近郊区間もあわせて拡がりました。大都市近郊区間同士がほぼ隣接し、それらが結合すれば、これまで見ないような巨大なSuicaエリアが誕生することになります。「近郊区間」という用語が怪しくなるほどまでに、途中下車の概念がますます縮小しそうです。

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これらのSuicaエリアが結合される可能性は?

これまでSuicaを技術的に支えてきたのが、各駅にある単体の自動改札機でした。いわばスタンドアロン型のシステムでしたが、現在は技術が進歩し、IPネットワークとクラウドが幅を利かせる時代です。

実際に、2023年5月にローンチした秋田・青森・盛岡エリアのSuicaは、センターサーバーと通信するクラウドベースのシステムです。

今後機器の更新が進み、すべてクラウドベースになった場合、技術的にはいつでも全社エリアを一つのSuicaエリアに統合することが可能です。つまり、JR東日本エリア全体で単一の「近郊区間」とすることができるわけです。

それが現実になることが、2024年12月にJR東日本から発表されました。2027年春を目途に、JR東日本管内のすべてのSuicaエリアが統合されるとのことです。

Suicaエリアの統合によって、営業制度的にもJR東日本管内全域が「東日本近郊区間」になるのではないかと個人的に考えています。

当記事でお話ししているSuicaエリア(大都市近郊区間)は、在来線が対象です。新幹線には、在来線とは別の改札システムが整備されていることもあり、大都市近郊区間から除外されています。したがって、新幹線を利用した場合、在来線利用と運賃が異なることがあります。

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途中下車制度と大都市近郊区間制度について

JR東日本E129系電車

JR東日本管内にはSuicaエリアが複数あり、将来的に結合される可能性があります。

一方、交通系ICカードのエリアは、各鉄道会社間で異なります。JR他社や他の会社線またがりでは、当記事でご説明する途中下車制度が消滅する可能性は、今のところ考えられません。

途中下車制度

JR各社で発売される普通乗車券(紙のきっぷ)には、「途中下車」という制度があります。この制度が適用される条件を簡単に整理すると、以下の通りです。

  • 経路全体で101km以上あること
  • 後戻りしないこと
  • 大都市近郊区間内で完結しないこと
  • 普通乗車券のみの概念

1回のみ有効な普通乗車券については、改札口を出る時にきっぷを回収されてしまうのが原則です。しかし、途中下車ができる場合はきっぷを途中駅で回収されず、旅行をそのまま続けられます。

したがって、普通乗車券については、改札口を出るたびにきっぷを買い直すのではなく、全区間を通しで1枚のきっぷとして購入できます途中下車制度はユーザー目線でメリットが多く、とても優れた仕組みです

なお、特急券などの料金券については途中下車制度はなく、改札口を出るたびに買い直すことになっています。また、Suicaなどの交通系ICカードには、そもそも途中下車という概念はありません

途中下車制度の基本については、以下の記事(↓)にまとめてあります。是非ご一読ください。

鉄道きっぷの「途中下車」制度を最大限活かす~おトクに遠距離きっぷを買う秘策~
「途中下車」というと、音楽の曲を連想される方もいるのではないでしょうか。とても心躍る単語ですが、元々は鉄道きっぷの制度上の用語です。鉄道における途中下車制度とは、きっぷに記載された最終目的地の駅(「着駅」といいます)に着くまでの途中駅できっ…

大都市近郊区間

全国には「大都市近郊区間」というゾーンが何か所か設定されています。そのうち、JR東日本管内で該当するのは、東京近郊区間・新潟近郊区間・仙台近郊区間です。乗車区間がこれらのゾーン内で完結する乗車券には、一般ルールに加えて、以下のようなルールが適用されます。

  • 有効期間は当日限り
  • 距離にかかわらず途中下車不可
  • 最短経路で運賃計算
  • 経路特定区間特例に優先して適用される

現在では途中下車制度が例外的に取り扱われますが、実はその逆です。途中下車制度が原則で、大都市近郊区間がその例外と言えます。

途中下車できない代わりのトリックが、選択乗車です。運賃計算が最短経路で行われる一方、乗車する経路が後戻りせず一筆書きである限り任意に選択できます。そのため、長距離にわたる「大回り乗車」がブームになったりします。

東京近郊区間

首都圏Suicaエリアとほぼ同じ範囲が指定されており、関東甲信地区の全域がカバーされます。

東京近郊区間範囲図

仙台近郊区間

仙台Suicaエリアとほぼ同じ範囲で、宮城県の全域と福島県・山形県の一部がこの範囲に含まれます。

仙台近郊区間範囲図

新潟近郊区間

新潟Suicaエリアと重なっています。新潟県の大半のJR線がこのエリアに含まれますが、全国の交通系ICカードの利用エリアの中にあっては、小さな部類です。

新潟近郊区間範囲図

大都市近郊区間の基本について、以下の記事(↓)にまとめてあります。是非ご一読ください。

【旧記事】JRきっぷ「大都市近郊区間」制度の基本~エリアがあまりにも広くないか~
【新記事をお読みください】新記事投稿に伴い、当記事はアーカイブとなりました。以下の新記事をお読みいただきますよう、お願いいたします。【以下は旧記事の本文です】首都圏や近畿圏を走る大都市近郊のJR線には多くの路線があり、いろいろな経路を作れま…
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東京・仙台・新潟近郊区間(Suicaエリア)がもしも結合したら

近郊区間位置関係図

いま、大都市近郊区間における選択乗車についてふれましたが、もしも現行の東京・仙台・新潟近郊区間(Suicaエリア)が一つに結合したら、すごい現象が生じます。

初乗り区間の普通乗車券を購入すれば、観光列車「のってたのしい列車」を満喫できる可能性があるのです。例えば、以下の経路のような大回り乗車も、夢ではありません。

常磐線ー磐越東線ー磐越西線ー信越本線ー上越線ー高崎線

Suicaエリアの拡大にあたっては、これらの制度を根本的に見直さない限り、途中下車制度の縮小と大回り乗車の拡大の矛盾を抱えることになります。

交通系ICカードによるIC乗車と普通乗車券に関する規定

仙台駅駅舎

発駅から着駅までの運賃を支払う際、Suicaなどの交通系ICカードを使用するか、紙のきっぷ(普通乗車券)を買うか、ユーザーの判断に委ねられています

交通系ICカードを使うことを厳密に言えば、当該交通系ICカードに運賃をチャージしておき、着駅で確定した運賃を引き落とすことを指します。チャージ残高のことを、規定上「ストアードフェア残高(SF残高)」といいます。

一方、従来からの慣行である普通乗車券は、あらかじめ乗車する経路を決めてから前もって乗車券を購入する形をとります。

したがって、乗車する前に経路が確定している普通乗車券や定期乗車券には振替輸送の制度があり、着駅まで経路が確定しない交通系ICカードのIC乗車には、振替輸送の制度が適用されません。

同じ区間を乗車するにも、運賃の支払い方次第で効力が異なるケースがあるわけですが、それぞれ適用される運送約款が異なるからです。

● 普通乗車券・定期乗車券など

根幹ルールの「旅客営業規則」が適用されます。交通系ICカードが誕生する前から存在した基本ルールです。

● 交通系ICカードでのSF乗車

各社の「ICカード乗車券取扱規則」が適用されます。今申し上げたSF乗車の特性を鑑みて制定された特別ルール(単行規定)です。

それぞれ、運賃計算の考え方が異なります。発駅で前もって経路を確定させ、きっぷをあらかじめ買って運送契約を成立させる普通乗車券と、発駅で運送契約自体は成立するものの、着駅まで運賃や経路が特定されない交通系ICカードのSF乗車とでは、性格が全く異なります。

話を戻すと、Suicaでは途中下車ができないのに対し、普通乗車券では途中下車できるという矛盾があります。それを解消するために、Suicaエリアを拡大する場合は大都市近郊区間を連動して拡大しなければならないというわけです。

Suicaエリア拡大で途中下車制度が犠牲に

これまでお話ししてきたように、Suicaエリアの拡大は大都市近郊区間の拡大を意味し、結果的に途中下車制度の縮小につながります

途中下車制度が適用される普通乗車券を手にするには裏技的な知識が必要で、さもなければ改札口を出るたびにきっぷを買い直さなければなりません。

当局側であるJR東日本にすれば、チケットレス乗車を推進するために紙のきっぷを減らしたいに決まっています。Suica推進上障害となる普通乗車券の途中下車制度を、強引につぶしにかからないとも限りません。

もしも一線を越えて、JR側が紙のきっぷ(普通乗車券)を売らずにSuica等によるIC乗車をごり押ししたら、これからお話しするようにユーザーが不利益を被る場面が確実に増えます。

途中下車制度がないと運賃計算方がユーザー目線で不利に

JR東日本E721系電車

JRの普通乗車券の運賃計算は、基本的には乗車する距離に対し、一定の賃率をかけて算出します。その賃率が長距離であればあるほど低額となるため、最終目的地までの距離が長ければ長いほど、通しで運賃計算した方が運賃が安くなります(これを「遠距離逓減制」と言います)。

通しで運賃計算することは、途中下車制度とセットになります。発駅から着駅まで休憩なしに長距離を移動することは容易ではありません。実際に、途中駅の改札口を出て休息することが、長旅には欠かせません。

途中下車制度をなくすことは、長距離逓減制のメリットを活かせずに、ユーザーがより高額な運賃負担を強いられることにつながります

JR東日本にとっては、途中下車制度をなくすことで増収につながることから、制度をなくしたいのが本音でしょう。

遠距離逓減制に関する基本について、以下の記事(↓)にまとめました。ぜひご一読ください。

鉄道運賃の「遠距離逓減制」活用のススメ〜乗れば乗るほど運賃が安い?~
鉄道を利用する際、遠くに行けば行くほど安くなるというと、不思議に思われるのではないでしょうか。その裏付けとなる考え方が「遠距離逓減制」です。鉄道で遠くに行くと聞くと「線路は続くよどこまでも」という楽曲が脳裏に浮かびますが、皆さまにとってもお…

途中下車制度が活きる運賃計算例

発駅から着駅までのきっぷを購入する際、途中駅できっぷを分割すると有利な場合も中にはありますが、一般的には着駅まで通しできっぷを買う方が総額が低くなることが多いです。

ここでは、ユーザーが有利となるきっぷの買い方として、全区間通しの普通乗車券に関する運賃計算の事例を2つご紹介します。

札幌駅→滝川駅→旭川駅

2024年3月に交通系ICカードKitacaが導入された区間です。

画像引用元:JR北海道ニュースリリース

札幌駅から旭川駅までは136.8kmで、途中下車が可能な距離です。従来は、札幌駅から旭川駅まで通しの普通乗車券を購入し、滝川駅では途中下車してきっぷを使い続けるのが一般的でした。

この区間を仮に交通系ICカードで乗車し、滝川駅で運賃を分割すると、大人で320円高額になります。

【通し:紙のきっぷ】

札幌駅→旭川駅 136.8km 3,080円

【分割:IC乗車】

札幌駅→滝川駅 83.5km 2,020円
滝川駅→旭川駅 53.3km 1,380円
合計 3,400円

札幌駅・旭川駅間の運賃計算

途中駅に寄り道して着駅まで向かう場合、交通系ICカードを利用しないで、今まで通りに紙のきっぷを買った方が低額です。

東京駅→郡山駅→仙台駅

この区間は東北新幹線を利用することが一般的です。新幹線に乗車する際は、紙のきっぷである普通乗車券(および新幹線特急券)を買って乗車します(媒体として交通系ICカードを利用する「新幹線eチケット」や「タッチでGo!新幹線」は普通運賃ではなく、新幹線特急券込みの特別企画乗車券です)。

運賃計算上、途中の郡山駅で分割するよりも、仙台市内まで通しで普通乗車券を購入し、郡山駅で途中下車するほうが大人で330円低額です。

【通し:紙のきっぷ】

東京都区内→仙台市内 351.8㎞ 6,270円

【分割:統合後におけるIC乗車と仮定】

東京都区内→(北)郡山 226.7㎞ 4,180円
(北)郡山→仙台 125.1㎞ 2,420円
合計 6,600円

東京駅・仙台駅間の運賃計算

もしも途中下車制度がなくなり、郡山駅で別々にきっぷを買う必要が出た場合、これまでよりも330円値上がりするのと同じ効果があります。

このように、途中下車制度がなくなると運賃の合計金額が高額になり、実質的に値上げになる効果が生じることをお分かりいただけたと思います。

きっぷの媒体が紙から交通系ICカードに変わって、途中下車制度が変更されてしまうと意味がありません。

ここでは、区間を2分割した運賃の合計よりも、区間を分割しない通し計算の運賃の方が低額になる典型的なケースを挙げました。しかし、逆の結果となるケースも当然ながらあります。実際に利用する際には、運賃計算のシミュレーションをお願いします。

交通系ICカードと普通乗車券の具体的な使い分け、運賃シミュレーションの方法については、以下の記事(↓)を参照してください。

交通系ICカードによるIC乗車と普通乗車券の賢い使い分け方~紙のきっぷならではの途中下車制度の素晴らしさを運賃面で検証~
鉄道を利用する場面ですっかり普及した、SuicaやICOCAなどの交通系ICカード。交通系ICカードの利用エリアが非常に広大になり、当該エリアの端から端まで数百キロにわたるケースが出てきました。交通系ICカードでIC乗車するか、従来からの普…

ここから、筆者目線で考察や見解をお話しします。お付き合いいただければ幸いです。

なぜ途中下車制度をなくしたいのか?

いままでお話ししてきたように、交通系ICカードでのSF乗車の推進と、途中下車制度を活用した運賃の節約術で、鉄道会社とユーザーの間で互いの利益のせめぎあいが生じることになります。次の2つの点が、考察上のポイントです。

  • 運賃収入の減収(途中下車制度)
  • 教育研修コストが増大(複雑な運賃制度)

これらの点は鉄道会社視点ではデメリットですが、ユーザー視点では逆に有利に働きます。残念ながら両者はウィンウィンではなく、互いの利益が相反してしまう関係です。

Suicaエリアの拡大は大都市近郊区間の拡大とイコールで、言い換えれば途中下車制度を活かせるチャンスが減少することにつながります。もしも途中下車制度がなくなり、改札を出るたびに運賃を支払う形では、遠距離逓減制を活かせなくなります同じ区間を乗車するのに、ユーザーにとっては負担増になります。

反対の立場であるJR東日本からすれば、一円でも増収を図りたいはずです。そのためには、途中下車制度を廃止して、乗車するたびに運賃を別々にいただきたいわけです。

また、複雑な営業規則を今よりも簡素化できたら、従業員への教育研修を少なくでき、人件費の抑制につながります。これは、営利企業としては当然の論理です。

上場企業ゆえに利益を増やすことを要請されるJR東日本が、JR東日本エリア全域から「途中下車」という用語をなくそうとしているように思えます。

現行の旅客営業規則の改廃が難しいとなると、鉄道会社側は普通乗車券を売らず、交通系ICカード利用を故意に誘導するようになるはずです。旅客営業規則を外し、単行規定の「ICカード乗車券取扱規則」を適用する形にすれば、規程上は問題ありません。

この手を取ることで、合理的な規程である旅客営業規則が骨抜きにされ、JR東日本側により有利な単行規定がまかり通ります。果たして、このようなことが許されてもいいのでしょうか?

矛盾を平和に解決するために~筆者の提案~

JR東日本E233系電車

それでは、いかにすれば会社とユーザー双方にとって平和な制度となるか、JR東日本実務家の考え方を踏まえた上での筆者の考えをご提案したいと思います。

JR東日本実務家の考え方と問題点

JR東日本の実務家の言い分は、東京近郊区間を拡大しても現在では1日で目的地までの移動が完了できるから、途中下車不可とするのは問題ないということです(ここで言う実務家とは、筆者が参考にした図書「JR旅客営業制度のQ&A」の著者を指します)。

しかし、ユーザー目線では素直に容認できません。確かに時間的には1日で移動できるとしても、途中の駅で改札口を出て食事や買い物をするニーズが考慮されていません。

従来からの途中下車制度のもとでは、着駅までの通しの普通乗車券を持っていればこのような行動を自由に行えました。しかし、途中下車が制限されるとなれば、ユーザーにとっては権利の後退になり、運賃の負担増という形で不利益を受けます

Suicaの展開に隠れた、諸ルールの変更。我々ユーザーは、JR東日本の真の狙いを深読みしなければなりません。

筆者が考えるユーザー目線の解決策

筆者が思いつく限り、大きく分けて以下の2通りがあります。

大都市近郊区間を適用しない普通乗車券をJR他社同様に併存させる

この問題、実は簡単に解消できます。営業キロ101km以上の普通乗車券に関するきっぷのルールを、原則に戻すだけです。具体的には、乗車経路を特定して運賃計算を行い、乗車券の有効期間や途中下車に関する制約をなくすことです。

Suicaでサクッと便利に最短距離計算で乗車するか、従来通りの運送条件下で普通乗車券を実経路通りに買って途中下車制度のメリットを受けるか、各ユーザーが選択できることが大切です。

その場合、Suicaはじめ交通系ICカードで乗車した場合と普通乗車券とでは運賃や効力の整合性が取れませんが、いずれを利用するかユーザーに選択権を持たせるべきです。

Suica乗車を強制する場合の通算運賃と分割運賃の差額調整

きっぷの物理媒体としての紙のきっぷを廃止するのであれば、Suicaを媒体として当該乗車券情報を紐づける必要があります。センターサーバーと通信し、その情報を読み出せる現在、技術的には十分可能ではないでしょうか。

発駅から旅行を開始し、途中駅で一旦改札口したのち着駅まで引き続き乗車する場合、通し運賃と比べた運賃の過収受分をSuicaの残高に戻すといった施策も必要でしょう。

おわりに

他の交通系ICカードであるTOICA(JR東海)やICOCA(JR西日本・JR四国)のエリアで発売される普通乗車券には、JR東日本管内でみられる普通乗車券に関する効力の制限が基本的にありません。

JR東日本がチケットレス(紙のきっぷ廃止)にシャカリキになっている一方、その他のJR各社はそれほどではないように思えます。従来のルールが適用される普通乗車券と、利便性に勝る交通系ICカードのIC乗車との選択がまだまだ許される状況です。

したがって、交通系ICカードSuicaエリアの拡大に乗じて、途中下車制度などきっぷの効力を泥縄的に制限するJR東日本独特のやり方が、どうしても気になります。

途中下車制度や大都市近郊区間に関する記事は多く見かけますが、どうして途中下車制度を改変したいかという鉄道会社の思惑に切り込んだ記事が他になかったため、この記事の執筆に至りました。

鉄道での移動は、一般的な商品やサービスと異なり、他の鉄道会社を選択するのが困難です。その観点から、鉄道会社は単なる営利企業ではなく、公共性が求められます。旅客営業制度の改廃にあたっては、どうかユーザー本位であってほしいです。

この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!

参考資料

● Suica利用可能エリア(JR東日本)2023.12閲覧

● JR東日本ニュースリリース「Suicaの当たり前を超えます ~Suica Renaissance~」2024.12.10付

● JR東日本ニュースリリース「長野県における Suica ご利用駅の拡大について」2023.6.20付

● JR北海道ニュースリリース「Kitacaエリアを拡大します」2023.12.13付

● JR旅客営業制度のQ&A(自由国民社)2017.5 pp.159-160

● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則

● 東日本旅客鉄道株式会社 ICカード乗車券取扱規則 第22条/第38条/第40条

当記事の改訂履歴

2026年5月18日:初稿 最新修正

2023年12月28日:当サイト初稿(リニューアル)

2023年8月01日:前サイト初稿(原文作成)

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