JR線の普通乗車券に関しては、事前に乗車経路を決めてから購入し、その経路通りに乗車するのが原則です。券面には経由欄があり、乗車経路の線区名が記載されています。
ところが、東京中心部を通過する普通乗車券を購入した際、その券面上には東京中心部の経由線区名が省略されていました。また、その普通乗車券の経路には赤羽駅・大宮駅間が含まれていたのですが、その経路も経由欄に記載されていませんでした。
いずれも普通乗車券の原則に反しますが、一体何が起こっているのでしょうか。
JR各社の運送約款である旅客営業規則には、乗車経路通りに運賃計算を行う例外として「経路特定区間」が定められています。第69条には全国で9区間が指定されており、第70条においては東京中心部における太線区間が該当します。
これらの区間においては最短経路にて運賃・料金計算を行い、ユーザーは任意の経路を迂回して乗車することが可能です。

2026年3月に実施された運賃制度の改定により、第70条が大きく変更されました。東京駅・品川駅間の新在別線化により、その実効性を確保するための新たな特例が追加されたため、太線区間内における迂回乗車に大きな影響が生じています。
この記事では、JRきっぷにおける「経路特定区間」の基本について徹底的にご説明します。旅客営業規則の中でも最も難解とされている内容を、旅行業務取扱管理者試験の受験生やプロにとっても読み応えのあるように構成しました。
- 経路特定区間内を通過する場合、最短経路での運賃・料金計算が強制されること
- 70条太線区間を通過する場合、任意の一筆書き経路上での途中下車が可能であること
- 東京駅・品川駅間が新幹線経由の場合、山手線東京駅・代々木駅間に乗車不可であること
経路特定区間特例が適用されたきっぷを見る

はじめに、経路特定区間を通過する普通乗車券の実物を見ていきましょう。
規則第69条と第70条が適用された普通乗車券
ここでご紹介するのは、旅客営業規則第69条と第70条第1項が重畳的に適用された普通乗車券です。

これは、大宮駅(さいたま市大宮区)から長野駅(長野県長野市)および塩尻駅(長野県塩尻市)を経由し、新宿駅(東京都新宿区)から大宮駅に至る周回経路を利用するための普通乗車券です。

大宮駅(北陸新幹線)長野駅(信越)篠ノ井駅(篠ノ井線)塩尻駅(中央東)新宿駅【70条区間】赤羽駅【69条区間】大宮駅
新宿駅・大宮駅間については、埼京線あるいは湘南新宿ラインを利用するイメージです。実際に乗車した際、赤羽駅・大宮駅間については埼京線を選択しました。
この経路中には新幹線区間が含まれているため東京近郊区間から外れており、大都市近郊区間制度(規則第156条第2項・第157条第2項)の影響を受けません。そのため、この経路については規則第69条および第70条の一般ルールが純粋に適用されます。
なお、経路特定区間内における迂回乗車について規定されているのは、規則第158条および第159条です。
運賃計算方と効力
この普通乗車券にかかる運賃計算の結果は、以下の通りです。
- 運賃計算上のキロ程:508.0km
- 普通運賃:8,690円(大休05適用で8,250円)
70条太線区間に該当するのは新宿駅・赤羽駅間であり、運賃計算は最短経路である新大久保駅および十条駅経由で行います。運賃計算上の経路によらず、太線区間内を任意の一筆書き経路を迂回して乗車可能です。ただし、東海道新幹線東京駅・品川駅間は太線区間から除外されているため、乗車できません。
赤羽駅・大宮駅間については、規則第69条第1項第5号の経路特定区間に該当します。運賃計算経路である川口駅およびさいたま新都心駅経由(京浜東北線等)で乗車することも、迂回経路である北赤羽駅および北与野駅経由(埼京線)で乗車することも可能です。
経路特定区間内においては、最短経路を用いて運賃計算を行うこととされており、普通乗車券上には乗車経路を特定しません。そのため、普通乗車券の券面上には当該区間にかかる線区名が記載されていないわけです。
経由:大宮・新幹線・長野・信越・篠ノ井線・中央東
このように、ご紹介した普通乗車券の券面に表示されている経路には、経路特定区間に含まれる新宿駅・大宮駅間の経路が記載されていないことがお分かりではないでしょうか。

それでは、規則第69条の対象区間および規則第70条の太線区間がどこであるかを見ていきましょう!
経路特定区間の対象区間

経路特定区間については、並行する2線区にかかる経路特定区間と、東京中心部における経路特定区間の2類型があります。それぞれの詳細を詳しくご説明します。
並行する2線区にかかる経路特定区間【規則第69条】
旅客営業規則第69条第1項で定められている経路特定区間は、以下の9区間です。輸送量が同等の2線区が並行しており、互いが補完的な役割を果たしています。そのため、有事の際には代替経路として機能するわけです。
| 号 | 経路特定区間 | 運賃・料金計算に用いる経路 | 迂回可能な経路 |
| (1) | 大沼以遠(新函館北斗方面)の各駅と、森以遠(石倉方面)の各駅との相互間 | 大沼公園駅経由函館本線 | 東森駅経由函館本線 |
| (2) | 日暮里以遠(鶯谷又は三河島方面)の各駅と、 赤羽以遠(川口、北赤羽又は十条方面)の各駅との相互間 | 王子経由東北本線 | 尾久経由東北本線 |
| (3) | 赤羽以遠(尾久、東十条又は十条方面)の各駅と、大宮以遠(土呂、宮原又は日進方面)の各駅との相互間 | 川口・浦和経由東北本線 | 戸田公園・与野本町経由東北本線 |
| (4) | 品川以遠(東京、高輪ゲートウェイ又は大崎方面)の各駅と、鶴見以遠(新子安、国道又は羽沢横浜国大方面)の各駅との相互間 | 大井町経由東海道本線 | 西大井経由東海道本線 |
| (5) | 東京以遠(品川、有楽町又は神田方面)の各駅と、蘇我以遠(鎌取又は浜野方面)の各駅との相互間 | 総武本線・外房線 | 京葉線 |
| (6) | 山科以遠(京都方面)の各駅と、近江塩津以遠(新疋田方面)の各駅との相互間 | 湖西線 | 東海道本線・北陸本線 |
| (7) | 大阪以遠(塚本又は新大阪方面)の各駅と、天王寺以遠(東部市場前又は美章園方面 )の各駅との相互間 | 天満経由大阪環状線 | 福島経由大阪環状線 |
| (8) | 三原以遠(糸崎方面)の各駅と、海田市以遠(向洋方面)の各駅との相互間 | 山陽本線 | 呉線 |
| (9) | 岩国以遠(和木方面)の各駅と、櫛ケ浜以遠(徳山方面)の各駅との相互間 | 岩徳線 | 山陽本線 |
例えば、湖西線と東海道本線・北陸本線が第6号として対象区間に含まれています。特急「サンダーバード」号が通常走る湖西線に障害が発生した場合、米原駅(滋賀県米原市)へ迂回する形で運行されることがあります。もともと経路特定区間に指定されており、障害発生時に運賃・料金の調整が必要ありません。
東京中心部にかかる経路特定区間【規則第70条】
路線網が密である東京中心部の経路について、きっぷを発売する都度経路を特定し運賃・料金を計算すると、出札業務が非常に煩雑です。そこで、東京中心部をまるごと経路特定区間に指定することによって、運賃・料金の計算の簡素化が図られています。
旅客営業規則の条文上、対象となる経路特定区間が太線で表現されているため、第70条の「太線区間」や「70条区間」と呼ばれます。

東海道本線東京駅・品川駅間/東北本線東京駅・赤羽駅間・尾久駅/中央本線東京駅・新宿駅間/山手線品川駅・田端駅間/総武本線東京駅・錦糸町駅間・浅草橋駅・両国駅/埼京線(赤羽線)池袋駅・赤羽駅間
東海道新幹線東京駅・品川駅間に関しては、太線区間から除外されているのが大きなポイントです。
その取り扱いを実効的にするため、第70条第3項および第4項が追加されました。新幹線に乗車するか否かによって、取り扱いが大幅に異なることをしっかりと押さえておきましょう。

かつて、太線区間が大宮駅(さいたま市大宮区)・鶴見駅(横浜市鶴見区)・蘇我駅(千葉市中央区)まで広がっていたことがありましたが、現在は第69条第3号ないし第5号に吸収されたことで縮小されています。第70条第2項は、それを調整するための条文です。
経路特定区間と大都市近郊区間制度との違い
経路特定区間と大都市近郊区間との違いを、簡単にまとめました。
| 特例名称 | 対象区間 | 適用範囲 | 計算経路 | 料金への適用 | 途中下車 |
| 69条特定区間 | 全国9区間 | 通過 | 最短経路 | あり | 可能 |
| 70条太線区間 | 東京中心部 | 通過 | 最短経路 | あり | 可能 |
| 大都市近郊区間 | 全国5エリア | 相互発着 | 最短経路 | なし | 不可 |
70条太線区間の全域が大都市近郊区間制度における東京近郊区間に内包されているため、規則の適用方が混同しがちです。しかし、規則第70条は全国のJR駅を発着する普通乗車券に適用される点で、比較的近距離の経路に対して適用される大都市近郊区間制度とは異なることを押さえましょう。

このような経路特定区間にかかる特例は、一体なぜ導入されたのでしょうか。導入された経緯や効果について考えていきましょう!
経路特定区間特例の導入経緯および効果

JRきっぷの運賃・料金計算は実際の乗車経路に基づいて行うのが原則です。それにもかかわらず、最短経路で計算を行う経路特定区間の特例がなぜ導入されたか、その経緯や効果を考えていきます。
経路特定区間特例導入の経緯
運賃・料金計算については実際に乗車する経路に基づくという大原則が、旅客営業規則第67条に規定されています。JR線の運賃・料金は営業キロ(運賃計算キロ)に対して一定の運賃水準(賃率)を乗じて算出されるため、乗車する距離が長くなるほど運賃・料金が高額です。
乗車区間の距離が長くなるほど時間がかかる上、運賃・料金が高くなるため、多くのユーザーは最短経路を選択しようとするでしょう。そのため、最短経路にユーザーが集中し、混雑することが想定されます。
特に、大都市内において路線が網状になっている区間や、並行する2路線が走っている区間においては、ある路線にユーザーが集中しても不思議ではありません。
そのため、並行する線区間の輸送量を調整するための方策として導入されたのが、規則第69条の経路特定区間特例であると言われています。
経路特定区間特例導入の効果
規則第69条の規定においては、2経路のうち短い方の経路に基づいて運賃・料金計算を行います。ユーザーに対して他経路の乗車を認めることで、輸送量の分散化を図ることが可能です。また、普通乗車券上に経路を表示しないことによって、煩雑になりがちな出札業務を緩和することも可能となるでしょう。
東京中心部において導入されている経路特定区間は、規則第70条における太線区間です。ユーザーに対し、任意の一筆書き経路による太線区間内の迂回乗車を認めることによって、輸送量の調整および出札業務の緩和につながっています。
ある経路上に輸送上の障害が生じ、不通となった場合においても、経路特定区間に指定されている経路間であれば、普通乗車券に対して区間変更の取り扱いを行う必要はありません。ユーザーにとっても手続きが不要であり、シンプルさという点で鉄道会社側との利害が一致しているでしょう。

経路特例区間特例が適用されるケースにおいては、運賃・料金計算方ときっぷの効力について一体的に理解したいです。これから詳細を見ていきましょう!
経路特定区間にかかる運賃・料金計算方~最短経路で計算し経路を指定しない~

ここでは、経路特定区間に関する運賃・料金計算の規定をご説明します。規則第69条および第70条の規定については、運賃だけではなく、料金にも適用されることがポイントです。
強行規定であり経路を指定しない
最初に注意したいのは、経路特定区間に関する特例が強行規定である点です。たとえユーザーが「遠回りの経路通りに計算して、高い運賃を払いたい」と希望しても、最短経路での計算が強制されます。
また、この特例が適用される場合、特例の区間内については経路を指定しません。実際にきっぷを手にすると、乗車券の経由欄に線区名や駅名が記載されていないことに気が付くはずです。
経路特定区間に関する規定によって最短経路が強行的に適用されるため、運賃・料金が低額になる作用があります。
経路特定区間を通過する場合【規則第69条・第70条】
経路特定区間を通過する場合、実際の乗車経路にかかる営業キロ(運賃計算キロ)ではなく、経路特定区間へ入る駅と出る駅との間の最短経路にかかる営業キロ(運賃計算キロ)を適用します。
第69条区間に関しては二者択一の形ですが、いずれも最短経路が適用される点に変わりはありません。
経路特定区間の終端駅を発着する場合【規則第69条】
第69条の適用区間については、経路特定区間の終端駅を発着する場合にも特例が適用されます。
例えば、赤羽駅および大宮駅を相互発着する場合には経路特定区間の終端駅を発着する形となりますが、第69条第1項第3号が適用されます。
この場合、川口駅・さいたま新都心駅(京浜東北線)経由であっても北赤羽駅・北与野駅(埼京線)経由であっても、前者の営業キロを適用します。
経路特定区間の両経路をまたがって乗車する場合【規則第69条】
ただし、経路特定区間の両経路をまたがって乗車する場合には最短経路を適用せず、実際の乗車経路通りに算出します(第67条の一般原則に従う)。
例えば、埼京線北与野駅以遠の各駅から大宮駅まで乗車し、その先京浜東北線さいたま新都心駅以遠の各駅まで乗り継ぐ場合、両経路をまたがる形です。この場合、乗車経路通りに運賃・料金を計算します。
経路特定区間を2回通る場合【基準規程第109条】
第69条および第70条の経路特定区間を通過し、一旦外に出てから再び当該特定区間の他の経路を通る場合が、時には考えられます。
この条件に該当する場合、最短経路で運賃・料金を計算することが強制されず、実際に乗車する経路で計算することが「できる」とされています。これは、基準規程第109条で定められた例外です。
実際に、経路特定区間を2回通った実例があります。以下の記事を、ぜひご一読ください。

経路特定区間における迂回乗車~きっぷの使い方~

次に、経路特定区間に関するきっぷの効力面を見ていきます。関係する旅客営業規則の条文は、第158条および第159条です。なお、同規則第160条に関しては、70条太線区間を発着する場合の規定であるため、例外的な規定です。
69条特定区間における他経路の迂回乗車【規則第158条】
規則第158条は、経路特定区間において最短経路で運賃・料金計算された場合、最短経路ではない他方の経路に迂回乗車できる規定です。
第69条の規定を実効的にするための規定であり、当該規定とセットで考えるとよいでしょう。
いずれの経路を選択した場合であっても、経路上にある各駅で途中下車が可能です。ただし、複数の普通乗車券を併用している場合は例外で、当該区間内で途中下車できません。
70条太線区間における最短経路以外の一筆書き経路の迂回乗車【規則第159条】
70条太線区間において、最短経路以外を迂回乗車中であっても途中下車が可能な規定が、第159条です。一筆書きの経路であれば乗車経路は自由であり、「下車前途無効」と記載されていないきっぷであれば途中下車も可能になります。
最短経路で運賃・料金計算を行うということは、遠回りの他経路を迂回できることを意味します。そのための根拠として、第70条とセットになった規定が必要というわけです。
なお、太線区間を発着する場合については、当該区間内では途中下車できません(規則第160条)。

それでは、経路特定区間にかかる類型別の実例を交えて見ましょう!
並行線区に関する経路特定区間の実例【規則第69条第1項・第158条各項】

ここでは、規則第69条第1項に定められた区間が含まれる代表的な普通乗車券をご紹介します。実物をご覧いただいた上で、その運賃・料金計算方や他経路の迂回乗車について見ていきましょう。
【三島駅→大宮駅→さいたま新都心駅】
この経路においては、三島駅から東海道本線(在来線)経由で品川駅に向かい、70条太線区間を通過します。さらに、埼京線経由で大宮駅を経て、さいたま新都心駅(さいたま市大宮区)まで戻る経路です。

三島駅(東海道)品川駅【70条区間】赤羽駅(埼京線北赤羽駅・北与野駅)大宮駅(東北)さいたま新都心駅
この経路を基に購入した普通乗車券は、次の通りです。

- 運賃計算上のキロ程:153.5km
- 普通運賃:2,750円
この経路中、品川駅・赤羽駅間が第70条太線区間に該当します。赤羽駅・大宮駅間は本来第69条の経路特定区間および第158条の他経路乗車特例に該当するところですが、乗車区間が両経路にまたがっているため適用対象外です。
経由:東海道・北赤羽・北与野・東北
普通乗車券上の経由欄には、70条太線区間が表示されていません。しかし、赤羽駅以降の経路については、ありのままに記載されていることがお分かりになるのではないでしょうか。
東京中心部における経路特定区間の実例【規則第70条各項】

ここでは、規則第70条第1項ないし第4項が適用される各経路が含まれる普通乗車券の実物をご紹介した上で、それらの運賃計算方や経路上の迂回乗車に関して解説します。
太線区間を通過する一般経路【規則第70条第1項・第159条第1項】
冒頭でご紹介した事例を、ここで改めて振り返りたいと思います。
【大宮駅→長野駅→大宮駅】
冒頭にて一般的な事例として挙げた事例です。大宮駅から北陸新幹線で長野駅に向かい、篠ノ井線・中央東線経由で大宮駅に戻る周回経路には、区間によって第69条および第70条の両方が適用されます。

大宮駅(北陸新幹線)長野駅(信越)篠ノ井駅(篠ノ井線)塩尻駅(中央東)新宿駅【70条区間】赤羽駅【69条区間】大宮駅
この経路を基に購入した普通乗車券は、次の通りです。

- 運賃計算上のキロ程:508.0km
- 普通運賃:8,690円(大休05適用で8,250円)
この経路中、新宿駅・赤羽駅間が第70条太線区間に該当し、赤羽駅・大宮駅間が第69条の経路特定区間に該当します。これらの区間においては、太線区間の迂回乗車(規則第159条第1項)および経路特定区間における他経路の選択(規則第158条)が可能です。
この事例に関してはすでに解説が済んでいるため、ここでは詳しい説明を割愛します。
蘇我駅以遠の内房線・外房線区間が含まれる経路【規則第70条第2項・第159条第2項】
蘇我駅以遠の内房線・外房線各駅を発着し、70条太線区間を通過する典型的な経路について、実例を交えてご説明します。
【木更津駅→熊谷駅】
内房線木更津駅(千葉県木更津市)から蘇我駅を経て70条太線区間に入り、赤羽駅で当該区間を抜けて熊谷駅(埼玉県熊谷市)に至る経路です。第70条第2項および第159条第2項が適用される少数事例です。

木更津駅(内房)蘇我駅【70条2項区間】赤羽駅【69条区間】大宮駅(新幹線)熊谷駅
この経路を基に購入した普通乗車券は、次の通りです。

- 運賃計算上のキロ程:135.6km
- 普通運賃:2,420円
この経路中、錦糸町駅・赤羽駅間が第70条太線区間であり、赤羽駅・大宮駅間は第69条の経路特定区間に該当します。
蘇我駅以遠の内房線・外房線各駅から70条太線区間を経由し、他方面の各駅に抜ける場合、第70条第2項の対象です。これはかなりピンポイントな規定ですが、見事に合致しています。
経由:内房・外房・総武・東北・大宮・新幹線・熊谷
第70条第2項が適用される場合、蘇我駅から70条太線区間に至るまで[蘇我駅(外房)千葉駅(総武)錦糸町駅]の経路で運賃・料金を算出します。他経路である京葉線を選択でき、線内各駅で途中下車も可能です。
普通乗車券上の経由欄には線区の省略は見られず、運賃計算上の経路がそのまま記載されています。
第70条第2項の範囲と70条太線区間を結合するとかなり大きなゾーンが形成され、自在に迂回乗車できます。かつての広大な70条太線区間の名残がここに残っていると言えるでしょう。
なお、最短経路である[蘇我駅(外房)千葉駅(総武)錦糸町駅(総武)秋葉原駅(東北)赤羽駅]上にない各駅では、自動改札を通過できません。その際は、有人改札で説明してください。
東海道新幹線東京駅・品川駅間が含まれる経路【規則第70条第3項・第159条第3項】
東海道新幹線東京駅・品川駅間が別線化されたことにより、当該区間を通過するか否かで運賃・料金計算上の経路や70条太線区間における迂回乗車の範囲に差が生じることになりました。
【三島駅→東京駅→吉祥寺駅】
三島駅(静岡県三島市)から東海道新幹線新横浜駅・品川駅間を通過し、新宿駅から中央本線で吉祥寺駅(東京都武蔵野市)に至る経路が、典型的な事例です。
新幹線から在来線に乗り継ぐ駅が品川駅であるか東京駅であるかによって、運賃・料金計算方も迂回乗車が可能な範囲も異なります。新在別線化によって生じた新たな視点であるため、規則第70条に第3項として新条文が追加されました。

三島駅(東海道)小田原駅(新幹線)東京駅【70条区間】新宿駅(中央本線)吉祥寺駅
この経路を基に購入した普通乗車券は、次の通りです。

- 運賃計算上のキロ程:143.2km
- 普通運賃:2,680円
この経路中、東京駅・新宿駅間が第70条太線区間に該当します。第70条第3項の規定において、東海道新幹線東京駅・品川駅間が乗車区間に含まれている場合、東海道本線(在来線)東京駅・品川駅間および山手線品川駅・代々木駅間を迂回乗車できないのがポイントです。
したがって、品川駅で降りて新宿方面への山手線に乗ることはできません。一方で、東京駅および代々木駅以北の区間については、これまで通り迂回乗車が可能です。
これは、70条太線区間における従来の迂回乗車の概念を変える目新しい点であるため、しっかりと押さえましょう。
経由:東海道・小田原・新幹線・東京・中央東
70条太線区間における最短経路と実際に乗車する線区名(中央東線)が一致しているため、すべての区間が経由欄に記載されている形です。
この規定に基づいて三島駅・吉祥寺駅間でさまざまな経路を組んだ場合の運賃額の差や普通乗車券上の経由欄の差に関して、別記事を作成予定です。
東海道新幹線東京駅・品川駅間が含まれる経路【規則第70条第4項】
70条太線区間内においては経路を指定しないという常識を、第70条第4項の規定が打ち破りました。かなりピンポイントな経路に対応するための規定ですが、典型的な経路をここでご紹介します。
【千葉みなと駅→東京駅→品川駅→千葉駅】
京葉線各駅を発着し、東海道新幹線東京駅・品川駅間を通過し、かつ品川駅から70条太線区間(品川駅・代々木駅間)を通過してから他方面に抜ける経路です。この経路に限っては、乗車経路通り運賃・料金を算出し、迂回乗車は不適用となります。

千葉みなと駅(京葉)東京駅(新幹線)品川駅(山手)池袋駅(赤羽線)赤羽駅(東北)秋葉原駅(総武)千葉駅
この経路を基に購入した普通乗車券は、次の通りです。

- 運賃計算上のキロ程:115.7km
- 普通運賃:2,090円
東海道新幹線を経由しているため大都市近郊区間制度が適用されず、営業キロが101km以上であれば途中下車が可能です。
経由:京葉・東京・新幹線・品川・中央東・東北・総武
乗車券上の経由欄に表示されている経路は、山手線を一周する乗車券の表示によく似ています。
この経路を利用することは通常考えられませんが、稀な経路ということで不売とするのではなく、ピンポイントな新規条文を用意して発売するのはとても意外です。
数ある条文の中でも最難関な部類に入る規則第70条第3項・第4項について、さらに詳しくまとめました。以下の記事をぜひご一読ください。

まとめ

旅客営業規則第69条に基づく経路特定区間として、全国で9区間が指定されています。東京中心部については、一定の条件のもとで規則第70条が適用されます。
経路特定区間が設定されている狙いは、並行路線における輸送量の調整や出札業務の簡素化を図ることです。
69条特定区間を通過する場合、距離が短い方の経路にて運賃・料金計算を行うものの、経路は指定しないものとされています。同様に、70条太線区間を通過する場合においても最短経路にて運賃・料金計算を行い、経路は指定しません。
いずれの場合であっても、区間内における実際の乗車経路は、ユーザーの任意の選択に委ねられます。
2026年3月に実施された東海道新幹線東京駅・品川駅間の別線化によって、第70条の運用が変更されました。東京駅・品川駅間が東海道新幹線経由となっている普通乗車券では、東海道本線(在来線)東京駅・品川駅間および山手線品川駅・代々木駅間には乗車できません。
70条太線区間が東京近郊区間内にあるため、大都市近郊区間制度と混同しがちですが、両者は全く異なる制度であることに留意したいです。
この記事を最後までお読みいただき、ありがとうございました!
参考資料
● JR旅客営業制度のQ&A(自由国民社)2017.5
● 旅客鉄道株式会社 旅客営業規則・旅客営業取扱基準規程
当記事の改訂履歴
2026年4月24日:初稿 最新修正
2026年3月24日:当サイト第2稿
2025年02月23日:当サイト初稿



コメント